相続登記(不動産名義変更)の手順を考える
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
相続登記(不動産名義変更)は、何から考えたらよいでしょうか。何から始めたらよいでしょうか。それではまず、相続登記の完了までの手順から考えてみましょう。
その前に、自分が行おうとしている相続登記がどのくらいの難しさなのかを、一応は、確認された方がよいでしょう。【相続登記の難易度】相続登記を自分ですることは可能でしょうか。を参考にしてください。
パソコンでその手順を打ち込んでいきます。自分に合ったマニュアルのようなものを作っていきます。
頭の中で考えていても、全体像と個々に必要な書類が何なのか分かりにくいと思います。
そこで、最初は大雑把に手順を作り、足りないところや修正する箇所は、後からでもいいので、とにかく完了までの手順をざっと作りましょう。
必要な書類は、チェックリストとして、手順の中に書き込みましょう。
そうすれば、いつでも、その手順を見直して、自分が今どの時点の作業をしているのか、必要書類はどこまで揃っているのかが分かるようになります。
以下の内容は、相続税がかかるかどうかの問題、かかるとしても問題がないかどうかをクリアしていることを前提としています。相続税については、こちらを参考にしてください。そのほか、法定相続か遺産分割かの選択(相続の仕方)を参考にしてください。
被相続人の死亡により「住宅ローンを保険金で返済」した場合は、こちら「名義人が死亡したときの抵当権抹消登記(方法)」を参考にしてください。
また、不動産を含む各種相続手続について相続手続(名義変更・預貯金・相続税申告)の順番(パターン別)を参考にしてみてください。
相続登記の方法など相続・遺言の相談をしたい方は、相続登記など相続相談方法を参考にしてください。
相続登記チェックリスト
相続登記チェックリストは ➡こちらからダウンロード(Excel)
相続登記の具体的な手順
相続登記の手順1:相続人は誰がなるのか(法定相続人は誰?)
手順の中で、まず考えることは、相続人が誰になるのかということです。ここを間違えてしまいますと、その後のこと、例えば、必要書類について連動して間違えてしまうことになるからです。
普通、相続人と言っていますが、ここでの相続人は、「法律で定められた相続人(法定相続人)」のことを言います。
法定相続人は、民法という法律で定められています。例えば、どういう場合に自分が法定相続人となるかということです。
通常、自分が子であれば、親が亡くなったときは自分が法定相続人となることは、だいたいの人が知っていると思います。
まずは、法定相続人が誰になるのかを確定しましょう。
法定相続人が誰なのかが分かりにくいときは司法書士に聞いてみてください。
法定相続人が誰になるのかの具体的な説明はこちら「法定相続人」を見てください。
家督相続は、こちらを参考にしてください。
相続登記の手順2:法定相続人の相続分はいくつ?
法定相続人が誰なのかが確定しましたら、次に考える手順としては相続分です。相続分も民法という法律で定められています。法律で定めらているので法定相続分と言います。
この法定相続分は何分のいくつ、というように分数で表します。法定相続人が何人もいるときは、それぞれの法定相続人が持つ分数を計算します。小学校で習った分数計算の方法で十分計算できます。
ということで、法定相続人が誰と誰の場合(二人以上の場合)、それぞれの法定相続人が持つ法定相続分がいくつなのかを確定します。
法定相続分を確定することは、次のときに意味があります。
(1)法定相続分で名義変更するとき
これは、法定相続分の共有で名義変更の登記をしますので、登記申請書にそれぞれの法定相続人の持分として記載する必要があるからです。
(2)法定相続人の間で遺産分割の話し合いをするとき
これは、法定相続人の間で遺産を分ける(遺産分割)話し合いをするとき、誰が何を相続で取得するかを決める際の一つの基準となるからです。
例えば、子の一人Aに2分の1の法定相続分があったとします。この場合、Aは、自分は法定相続分2分の1を持っているから、遺産の半分が欲しい、と言うこともあるでしょう。あるいは、Aは、自分には法定相続分2分の1を持っているけれども、お父さんの生前、色々援助してもらったから、4分の1でいいよ、と言うようなことです。
このように、法定相続分は遺産分割の話し合いで一つの基準としての役割があるからです。
法定相続分がいくつなのかが分かりにくいときは司法書士に聞いてみてください。
法定相続分がいくつになるのかの具体的な説明はこちら「法定相続分」を見てください。
相続登記の手順3:遺言書がありますか?
最近は、遺言書を作成する人が増えていますね。相続人の間での相続争いを回避する意味や、相続人の間での遺産分割の話し合いを省略する意味や、遺産を残す人の意思が死後、反映されるようにする意味でも、遺言書を書いておく人が増えています。
そこで、次の手順として、遺言書があるのかどうかを確認することが必要となります。
なぜなら、遺言書があれば、ほかの相続方法(遺産分割協議)に優先して、遺言書に書かれた内容に従って相続手続をする必要があるからです。
遺言書があるのに、一部の相続人がこれを認めようとしない場合であっても、基本的には、遺言書の内容に従って相続手続を進めなければなりません。
遺言書の中に遺言執行者(遺言の内容を実行する人)が指定されていれば、この遺言執行者が相続手続を進めることになります。遺言執行者が指定されている場合の相続手続を参考にしてください。
相続登記の手順3の(1):遺言書の作成形式を確認
遺言書があったとき、次の手順として、遺言書がどういう形式で作成されたのかを確認します。遺言書には主に次の種類があります。
遺言書によっては家庭裁判所の検認手続をしなければなりませんので、その確認が必要です。遺言書があるときを参考にしてください。
(1)自筆証書遺言書(登記所の保管制度を利用しない遺言書)
家庭裁判所の検認手続で遺言書に検認の証明書を付けてもらいます。
この検認の証明書が付いていない遺言書は、相続登記(ほか各種相続手続)で使用できません。
(2)自筆証書遺言書(登記所の保管制度を利用した遺言書)
(3)公正証書遺言書(正本・謄本)(公証人役場で作成)
相続登記の手順3の(2):遺言書に書かれている内容で相続手続ができるのかを確認
次の手順として、遺言書に書かれている記載内容で相続手続ができるかどうかを確認します。
公正証書遺言書は、間違いの記載や記載されるべき事項が記載されていないことはほとんどありませんので、ほぼ問題ありませんが、自筆証書遺言書は、記載内容で相続手続ができるかどうかを慎重に確認する必要があります。
作成された遺言書で相続手続ができるかどうかは、遺言書作成講座や遺言書作成の注意点を参考にしてください。
遺言書作成の形式を確認し、記載内容も問題がない場合、その次の手順として、もし、遺言書の記載内容から、法定相続人のうち「遺留分を有する人」が遺産を取得できないようなことが書かれている場合であっても、遺言書の内容に従って相続手続を進めます。
遺産を取得できない法定相続人には、「遺留分」(民法という法律で最低限保証されている相続分)がある場合がありますので、遺産を取得する相続人に対して「遺留分侵害額請求権」を行使して、遺留分を侵害された金額を支払ってください、というように請求できます。
2019年7月1日以降開始した相続では、この「遺留分侵害額請求権」は、金銭の支払いを請求できるだけで、遺言書の内容を否定することはできません。例えば、不動産を自分に引き渡すように請求できません。
これは、相続法の改正前の「遺留分減殺請求権」というものは、2019年7月1日以降開始した相続では行使できないからです。
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