相続登記と委任状

相続登記と委任状

相続登記(不動産名義変更)の場合においても、司法書士にその登記手続の代理申請を委任するときには、不動産を相続により取得した相続人(申請人)は、司法書士に対して登記用の委任状(登記の申請を委任するという委任状)を提出します。
もっとも、登記用の委任状は、司法書士が作成し、相続人に署名、捺印(認印で可)してもらいます。

ご自分で相続登記を申請する場合、不動産を相続により取得した相続人が数人いるときには、相続人のうちの一人に、相続登記の代理申請を委任することができます。
この場合にも、登記用の委任状を作成し、委任する相続人が署名捺印(認印で可)します。
この場合、登記申請書には、代理申請する相続人の印鑑(認印で可)のみを押印します。
委任状は、相続登記の必要書類(登記申請の添付情報:代理権限証明情報)として登記所に提出します。

例えば、遺産分割協議書には、相続人が署名し、「実印」を押印しなければなりません。しかし、「委任状」は、「認印」で押印して問題ありません。もっとも、委任状にも実印を押印しても何ら問題はありません。結局、委任状には、認印でも実印でもどちらを押印してもよいということになります。

委任状の作成に当たって、委任事項は、①相続登記申請と②登記識別情報(通知)の受領の2点を最低限記載する必要があります。
もし、②登記識別情報の受領の委任事項が記載されていない場合、①相続登記申請の委任事項のみの記載の場合には、登記完了後に、登記所から発行される「登記識別情報」を代理人である相続人が、ほかの相続人に代わって受け取ることができません。
登記完了後、登記所から発行される登記識別情報(権利証)は、新たに権利を取得した名義人ごとに発行され、基本的には、新たに権利を取得した名義人が個別に受領することになっているからです。

この場合、他の相続人から「委任状」をもらって登記所に提出するか、他の相続人が登記所に出向いて登記識別情報通知を受け取ることになります。
したがって、②登記識別情報の受領権限も、必ず、委任事項として記載します。
登記識別情報通知は、権利証(登記識別情報通知にはどこにも「権利証」とは書かれていない。)として重要で、その後、不動産を売却するなどして第三者に名義変更登記をする際に必要になります。
登記識別情報については、こちらでご確認ください。

次のようなこともありますので、ご注意ください。
ある相続人2名が、司法書士に依頼することなく自分で相続登記を申請し、登記が完了したので、法務局(登記所)に完了書類を受取りに行きました。
(この場合、相続人の一方が他方に登記申請を委任するという方法をとっていませんでした。)
相続人の一人が二人分の登記識別情報通知を受け取ろうとしたところ、登記所の受付担当者から、登記識別情報通知は二人別々に渡さなければなりません、と言われたので、相続人二人が別々に受け取りました。
その後、相続した不動産を売却することになったので、買主に名義変更登記する司法書士から、売主となる相続人2名に、登記識別情報通知(権利証)を用意してください、と言われ、探したところ、相続人の一人が、登記所から受け取ったはずの登記識別情報通知が、どこをどう探しても見当たらない、ということで、困ったことになりました。
この司法書士からは、売買でお金が動く場合、登記識別情報通知という権利証がない(紛失している)場合は、司法書士が作成する「本人確認情報」を登記識別情報通知(権利証)の代わりに登記所に提出することになります、と言われました。
また、この本人確認情報の作成費用として○○万円かかります、と言われました。
ということで、登記識別情報通知(権利証)を紛失してしまったことで、余計な手間と費用がかかることとなってしまいました。

この場合、登記識別情報通知を紛失してしまった相続人が、どこをどう探しても見当たらない理由が次です。
この相続人2名は、司法書士に依頼することなく自分で相続登記を申請し、自分たちで法務局(登記所)から、登記識別情報通知を受け取ったということで、登記識別情報通知が重要書類の権利証であるという認識が低かったのだと思われます。
相続登記の場合、登記が完了しますと、登記識別情報通知のほかに「登記完了証」が発行されます。登記完了証は、登記が完了しましたという意味にすぎません。これは重要書類ではありません。登記完了証を紛失しても何ら問題ありません。
この相続人は、登記識別情報通知と登記完了証を同じようなものだと思ったのかもしれません。
それぞれ、ほぼ一枚で発行されます。(登記識別情報通知は不動産1個につき1枚(1ページ)で発行され、登記完了証は数枚(数ページ)の場合があります。)
また、司法書士が相続登記の依頼を受けて、登記が完了しますと、登記識別情報通知と登記完了証を、例えば、「不動産登記権利情報」といった厚紙の「表紙」に綴じて、依頼者に渡します。
登記識別情報通知が権利証として重要書類ですよ、と言って、依頼者に説明します。依頼者は、登記識別情報通知が権利証として「不動産登記権利情報」といった厚紙の「表紙」に綴じられていること、と司法書士からこれが重要書類だということの説明を受けているので、登記識別情報通知の重要性を認識することになります。
この二人の相続人が受け取った登記識別情報通知は、 「不動産登記権利情報」といった「表紙」に綴じられていなかったことからも、この書類の重要性を認識できなかったものと思われます。
もっとも、登記所の担当者が、この重要性を説明していたかどうかは不明です。

委任状のひな形

委任状(相続登記)

令和   年  月  日

相続人(委任者)

                   (住所)

                  (氏名)              (認印で可)

私は、下記の者を代理人と定め、後記の登記申請に関する権限および本件登記申請に係る登記識別情報の受領に関する権限を委任する。

     受任者(代理人となる人)
     (住所)
     (氏名)

登記の目的  所有権移転
原   因  令和  年  月  日 相続
相 続 人  (被相続人(氏名)○○)
      (相続人の氏名)○○
不動産の表示
 土地:(所在・地番)○○ の土地
 建物:(所在・家屋番号)〇〇 の建物

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