相続登記情報館トップ相続相談事例集遺産分割協議の進め方:相続人の中に頑として全部相続したい人がいるとき

遺産分割協議の進め方:相続人の中に頑として全部相続したい人がいるとき

相続相談事例
相談者:代襲相続人の姪
被相続人:兄
相続人:弟姉妹と甥、姪
遺産の総額:7億円
遺産の種類:不動産(土地がいくつもある)、預金(金額不明)、担保権のある借り入れ多数(金額不明)

被相続人の兄弟姉妹が相続人となるときは、なかなか相続問題を解決するのが困難な場合があります。
こういう場合こそ、遺言書を書いておくべき事例です。
なぜなら、遺産が多額であり、担保権のある借り入れもあることから、相続開始後、速やかに相続手続きを完了させ、きれいにしない場合には、相続人が何年も、この問題で悩まされることになります。相続税も膨大な金額になる可能性があります。

ここまで債務を含めた遺産が多額になる場合は、話し合いがまとまらずに最終的には、弁護士に依頼して、家庭裁判所の調停、審判で、何年もかかって、決着することになるとは思いますが。
その前に、話し合いで何とかできないものかと、相談者の代襲相続人の姪は考えています。

相談者の話しによると、兄弟姉妹のうちの一人弟が、頑として自分が遺産を全部取得すると、言い張っています。
この弟は、大学卒にもかかわらず、弁護士、税理士、司法書士の区別がつかない。
また、お金のことには敏感に反応する。弟は、弁護士に相談、依頼するつもりがまったくない。
準確定申告も知らないようだ。
ちょっと変な感じですね。

色々なところに相談に行ったという相談者です。
相談者の質問は次のとおりです。
1)弟がこういうちょっと変なので、弟のために成年後見の申立てができますか?
2)土地がいくつもあるので、どこの土地を自分が取得したらいいか、教えてほしい。
3)家庭裁判所の遺産分割調停は、誰が申立てますか?
4)なんとか、弟が話し合いに応じる方法はありますか?

1)について、弟は自分が健常者だと、言い張っているので、成年後見の申立ては無理、できないでしょう。
成年後見の申立てには、本人ついての医師の診断書が必要です。
医師の診断書が必要だということは、本人を病院に連れて行かなければなりません。
本人が健常者だと言っている以上、本人を病院に連れていくことは無理、できないでしょう。

ここでの問題は、遺産分割協議を行う場合、相続人の意思能力がない場合、例えば認知症の場合、意思能力のない人は、遺産分割協議に参加できません。この場合は、成年後見人が本人に代わって遺産分割協議に参加し、話し合います。
遺産分割協議書には、本人に代わって、成年後見人が署名、実印を押印します。
成年後見の申立てをし、家庭裁判所で成年後見人が正式に選任されるまで、約3か月かかります。

2)土地がいくつもあるので、どこの土地を自分が取得したらいいか、という点について
弁護士や税理士に聞いても分からなかったようです。
それはそうでしょう。司法書士の私でも分かりません。
どこの土地がどれだけの価値があるかどうかは、実際に売るときに、どれだけの値段で売れるかという問題です。
家庭裁判所の調停や審判では、それぞれの土地の評価を出す場合、不動産鑑定士の評価を参考にするかもしれません。

今の段階で不動産鑑定士に評価を依頼する場合は、結構な手数料、何十万円か、かかると思います。
今の段階では、不動産業者に査定書を作ってもらうのが簡単と言えば簡単な方法です。

3)家庭裁判所の遺産分割調停は、誰が申立てますか?という点について
遺産分割調停の申し立てでは、申立人と相手方になります。
申立人は、相談者がなるといえばなると思います。申立人は、話し合いをしたいという人です。
相手方は、話し合いに応じない人です。
弟は、話し合いに応じないようなので、相手方となります。

4)なんとか、弟が話し合いに応じる方法はありますか?という点について
遺産が7億円ということなので、ほぼ確実に相続税がかかると思います。債務がどのくらいあるのか分かりませんが。

遺産が7億円であれば、相続税が相当の金額でかかると思います。
弟が話し合いに応じないようであればあるほど、相続税が加算されます。
相続税の申告、納税期限、10か月を過ぎると、延滞税がかかってきます。

納期限から2か月以内は延滞税の税率は年利2.8%
納期限から2か月経過すると延滞税の税率は年利9.1%
納税しないと、どんどん延滞税が加算されます。

相続税を支払わないと、そのうち税務署は、不動産に抵当権を設定登記します。
設定登記する抵当権の内容は、登記記録に記載されます。
相続税がいくら、延滞税がいくら、と。

ということは、相続税を支払わなければ支払わないほど、どんどん相続税が増えていきます。
そうなると、相続人の取り分もどんどん減るということです。
そういうことなので、相続税がどれだけかかって、相続税を支払わないと、遺産がどれだけ減っていくかという、計算書を税理士に作ってもらってください。

お金に敏感だという弟に見せれば、話し合いに応じるかもしれません。
弟に言うときは、こうしてください、という言い方ではなく、この計算書のとおり、相続税を支払わないと、相続税がどんどん増えていき、反対に、私たちの取り分がどんどん減っていきますが、どうしたらいいですかねえ、という言い方がいいと思います。
これで、とりあえず、やってみてください。

そのほかのことで言えば、次のとおりです。
税務署が抵当権を設定登記して、強制競売の申立て、差し押さえをしてくれるといいですが、税務署が強制競売の申立て、差押をしたことを見たことがないので、どうでしょうかねえ。
被相続人には、金融機関の担保権がついている不動産があるということなので、返済がなければ、金融機関が強制競売の差押を登記します。
金融機関が差押をしてくれると、いいですね。
でも、今のところ、返済されているようなので、難しいかもしれませんね。

金融機関が強制競売の差押をする場合は、次のとおりです。
差し押さえをする前に、金融機関は、債権者代位権を行使して、被相続人名義の不動産について相続人名義に相続登記します。
この場合、相続人の法定相続分で登記します。
債権者の代位で登記すると、法務局は、各相続人に代位で名義変更、相続登記しました、と通知します。
裁判所の競売手続きで、不動産を売却し、裁判所が、まず、担保権のある債権者、税務署に順番に分配します。残ったお金を相続人に分配します。

強制競売だと、取り分は少なくなるかもしれませんね。金融機関の債務の遅延損害金や税務署の延滞税も考えれば。
でも、いつまでも解決しないよりはいいかもしれません。