遺留分侵害額請求権(遺言書で相続手続をする場合)

遺留分侵害額請求権(遺言書で相続手続をする場合)

【事例】相続人が配偶者と子A・B2名、遺産の額が3,000万円、子Bが被相続人の死亡の8年前、生計の資本として500万円の贈与を受けていました。遺言書の内容は、Bを除く配偶者と子Aにそれぞれ1,500万円ずつ相続させるという内容です。この場合、子Bは、遺留分侵害額請求をする場合、いくらを請求することができるでしょうか。

遺留分について

遺言書(自筆証書遺言書や公正証書遺言書など)に基づいて相続手続きをするときに、問題となるのが遺留分です。遺留分については、こちらを参考にしてください。
遺留分は、法定相続人に保障された一定割合の権利です。

相続人に保障された権利とはいっても、生前贈与を受けていた場合など、被相続人からの特別受益があった場合には、遺留分の割合で計算した額から特別受益額を差し引いた額が、実際の遺留分の額になります。
したがって、遺言で相続させる記載のない相続人には、必ず遺留分が保障されているわけではなく、遺留分があるといっても、生前贈与(生前贈与の内容に制限あり、相続開始前10年以内の生前贈与(例外あり))など特別受益があった場合には、実際、0円ということもありえます。

遺留分権利者として、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分があるのは、被相続人の子、配偶者と直系尊属です。
遺留分の割合は、子と配偶者には、被相続人の財産の2分の1です。直系尊属は3分の1です。

被相続人の死亡時に、遺言書で相続手続きをする場合

遺言書どおりに相続手続きをしたいとき、遺言で相続させる記載のない相続人(被相続人の兄弟姉妹を除いて)には、遺留分の権利があります。
この場合であっても、遺言書どおりに相続手続きをすることができます。

遺留分の問題は、相続させられない相続人が遺留分を行使するかしないかの問題です。

遺留分を行使する権利のことを「遺留分侵害額請求権」(2019年7月1日以降開始した相続に適用)といいます。
遺留分侵害額請求権は、自分が相続させられないので、「自分の遺留分に相当する金額」を支払ってください、と請求することです。

さて、遺言書どおりに相続手続きをする場合、遺留分を有する相続人から、要求されたときは、手続をそのまま続行してよいでしょうか。

そのまま相続手続きを続行して問題ありません。不動産の名義変更(相続登記)をする場合でも同じです。

この場合、生前、被相続人が遺留分権利者に贈与した金額について、被相続人のメモ、遺留分権利者の書面など、生前に取っておくと明確になります。また、遺言書で生前贈与の内容を書いておけば明確になります。

そもそも、相続人のうちの一人に相続させるという遺言書の場合、遺留分の権利を持っている相続人から、相続開始後、遺留分侵害額請求があることが予想されますので、そのための準備を被相続人の生前に行っておいた方がよいでしょう。
こういうメモや書面をとっておかない場合、遺言書に書かれていない場合は、相続時に問題が生ずることになる可能性があります。問題になる可能性が高いからこそ、メモや書面、遺言書で生前贈与の内容を書いておく必要があります。

遺留分侵害額の計算方法

民法の規定から分かることは

次に、民法の規定をみていきましょう。

民法(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

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民法(遺留分侵害額の請求)
第千四十六条 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
 遺留分侵害額は、第千四十二条の規定による遺留分から第一号及び第二号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する。
 遺留分権利者が受けた遺贈又は第九百三条第一項に規定する贈与の価額
 第九百条から第九百二条まで、第九百三条及び第九百四条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
 被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第八百九十九条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第三項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

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相続人の遺留分侵害額を計算する場合の基本は、

  1. 相続時の遺産の額に「生前贈与の額」を加えて、債務の全額を差し引く。
    これを遺留分を計算するための遺産の額とする。
    「遺留分を計算するための額」=「相続時の遺産の額」+「生前贈与の額」-「債務の全額」
  2. 相続人に対する「生前贈与の額」は、「生前贈与が相続開始前10年以内に行われ」かつ「婚姻・養子縁組のため、生計の資本としての贈与に限る。

相続人が遺留分を侵害された場合、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができる。(請求するかどうかは、遺留分権利者の自由)

遺留分侵害額の具体的な計算方法

【事例の場合】
相続人:配偶者と子A・B
遺産の額:3,000万円
子Bは、8年前、生計の資本として500万円の贈与を受けている。
遺言書の内容は、Bを除く配偶者と子Aにそれぞれ1,500万円ずつ相続させるという内容

この場合(10年以内の生前贈与)、
子Bの遺留分の割合:1/2×1/4=1/8(1042条)
(子Bの遺留分は、遺産の額の1/2に、子Bの法定相続分1/4を掛けます。)
遺留分を算定するための財産の価額:3,000万円+500万円=3,500万円(1043条)
子Bの遺留分の額:3,500万円×1/8=437.5万円(1042条、1043条)
子Bが遺留分侵害額請求権を行使できる遺留分侵害額:437.5万円-500万円=0円(1046条2項)
結局、子Bは生前贈与を受けていたので、遺留分侵害額を請求することができないことになります。

子Bが10年以上前に生前贈与を受けていた場合は、
遺留分を算定するための財産の価額:3,000万円(生前贈与の500万円を加えない
子Bの遺留分の額:3,000万円×1/8=375万円
子Bが遺留分侵害額請求権を行使できる遺留分侵害額:375万円-500万円(10年以内の生前贈与に限らない。)=0円 (結局、請求できませんね。)

子Bの法定相続分の場合、3,500万円×1/4=875万円
875万円-500万円=375万円 ←遺産分割(話し合い)の場合、子Bは375万円を相続する権利があります。
相続における遺留分と遺言の関係を参考にしてみてください。

遺留分侵害額を請求できるのは、いつまで

遺留分権利者が、相続開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間、遺留分侵害額請求権を行使しないと、時効により消滅します。
これを知らない場合であっても、10年間、何もしないときは、遺留分侵害額請求権は、時効により消滅します。

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