相続登記の必要書類

  1. 相続登記の必要書類
    1. 相続登記の必要書類は「相続の仕方」で異なります
    2. 相続登記の必要書類の取得は確実に
    3. 被相続人(登記名義人)について必要書類(原本が必要)
      1. (1)被相続人の出生時から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
        1. 遺言書で相続登記を行うとき
      2. (2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または「除かれた戸籍の附票」
        1. 「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことの重要性
    4. 法定相続人について必要書類(原本が必要)
      1. (1)戸籍謄本(戸籍・全部事項証明書)(法定相続人全員)
      2. (2)住民票(実際に相続で不動産を取得した相続人)
        1. 外国に居住する外国人(外国籍)の住所証明情報(住所証明書)
      3. (3)印鑑証明書(法定相続人全員)(家庭裁判所で相続放棄した人を除く)
      4. (4)不動産の固定資産税評価証明書(東京23区の場合は都税事務所の評価証明書)
      5. (5)遺産分割協議書(作成します)
      6. (6)相続人の委任状(必要があるとき)
      7. (7)権利証、公図(登記所で取得)、名寄帳(必要に応じて)
    5. ケースごとの相続登記の必要書類(評価証明書などは省きます)
      1. ケース1:遺言書で相続登記(通常の法定相続人の「相続」の場合)(必要書類)
        1. ケース1の(1)遺言書で相続登記:被相続人と相続人が、親子(配偶者)の関係であるとき(必要書類)
        2. ケース1の(2)遺言書で相続登記: 被相続人と相続人が、兄弟姉妹の関係であるとき(必要書類)
      2. ケース2:通常の遺産分割協議で相続登記(必要書類)
      3. ケース3:法定相続分で相続登記(必要書類)
      4. ケース4:家庭裁判所での遺産分割調停で相続登記(必要書類)
      5. ケース5:遺言書による遺贈登記(法定相続人以外の遺贈の登記)(必要書類)
        1. 受遺者(遺贈を受ける人)の必要書類
        2. 遺言執行者の必要書類
        3. 共同相続人全員が登記義務者となるときの必要書類
    6. 他に相続人がいないことの証明書(上申書)とは
      1. 「他に相続人がいないことの証明書(上申書)」の作成例
    7. 被相続人が登記名義人に相違ないことの上申書
      1. 「被相続人が登記名義人に相違ないことの上申書」の作成例
    8. 委任状(相続登記)の例
    9. 相続登記手続の必要な書類の「有効期限」について
    10. 相続登記に必要な書類の「通数」について

相続登記の必要書類

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

相続登記の必要書類は「相続の仕方」で異なります

相続登記の必要書類は、相続の仕方、すなわち、遺言書(公正証書遺言書や自筆証書遺言書)で行う場合、遺産分割協議書で行う場合、法定相続分で登記する場合、遺産分割調停調書で行う場合、遺贈で行う場合で異なります。後述します「ケースごとの相続登記の必要書類」をまずは参考に、ご自分の相続の仕方がどのケースに当てはまるのかをご確認ください。
また、外国籍の方の相続登記は、次のページでご確認ください。
相続登記と相続人が外国人(台湾の方)
被相続人が台湾の方の相続登記(戸籍証明書がない場合)
相続登記をスムーズ(比較的簡単)に行うための「台湾籍の方の公正証書遺言書作成」
被相続人が外国人(ニュージーランド人):遺言書で相続登記の方法
被相続人が外国人(アメリカ人):遺言書で相続登記の方法

相続登記の必要書類の取得は確実に

「相続登記の必要書類」は、相続登記を申請する際に、登記申請書と一緒に登記所に提出します。登記所は、必要書類をすべて確認した後、問題がなければ申請内容を登記記録に入力して相続登記を完了させます。このため、必要書類に不足があったり、誤りがあれば、再提出(一旦取下げ、もう一度提出)や訂正を求められます。
司法書士は、相続登記の専門家であるので、こういった不足書類や訂正がないように心掛けています。不足書類や訂正があれば、登記完了までの時間がかかることになります。

相続登記の必要書類は、相続登記においても、ほかの相続手続においても、戸籍関係書類などは共通しているものがあります。
相続登記やほかの名義変更で使用する戸籍関係書類を、まずは集めるところから始めます。この書類を集めるということが、最初の関門となります。根気よく一つ一つ集めていきます。
相続の仕方(法定相続、遺産分割、遺言)で必要となる書類が異なりますので、一つ一つ確かめながら書類を集めます。
相続登記の手順も参考にしてください。

相続登記の必要書類は、すべて原本を登記所に提出します。コピーのみを登記所に提出した場合、登記所は原本の提出を求めます。登記所は、必要書類の原本で間違いないことを確認するからです。もっとも、原本還付の手続をすれば、相続登記が完了した後、必要書類の原本を返却してくれます。

相続登記で、基本的に必要な書類は、以下のとおりです。

被相続人(登記名義人)について必要書類(原本が必要)

相続登記申請書の「添付情報」として法務局に提出するものです。

(1)被相続人の出生時から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)

必要な理由:ほかに法定相続人がいないことを証明するため、戸籍関係の書類を出生時から死亡時まで連続したもの

第3順位の兄弟姉妹が相続人となる場合、兄弟姉妹の被相続人については、原則通り、出生から死亡までの除籍謄本が必要です。
また、被相続人の両親(第2順位の相続人)(場合によって祖父母)が死亡していることを証明するために、両親の除籍謄本が必要です。
さらに、この両親の出生から死亡までの除籍謄本も必要です。なぜなら、法定相続分での登記、遺産分割での登記の場合、兄弟姉妹が相続人となるときは、兄弟姉妹が全部で誰と誰であると証明する必要があるからです。兄弟姉妹が相続人となる場合は、除籍謄本を取得するのに時間がかかると思われます。

相続関係説明図を提出することで、被相続人の戸籍関係書類のコピーを提出する必要がありません。
被相続人の本籍地が出生から死亡まで、日本各地にある場合は、取得するのに時間がかかります。

出生から死亡までの戸籍書類を集める方法は、基本的に、死亡時の除籍謄本の記載内容から「前の本籍」を確認して、順番に遡って取得します。「前の本籍」が日本各地にある場合、通常、郵送で取得しますので、時間がかかることになります。

戸籍が連続しているかどうかを確認する必要がありますが、役所に出向いて除籍謄本などを取得する場合、役所の人が教えてくれます。司法書士に相談すれば教えてくれます。

結婚した場合、本籍を移転した場合、離婚した場合などで、戸籍が新たに作成されます。
少なくとも被相続人が、10歳くらいから戸籍に記載のあるものを用意します。
通常、10歳の年齢(小学校4年生)では、子供を生むことは考えられないからです。
被相続人の除籍謄本の取得方法相続登記と各種相続証明書の取得方法を参考にしてください。

相続登記(不動産名義変更)だけで、被相続人に関する除籍謄本などの戸籍関係証明書を登記所に提出する場合、「出生から」に除籍謄本は要求されず、少なくとも被相続人が10歳頃からの除籍謄本を提出すればよいことになっています。(10歳の子の段階で、この子には子がいないのが一般的だからです。)
ところが、法定相続情報一覧図の写の証明書」を取得する場合は、「不動産登記規則第247条第3項第2号」で被相続人の出生から死亡まですべての除籍謄本など戸籍関係証明書を提出する必要があることが規定されていますので、ご注意ください。
不動産登記規則第247条第3項第2号
「被相続人(代襲相続がある場合には、被代襲者を含む。)の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書」と規定されています。

例えば、父が死亡した時に相続登記をし(完了)、次に母が死亡し相続登記をする場合は、次の方法で行うと、除籍謄本を取得する手間を省けます。
①この場合、母死亡の除籍謄本を取得します。
②母死亡から遡って、母が父と結婚した時までの除籍謄本は、父の相続登記で使用した除籍謄本を再度、使用します(できます)。この理由は、父の相続登記で使用した除籍謄本の内容は、何年経っても変わらない(変更がない)からです。
③母が父と結婚する前から母の出生まで遡って除籍謄本を取得します。

戸籍関係の書類を出生時から死亡時まで、連続したものを用意できない場合、これは、例えば、市区町村の庁舎が戦争などで火災・倒壊により戸籍関係書類が焼失している場合は、連続して書類を取得できませんので、焼失していることの証明書と法定相続人全員の「他に相続人がいないことの証明書」として上申書に署名・実印を押印した書類が必要になります。他に相続人がいないことの証明書とはを参考にしてください。
遺産分割協議書により相続登記を申請するときは、遺産分割協議書に「他に相続人がいない」旨を記載することでも問題ありません。遺産分割協議書には相続人全員が署名・捺印しますので。

遺言書で相続登記を行うとき

相続手続に使用できる公正証書遺言書や自筆証書遺言書がある場合、遺言者の親が子に「相続させる。」というときは、被相続人と相続人との関係(親子関係)がわかる戸籍の証明書(被相続人親の除籍謄本と相続人子の戸籍謄本)で足り、被相続人親の出生まで遡って証明する書類は必要はありません。

これが、遺言書であっても、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合は、兄弟姉妹の被相続人の出生まで遡って証明する書類が必要です。この理由は、兄弟姉妹の被相続人に子がいないこと、親がいないこと(すでに死亡していること)を証明する必要があります。兄弟姉妹の被相続人に子と親がいないことによって、兄弟姉妹が相続人となり、登記の原因を「相続」とする必要があるからです。
登記の原因を「相続」とすることで、登録免許税を「固定資産評価価格」の0・4%で計算します。

(2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または「除かれた戸籍の附票」

必要な理由:登記記録(登記簿)に記載された「被相続人の登記名義である住所・氏名」と「住民票に記載された住所・氏名」を一致させるため。被相続人の住民票の除票には、本籍・筆頭者の記載が必要です。(相続人の住民票には、本籍・筆頭者の記載は不要です。)
「原本還付の手続」で住民票の除票を返却してもらいます。

被相続人の(除かれた)「戸籍の附票」を住民票除票に代えて使用する場合
令和4年1月11日より、原則(特別の請求がない限り)「戸籍の附票」には、本籍・筆頭者が記載されないことになりました。
そこで、同日以降、(除かれた)「戸籍の附票」を使用する場合、市区町村役場に対して、「本籍・筆頭者」も記載するよう、特別の請求をして、(除かれた)「戸籍の附票」を取得する必要があります。

これらを一致させることによって、登記された名義人が今回相続登記申請する被相続人と同一人物であることを証明します。
被相続人の最後の住所証明書を取得する理由を参考にしてください。

被相続人の「住民票除票」や「除かれた戸籍の附票」を取得できない場合
これら市区町村の保存期間は5年間のため、死亡時から5年を経過すると廃棄処分され取得することができない場合があります。(現在は150年。ただし、後述。)

【横浜市の場合】
住民票は、住民票内の全ての方が転出、死亡などにより消除されると除票となります。
住民票の除票の保存期間は、法令が改正され令和元年6月20日より5年間から150年間保存することになりました。
なお、横浜市では、平成25年3月31日までの住民票の除票は保存期間が経過しているため、住民票の除票の写しを発行することはできません。

住民票の除票の写しは何年前までのものの交付を受けることができますか。 横浜市 (yokohama.lg.jp)

【横浜市の場合】
戸籍の附票は、戸籍内の全ての方が消除されると戸籍の附票の除票となります。
戸籍の附票の除票は、法令が改正され令和元年6月20日より5年間から150年間保管することになりました。
※横浜市では、平成25年3月31日までの戸籍の附票の除票は保管期間が経過しているため、戸籍の附票の除票の写しを交付することはできません。

戸籍の附票の除票の写しは、何年前までのものの交付を受けることができますか。 横浜市 (yokohama.lg.jp)

この場合は、次の書類が必要です。次の書類を登記所に提出する場合であっても、被相続人の「住所・氏名」を証明する書類を最大限すべて(取得できるものはすべて)取得する必要があります。
(1)「被相続人が登記された登記名義人と同一人物であること」の「上申書
    →(2)の権利証があれば、不要です。
(2)被相続人名義の権利証(登記済権利証・登記識別情報通知)
    → 当事務所では、「権利証」をご用意いただいております。
(3)場合によって不在籍証明書、不在住証明書
    →(2)の権利証があれば、不要です。
(4)戸籍謄本・除籍謄本など戸籍証明書に記載の「本籍」が「登記上の住所」と一致すれば、
   これを証明書として提出できます。(原本還付の手続をする。)
    →(1)(2)(3)は不要です。

原本還付の手続とは、例えば、住民票の原本を返却して欲しいとき、住民票のコピーに「これは原本の写しに相違ありません。」と記入し、申請人の氏名を記入して印鑑を捺します。
登記所は、登記が完了した後に、原本を返却してくれます。

「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことの重要性

「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことを、被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)で証明できれば問題ありません。

「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことは重要です。
これを証明できないのであれば、相続登記そのものができません。登記名義人とは別の被相続人の可能性があるからです。登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明することによって登記がなされます。登記名義人と被相続人が同一人物であることは、基本的に「住所と氏名」で特定します。

そのため、被相続人の死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」に登記上の住所が記載されていることが必要となるわけです。ただし、死亡時の「住民票の除票(または戸籍の附票)」を取得できない場合があります。これは、被相続人の死亡時から5年を経過している場合です。(役所は、法律の規定により5年でこれらのデータを破棄処分する取り扱いです。)(現在は150年。ただし、前述。)

このような「登記名義人と被相続人が同一人物であることを証明する」ことができない場合は、どうしたらよいでしょうか。
この場合、被相続人が不動産を取得したときに登記所から発行された「権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)」があれば問題ありません。
なぜなら、このような「権利証」を持っている人は、通常、登記名義人といえるからです。登記名義人でなければ「権利証」を持っていないからです。したがって、相続における登記名義人は、「権利証」を持っていた「被相続人」といえるからです。

よく相続登記では「権利証」は必要ないと言われます。これは、登記申請における必須の書類ではないからです。しかし、前述のとおり、相続登記においても、別の登記においても、「登記名義人と被相続人(別の登記では申請人)とが同一人物であることを証明すること」は登記において最重要事項です。これが登記手続きを進める上での前提条件となります。
ですから、相続登記だからと言って、「権利証」は不要です、とは軽々しく言えないことになります。もし、この権利証がない場合は、別の方法(上申書など)をとることになります。登記所としては、別の方法(上申書など)よりも「権利証」を提出してくれれば安心してくれます。

法定相続人について必要書類(原本が必要)

(1)戸籍謄本(戸籍・全部事項証明書)(法定相続人全員)

必要な理由:被相続人の法定相続人(全員)であることを証明するため。
相続関係説明図を提出することで、相続人の戸籍証明書のコピーを提出する必要がありません。

相続人の戸籍証明書(戸籍謄本)は、被相続人の死亡後に取得する必要があります。
これは、被相続人の死亡後において、相続人が生存していることを証明するために必要です。
したがいまして、戸籍証明書に有効期限の定めがないからといって、被相続人の死亡前に取得した相続人の戸籍証明書は使用できないことになります。
もっとも、被相続人の死亡後に取得した相続人の戸籍証明書であれば、有効期限の定めはありません。

家庭裁判所の相続放棄をした人からは、「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」をもらいます。これを登記所に提出します。

相続放棄申述受理通知書は、相続放棄の手続が完了しますと、家庭裁判所から相続放棄をした人に郵送されます。これを相続登記はじめ各種相続手続で使用します。
相続放棄申述受理証明書は、必要があれば、取得するものです。相続放棄をした本人が取得することは通常ありません(1通150円)。
この相続放棄申述受理証明書を取得しようとする人は、通常、相続放棄をした人以外の相続人や債権者などの利害関係人です。
相続放棄をした人以外の人が、相続放棄申述受理証明書を取得しようとする場合、家庭裁判所に利害関係を有する証明書(放棄をした人との関係を証明する戸籍謄本など)を提出します。意外と面倒です。
相続放棄をした人から相続放棄申述受理通知書をもらう方法が一番簡単です。
注:めったにないことですが、相続放棄の申述をしたときから30年を経過しますと、家庭裁判所がデータを破棄する取り扱いとなっていますので、相続放棄申述受理証明書を取得することができません。相続放棄の「照会結果」についても同じです。

(2)住民票(実際に相続で不動産を取得した相続人)

必要な理由:「実際に相続により不動産を取得した相続人」として登記記録(登記簿)に記載するため、実在の人物であることを証明する必要があります。相続人の住民票には、本籍・筆頭者の記載は不要です。(マイナンバーカードの番号も不要)原本還付の手続で住民票を返却してもらいます。
法定相続情報証明書で相続登記をする場合、この証明書に、相続人の住所が記載されている場合は、この記載を援用することができますので、別途、住民票の提出は不要となります。
海外在住の日本人(日本国籍)・外国人(外国籍)が不動産を取得したときは、「国内連絡先(日本国内における連絡先となる人)」の登記が必要です。これについては、「日本国内における連絡先となる人」の登記の方法(令和6年4月1日施行)を参考にしてください。
外国人(外国籍)が不動産を取得したときは、外国人が所有権の登記をするときの氏名:ローマ字で氏名を併記する(令和6年4月1日から)を参考にしてください。