失踪宣告の申立(相続人の中に行方不明者がいる場合の相続登記の方法)

失踪宣告の申立(相続人の中に行方不明者がいる場合の相続登記の方法)

相続人の中に行方不明の人がいる場合、相続登記(不動産名義変更)をする場合は、どういう方法を選択したらよいでしょうか。
この場合、次のいずれかの方法を選択することになります。

  1. 法定相続分で登記する。
  2. 不在者管理人選任の申立てをして、不在者に代わり不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する。
  3. 失踪宣告の申立てをして、行方不明者の死亡を確定させて、ほかの相続人で相続登記をする。

相続人の中に行方不明者がいる場合の相続登記の方法

1.法定相続分で登記する。

法定相続分で登記する、とは、例えば、被相続人が父、法定相続人が配偶者と子2名の場合、子の1名が行方不明者の場合を考えてみます。

法定相続分で登記する場合、それぞれの法定相続分は、
 配偶者:持分2分の1
 長 男:持分4分の1
 二 男:持分4分の1
二男が行方不明者であれば、二男の持分4分の1を含めて、ほかの2名が申請人となって3名名義で登記をすることになります。
この法定相続分での登記は、二男が行方不明者だけれども、とりあえず名義変更登記をしておこうという場合に選択します。何かをとり急いですることがない場合です。
この場合、二男は申請人となりませんが、ほかの2名が民法の「保存行為」として二男の持分を含めて登記することができます。

民法(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
(令和5年施行予定の改正民法では、第5項で「各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。」としています。)

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この法定相続分で登記した場合、問題となる点は、次のとおりです。
登記の完了後、配偶者と長男には「登記識別情報通知」という「いわゆる権利証」が発行されますが、申請人とならなかった二男には登記識別情報通知が発行されません。

こうした場合、後に、二男が現れて、相続した不動産を売却などして名義を第三者に変更する場合、二男には登記識別情報通知という権利証がないので、権利証の代わりに別の手続きが行うことになります。別の手続きについては、こちらを参考にしてください。

2.不在者管理人選任の申立てをして、不在者に代わり不在者財産管理人が遺産分割協議に参加する。

次のような事情がある場合、行方不明者について家庭裁判所に不在者管理人選任の申立てをします。

  1. 行方不明者がまだ若く(例えば、40代、50代)、行方不明となってから20年くらいで、失踪宣告のように、二男の死亡を確定してしまうことが忍びない場合
  2. 遺産の中に不動産があって、これを売却して金銭に変えなければならない事情がある場合

この場合、家庭裁判所から選任された不在者財産管理人が不在者に代わり、ほかの相続人とで遺産分割協議をして、協議が整えば遺産分割協議書を作成します。
相続不動産を売却する場合、売却代金の中から不在者が取得する分の金銭を不在者が現れるまで、不在者財産管理人が管理することになります。ほかの相続人は、不在者の取り分を受け取ることができません。

不在者財産管理人の選任を申立てる際、不在者財産管理人候補者として、申立書に親族などを記入することはできますが、実際には、家庭裁判所に登録している司法書士や弁護士が選任されることがほとんどです。(横浜家庭裁判所の場合)

3.失踪宣告の申立てをして、行方不明者の死亡を確定させて、ほかの相続人で相続登記をする。

行方不明者が、例えば、90代以上で、行方不明となってから20年以上経っている場合のように、ほぼ亡くなっていることが確実と思われる場合、行方不明者について失踪宣告の申立てを家庭裁判所にしてもよいでしょう。

事例の場合、二男に失踪宣告が確定すると、二男は死亡したみなされますので、相続人が配偶者と長男となり、それぞれの法定相続分は、配偶者が2分の1、長男が2分の1となります。

ただし、元々の相続人が配偶者と長男(子1名)の場合、長男に失踪宣告が確定する(長男の死亡が確定)と、子(第1順位の相続人)がいないことになり、第2順位の相続人(被相続人の父母→祖父母)へ相続権が移ることになり、第2順位の相続人がすでに死亡している場合は、第3順位の相続人(兄弟姉妹→甥姪)に相続権が移ることを理解しておく必要があります。

なお、行方不明の100歳以上の人の相続登記を参考にしてみてください。

失踪宣告(しっそうせんこく)の申立手続きについて

行方不明者の生死が、基本的に7年間不明の場合、例えば、家出などによりどこに行ったかわからず、その生死もわからない場合、親族など利害関係人は、家庭裁判所に対して、失踪宣告の申立てをすることができます。

この7年間生死不明の場合を普通失踪または一般失踪といいます。(生死不明となってから7年後が死亡日)
これに対して、船や飛行機の遭難、その他事故により、その生死が不明となった人についても同様に、失踪宣告の申立てができます。これを危難失踪といいます。

民法(失そうの宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失そうの宣告をすることができる。
 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争がんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(失踪の宣告の効力)
第三十一条 前条第一項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第二項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。

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不在者の住所地の家庭裁判所に申立て

法律上の利害関係人(例えば、不在者の配偶者、父母、相続人)が、不在者の最後の住所地(居所地)の家庭裁判所に申立てます。
必要書類は、申立人・不在者の戸籍謄本、戸籍の附票、失踪したことを証明する資料(例えば、捜索願をしたことの証明書、不在者の手紙など)

家庭裁判所での調査

家庭裁判所では、不在者の調査をしたうえで、失踪についての届出の公示催告(こうじさいこく)を家庭裁判所の掲示板に掲示し、官報に掲載します。

公示催告の期間は、普通失踪で3か月以上、危難失踪の場合で1か月以上とされています。
公示催告期間が満了しますと、家庭裁判所は、失踪宣告(死亡)をします。

戸籍届出

失踪宣告が確定したら、申立人は、失踪宣告審判書の謄本と確定証明書を家庭裁判所で取得して、不在者の本籍地の役所(または申立人の住所地の役所)に失踪届を提出します。

除籍謄本の取得

相続登記に使用するため、失踪者の除籍謄本(死亡が記載)を取得します。

当事務所に依頼される場合の費用(報酬)

費用(司法書士報酬)については、相続登記費用追加報酬でご確認ください。

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