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相続放棄と刑務所に収監中の人

刑務所に収監中の人が、相続放棄(家庭裁判所への申立て)をする場合、どのような手順を踏んだらよいでしょうか。

申立書(相続放棄申述書)に記載すべき「住所」

まず、申立書(相続放棄申述書)に記載すべき「住所」は、通常、収監される前に居住していた「住所」であるので、この「住所」を申立書に記載します。
ですが、実際は、刑務所の中で暮らしているので、「住所」だけの記載というわけにはいきません。

それは、申立書を家庭裁判所に提出した後、家庭裁判所は、本人宛に、質問書を郵送します。
その質問書に回答し、本人が回答書を家庭裁判所に返送してはじめて、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理することになるからです。
さらに、この後、家庭裁判所は、本人宛に、相続放棄申述受理通知書を郵送します。

このように、相続放棄の申述の場合、本人と家庭裁判所は、郵便でやり取りを行います。

そこで、「住所」の記載だけでは、この郵便でのやり取りを行うことができないので、本人が収監されている刑務所の住所である本人の「居所」を記載します。

申立書に記載すべき「申立の実情」には、「居所」に住んでいる理由と書類の郵送先とすることを明記します。

刑務所の住所は、法務省のサイトに記載されているので、これを参考にします。

また、刑務所といわれている塀の中には、拘置所もある場合もあり、刑務所と拘置所の住所が異なる場合もあります。
刑務所から拘置所に移されるときで、住所も異なる場合は、家庭裁判所に、「居所」が変更になった旨の上申書を提出します。(家庭裁判所から連絡がある場合もあります。)

申立書(相続放棄申述書)に押印する「印鑑」

次に、申立書(相続放棄申述書)に押印する「印鑑」は、通常の印鑑、すなわち、日常使用している印鑑で押印します。実印でも良いし、認印でも大丈夫です。

ところが、刑務所に収監されている人は、刑務所内では、印鑑を使用することができず、その代わり「拇印」を使用します。
この理由は、刑務所内で、本人が所持することのできる物は、日常使用する物に限られます。
印鑑は、日常使用する物ではないので、印鑑を刑務所内で所持することができないからです。

そこで、申立書(相続放棄申述書)には、拇印で押印します。
色は、黒色です。刑務所には、朱色の朱肉がなく、黒色の黒肉?だけあるからです。

刑務所で本人と面談する前に、家庭裁判所から、申立書(相続放棄申述書)には、印鑑で押印するようにとの指導を受けていたので、「拇印」だけでは足りないと思い、刑務所長の奥書(本人の署名、拇印での押印に相違ない旨の証明)をもらうよう本人に伝えました。

ところが、本人が刑務所長の奥書を依頼したが、相続放棄の申立書には、この奥書が不要であると言われた、という手紙が郵送されたので、当職が家庭裁判所への申立書の提出時に、この経緯を記載した説明書も併せて提出しました。
結果、本人の拇印だけで問題なしとの結論となりました。

なお、本人とのやり取りは、手紙と面談ですが、これらの一月当たりの回数に制限があります。

相続開始から3ヶ月を経過している場合

相続開始から申立書(相続放棄申述書)を提出する時期が3ヶ月を経過している場合は、この3ヶ月を経過して債務などの存在を知ったことを証明する必要があります。

親族からの手紙などがある場合は、手紙と封筒(日付の確認のため)を家庭裁判所に提出します。
手紙と封筒の原本とそのコピーを提出し、原本は戻してもらいます。
(以上、横浜家庭裁判所 平成26年)

参照
刑務所の面会方法って、こんな感じ