「調整池所有」を目的とする地上権の相続登記の方法
分譲地内にある「調整池所有」を目的とする地上権の持分相続登記の方法について、解説します。
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
【相続登記相談事例】
父が亡くなり敷地と建物の相続登記をする必要があります。敷地は、分譲地内に存在し、分譲地には、調整池があります。この調整池の土地には、地上権が設定登記され、分譲地内の所有者が、地上権の共有持分で登記されています。
この場合、相続登記をする方法を教えてください。
地上権の登記記録(登記簿)

分譲地内の「調整池所有」を目的とする地上権とは
「地上権」とは、他人の土地において、建物や工作物を所有するために使用できる物権です 。
(地上権の内容)
第二百六十五条 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
分譲地内の「調整池所有」を目的とする地上権は、通常の宅地(敷地)とは異なり、排水・防災機能を担う共用施設に関する権利として設定されます。
分譲地における調整池では、分譲開発業者が調整池用地を確保するため、分譲する前に、土地所有者と地上権設定契約をし、地上権設定登記をします。
分譲開発業者が、敷地の分譲と同時に、「地上権(共有持分)」を各区画所有者に譲渡します。
区画購入者全員が、調整池を維持管理することになります。
「調整池所有」を目的とする地上権の相続登記(事例)
【事例】
分譲地:50区画
調整池敷地:1筆
地上権:各区画所有者が50分の1ずつ共有
被相続人父名義:地上権持分50分の1を保有
相続人:自筆遺言書で子Bに相続させる
自筆遺言書の検認手続(家庭裁判所)
事例の場合、被相続人父が自筆の遺言書を遺していたので、家庭裁判所で遺言書の検認手続をします。
この手続完了後、相続登記を申請することができます。
相続登記申請(事例)
次の2件で登記申請します。
(1/2)敷地と建物の所有権の相続登記
(2/2)調整池に関する地上権持分50分の1の相続登記
相続登記に必要な書類(事例)
まずは、通常の相続登記と同じ必要書類を用意します。
ただし、事例の場合、遺言書で相続登記しますので、被相続人の「出生から死亡まで全部」の除籍謄本は、必要ありません。
- 自筆遺言書(家庭裁判所の証明文があるもの)
- 被相続人:死亡時の除籍謄本、住民票除票(本籍・筆頭者記載)
- 相続人子B:戸籍謄本、住民票
- 固定資産評価証明書(固定資産税納税通知書・課税明細書)
登記申請書の作成(事例)
敷地と建物の相続登記:申請書の作成
(1/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父(氏名)○○)
(住所)○○
子B(氏名)○○
氏名ふりがな ○○ ○○
生年月日 〇年〇月〇日
メールアドレス ○○@○○(メールアドレスの申出は任意)
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報 検索用情報証明情報
評価証明情報
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局 ○○出張所・支局 御中
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・4%)
不動産の表示
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 宅地
地 積 ○○・○○平方メートル
この価格 金○○○円
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目 〇番地〇
家屋番号 〇町〇丁目 〇番〇の〇
種 類 居宅
構 造 木造スレートぶき2階建
床 面 積 1階 ○○・○○平方メートル
2階 ○○・○○平方メートル
この価格 金○○○円
調整池に関する地上権持分50分の1の相続登記:申請書の作成
(2/2)登記申請書(一部省略)
登記の目的 ○番地上権父(氏名)○○持分全部移転
原 因 令和〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父(氏名)○○)
(住所)○○
持分50分の1
子B(氏名)○○
添付情報
登記原因証明情報(前件添付) 評価証明情報
令和〇年〇月〇日申請 ○○法務局 ○○出張所・支局 御中
課税価格 金○○円
登録免許税 金○○円(課税価格の0・2%)
不動産の表示
所 在 ○○市〇区〇町〇丁目
地 番 〇番地〇
地 目 宅地
地 積 ○○・○○平方メートル
相続登記完了後の地上権の登記記録(登記簿)

まとめ:「調整池所有」を目的とする地上権の相続登記の方法
分譲地内にある「調整池所有」を目的とする地上権が、敷地の所有権とは別に、被相続人名義で登記されているときは、これも相続登記をする必要があります。
地上権の登記は、所有権の登記とは別に申請書を作成する必要があります。なぜなら、「登記の目的」が異なるからです。
不動産登記令(申請情報の作成及び提供)
第四条 申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。
不動産登記規則(一の申請情報によって申請することができる場合)
第三十五条 令第四条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
九 同一の不動産について申請する二以上の権利に関する登記(前号の登記を除く。)の登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるとき。
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