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相続放棄と数次相続

相続事例

  1. 不動産を所有する被相続人母の死亡後、父が死亡
  2. (亡)父の法定相続分は2分の1
  3. 相続人は子
  4. 不動産には、抵当権など担保権の登記がされていない
  5. (亡)父個人が債務者(または会社の保証人)の債務が、被相続人母名義の相続財産を大幅に超える
  6. 相続人らは、相続放棄の申述を検討

父の死亡前に作成した被相続人母についての遺産分割協議

父の死亡前に作成した被相続人母についての遺産分割協議書の有効性について

父の生前の遺産分割協議書でも、法律上有効で、被相続人母の不動産の相続登記をすることは十分可能です。
証拠として薄い、虚偽申請を理由に、訴えられることはありません。
ですが、別の理由で、父の債権者から詐害行為取消権を行使され、生前の遺産分割協議書に基づいた相続登記を否定され、相続登記したことが無駄になる可能性があります。

父名義の債務の支払い

基本的に、支払い通知、督促状の名義が、会社であろうと(亡)父個人であろうと、支払わない方がよいでしょう。(相続放棄の関係で)

電気・ガス・上下水道料金については、生活上、これを支払わなければ、止められてしまう性質のもので、生活そのものに影響してしまいますので、支払うことについて問題ありません。

また、相続人にとって、そこに住んでいるということは、自分の相続人の権利として、という意味と相続財産の管理をしている、という意味があります。

参考:(相続放棄者)
民法940条1項 相続放棄した者は,その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産と同一の注意をもって,その財産の管理を継続しなければならない。

(亡)父について相続放棄することにより、厳密に言えば、相続人は不動産の権利は2分の1しかありません。
 
厳密にいえば、相続人が、この先もずっと住んでいることで、将来、家賃を考えれば、相続財産管理人から2分の1の家賃を請求される可能性はあります。(そうならないことを願います。)

最終的には、不動産を売却して、債務の精算をすることになります。

家庭裁判所に相続放棄の申述をすると、(亡)父の相続する権利の2分の1は、相続人が相続で引き継ぐことができなくなります。

相続放棄の申述をする場合の手続

(亡)父の遺産の放棄(相続放棄の申述)をする場合、考えられる手続について、ご説明いたします。

  1. (亡)父の相続放棄の申述を3か月以内に家庭裁判所に申立てします。
    (手続終了までの期間は約1か月)
  2. 被相続人母名義の不動産について、法定相続分での相続登記をします。
    この場合の登記名義は、(亡)父が持分2分の1、相続人(子)が2分の1で登記します。
  3. 相続人(子)が相続放棄しますと、次の順位の親族が法定相続人となります。
    例えば、(亡)父の兄弟、あるいは、(亡)父の兄弟の子
  4. 次の順位の親族も家庭裁判所に相続放棄の申述をします。
    その結果、(亡)父には、法定相続人がいない状態(相続人の不存在)となります。
  5. 家庭裁判所に、相続財産管理人の選任の申立てをします。
    これは、(亡)父の持分2分の1の相続財産を管理する人を選任する必要があります。
    (手続終了までの期間は約3か月)
  6. (亡)父の持分2分の1について、相続財産法人とする登記を相続財産管理人がします。
  7. (亡)父の持分2分の1の相続財産管理人と相続人(子)で、不動産を売却します。
  8. (亡)父債務の返済は、売却代金の2分の1の中から返済します。
    相続人(子)は、売却代金の2分の1を受け取ります。

以上の手続では、最終的に(亡)父個人の債務を清算するまで、相当の期間を要します。

その他の方法

とりあえず相続放棄の申述のみに留める

上記の方法は、相続人(子)が主に手続を行うことになり、費用の負担など、手間暇がかかります。

そこで、もう一つの方法について、ご説明いたします。
なお、最終的に(亡)父個人の債務を清算するまで、上記の方法よりなお相当の期間を要します。
相続人(子)がすることは、1・7です。

  1. (亡)父の相続放棄の申述を3か月以内に家庭裁判所に申立てします。
    (手続終了までの期間は約1か月)
  2. 債権者が、債権者代位として、法定相続分で相続登記をします。
    (相続人(子)に代わり、債権者が相続登記をします。)
    この登記の内容は、上記の相続登記の内容と同じです。
    被相続人母名義の不動産について、法定相続分での相続登記をします。
    この場合の登記名義は、(亡)父が持分2分の1、相続人(子)が2分の1で登記します。
  3. 相続人(子)が相続放棄しますと、次の順位の親族が法定相続人となります。
    例えば、(亡)父の兄弟、あるいは、(亡)父の兄弟の子
  4. 次の順位の親族も家庭裁判所に相続放棄の申述をします。
    その結果、(亡)父には、法定相続人がいない状態(相続人の不存在)となります。
  5. 債権者が、法律上の利害関係人として、家庭裁判所に、相続財産管理人の選任の申立てをします。
    これは、(亡)父の持分2分の1の相続財産を管理する人を選任する必要があります。
    (手続終了までの期間は約3か月)
  6. (亡)父の持分2分の1について、相続財産法人とする登記を相続財産管理人がします。
  7. (亡)父の持分2分の1の相続財産管理人と相続人(子)で、不動産を売却します。
  8. (亡)父の債務の返済は、売却代金の2分の1の中から返済します。
    相続人(子)は、売却代金の2分の1を受け取ります。

なお、固定資産税を納付しなければなりませんが、これを延滞してしまうと、延滞税が相当かかることになり、不動産全体に対して、差押などの手続される可能性があります。

限定承認の申述

もう一つの方法として、次の方法があります。
相続放棄の申述ではなく、家庭裁判所に、限定承認の申述も考えられます。
この限定承認は、(亡)父の相続する権利2分の1の範囲で(限度で)(亡)父の遺産を相続するというものです。
債務の方が多い場合は、結果的に、(亡)父の相続する権利2分の1の範囲を超える債務については、免除されるという手続です。

この場合も、最終的には、不動産を売却して、債務の精算をすることになります。

(亡)父の限定承認の申述をする場合の手続について、ご説明いたします。

  1. 被相続人母名義の不動産について、法定相続分での相続登記をします。
    この場合の登記名義は、(亡)父が持分2分の1、相続人(子)が2分の1で登記します。
  2. (亡)父の限定承認の申述を3か月以内に家庭裁判所に申立てします。
    (手続終了までの期間は1か月)
    相続人(子)または相続財産管理人は、以下の手続をします。
  3. 相続債権者に対する公告と催告(公告期間は2か月)
  4. (亡)父の持分2分の1の相続財産管理人と相続人(子)で、不動産を売却します。
    相続人(子)は、売却代金の2分の1を受け取ります。
    ただし、相続の限定承認者が相続財産(持分2分の1)を承継したいときは、鑑定人が評価した価額を支払って取得できます。
  5. 債権者に配当