相続登記の必要書類
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
相続登記の必要書類は「相続の仕方」で異なります
相続登記の必要書類は、相続の仕方、すなわち、遺言書(公正証書遺言書や自筆証書遺言書)で行う場合、遺産分割協議書で行う場合、法定相続分で登記する場合、遺産分割調停調書で行う場合、遺贈で行う場合で異なります。後述します「ケースごとの相続登記の必要書類」をまずは参考に、ご自分の相続の仕方がどのケースに当てはまるのかをご確認ください。
また、外国籍の方の相続登記は、次のページでご確認ください。
相続登記と相続人が外国人(台湾の方)
被相続人が台湾の方の相続登記(戸籍証明書がない場合)
相続登記をスムーズ(比較的簡単)に行うための「台湾籍の方の公正証書遺言書作成」
被相続人が外国人(ニュージーランド人):遺言書で相続登記の方法
被相続人が外国人(アメリカ人):遺言書で相続登記の方法
相続登記の必要書類の取得は確実に
「相続登記の必要書類」は、相続登記を申請する際に、登記申請書と一緒に登記所に提出します。登記所は、必要書類をすべて確認した後、問題がなければ申請内容を登記記録に入力して相続登記を完了させます。このため、必要書類に不足があったり、誤りがあれば、再提出(一旦取下げ、もう一度提出)や訂正を求められます。
司法書士は、相続登記の専門家であるので、こういった不足書類や訂正がないように心掛けています。不足書類や訂正があれば、登記完了までの時間がかかることになります。
相続登記の必要書類は、相続登記においても、ほかの相続手続においても、戸籍関係書類などは共通しているものがあります。
相続登記やほかの名義変更で使用する戸籍関係書類を、まずは集めるところから始めます。この書類を集めるということが、最初の関門となります。根気よく一つ一つ集めていきます。
相続の仕方(法定相続、遺産分割、遺言)で必要となる書類が異なりますので、一つ一つ確かめながら書類を集めます。
相続登記の手順も参考にしてください。
相続登記の必要書類は、すべて原本を登記所に提出します。コピーのみを登記所に提出した場合、登記所は原本の提出を求めます。登記所は、必要書類の原本で間違いないことを確認するからです。もっとも、原本還付の手続をすれば、相続登記が完了した後、必要書類の原本を返却してくれます。
相続登記で、基本的に必要な書類は、以下のとおりです。
被相続人(登記名義人)について必要書類(原本が必要)
相続登記申請書の「添付情報」として法務局に提出するものです。
(1)被相続人の出生時から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
必要な理由:ほかに法定相続人がいないことを証明するため、戸籍関係の書類を出生時から死亡時まで連続したもの。
第3順位の兄弟姉妹が相続人となる場合、兄弟姉妹の被相続人については、原則通り、出生から死亡までの除籍謄本が必要です。
また、被相続人の両親(第2順位の相続人)(場合によって祖父母)が死亡していることを証明するために、両親の除籍謄本が必要です。
さらに、この両親の出生から死亡までの除籍謄本も必要です。なぜなら、法定相続分での登記、遺産分割での登記の場合、兄弟姉妹が相続人となるときは、兄弟姉妹が全部で誰と誰であると証明する必要があるからです。兄弟姉妹が相続人となる場合は、除籍謄本を取得するのに時間がかかると思われます。
相続関係説明図を提出することで、被相続人の戸籍関係書類のコピーを提出する必要がありません。
被相続人の本籍地が出生から死亡まで、日本各地にある場合は、取得するのに時間がかかります。
被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類(除籍謄本など)を取得することは、一般の人にとって難しいと思われます。そこで、次のページを参考にしてください。
(1)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して、「被相続人の出生から死亡までの」戸籍関係書類の取得方法(令和6年3月1日から)
(2)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して不動産の相続登記や預貯金などの相続手続で必要となる書類(戸籍関係書類)の取得方法
(3)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して戸籍関係書類を取得し、その後「法定相続情報証明書(一覧図の証明書)」を取得する方法
出生から死亡までの戸籍書類を集める方法は、基本的に、死亡時の除籍謄本の記載内容から「前の本籍」を確認して、順番に遡って取得します。「前の本籍」が日本各地にある場合、通常、郵送で取得しますので、時間がかかることになります。
戸籍が連続しているかどうかを確認する必要がありますが、役所に出向いて除籍謄本などを取得する場合、役所の人が教えてくれます。司法書士に相談すれば教えてくれます。
結婚した場合、本籍を移転した場合、離婚した場合などで、戸籍が新たに作成されます。
少なくとも被相続人が、10歳くらいから戸籍に記載のあるものを用意します。
通常、10歳の年齢(小学校4年生)では、子供を生むことは考えられないからです。
被相続人の除籍謄本の取得方法や相続登記と各種相続証明書の取得方法を参考にしてください。
相続登記(不動産名義変更)だけで、被相続人に関する除籍謄本などの戸籍関係証明書を登記所に提出する場合、「出生から」に除籍謄本は要求されず、少なくとも被相続人が10歳頃からの除籍謄本を提出すればよいことになっています。(10歳の子の段階で、この子には子がいないのが一般的だからです。)
ところが、「法定相続情報一覧図の写の証明書」を取得する場合は、「不動産登記規則第247条第3項第2号」で被相続人の出生から死亡まですべての除籍謄本など戸籍関係証明書を提出する必要があることが規定されていますので、ご注意ください。
「不動産登記規則第247条第3項第2号」
「被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書」と規定されています。