相続と不在者財産管理人

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相続と不在者財産管理人

相続人の中に不在者(行方不明の人)がいる場合、被相続人名義の不動産を売却して相続人で売却代金を分配したいときは、どのような手続きをすればよいでしょうか。

相続登記(不動産名義変更)やほかの名義変更で、不在者の財産管理人選任を家庭裁判所に申立てる必要がある場合、相続登記においては、法定相続で登記するのか、この不在者財産管理人選任の申立てをしてするのか、失踪宣告の申立てをしてするのか、選択することになります。
通常は、不在者財産管理人選任の申立てをします。失踪宣告は、不在者を死亡扱いとしてしまいます。(これでは不在者が可哀想です。)

法定相続人の中に行方知らずの人がいて、遺産分割により相続財産を分ける場合は、行方不明の人に代わって、遺産分割協議に参加する財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。

この場合、遺産分割協議をするには、次の手続が必要となります。

  1. 不在者の財産管理人の選任(家庭裁判所)
  2. 遺産分割協議をするための家庭裁判所の許可

財産管理人は、遺産分割協議をする前に、家庭裁判所に対し、遺産分割協議書(案)を提出して、遺産分割協議の許可を得てから、遺産分割協議をすることができます。

財産管理人は、不在者の財産を管理する権限を与えられていますが、管理権限を超える行為(法律行為、遺産分割協議、売買契約など)をするには、家庭裁判所の許可が必要となります。
したがって、不在者の不動産を売却する場合も、家庭裁判所の許可が必要です。
この場合、不動産売買契約書(案)を家庭裁判所に提出して、家庭裁判所の許可を得た後、不動産の売買契約を締結することができます。

不在者財産管理人の申立てをしてから選任されるまで約3か月から半年くらいかかります。

申立てに際して、財産管理人になる人(候補者)を申立書に記載します。
相続財産がわずかな場合は、通常、親類の方がなります。ただし、遺産分割協議をしますから、法定相続人が財産管理人にはなれません。これは、法定相続人と不在者とが利益相反行為に該当するからです。
財産管理人が不在者に代わって遺産分割協議に参加します。
相続財産が不動産や高額な場合、家庭裁判所が指定する財産管理人(弁護士や司法書士)が選任されます。

遺産分割協議書には、財産管理人が不在者を代理して、署名、実印を押印します。
相続登記申請には財産管理人の印鑑証明書、家庭裁判所の許可書が必要となります。

現在、神奈川県内の家庭裁判所では、不在者の財産の金額にもよりますが、通常、不在者財産管理人を家庭裁判所が指定する弁護士または司法書士とする取扱いです。

また、家庭裁判所の指定する弁護士または司法書士を不在者財産管理人とする場合、申立て後、家庭裁判所から予納金を納めるよう通知があります。

この予納金の額は、不在者の財産の金額にもよりますが、数十万円以上です。
例えば、申立て後、遺産分割協議の許可と不動産の売却の許可が必要な場合、予納金の額が100万円という事例があります。
予納金は、不在者財産管理人となる弁護士または司法書士に家庭裁判所から支払われる手数料です。

不在者財産管理人選任申立の手順と必要書類

不在者財産管理人選任申立の事前準備

警察署への捜索願(受理証明書または受理番号)

警察署に捜索願を提出します。これによって不在者(行方不明の人)が見つかる場合があります。(実際にありました。)不在者が見つかれば、家庭裁判所の手続きは不要となります。ただし、不在者が見つかった場合であっても、不在者が連絡を取り合うことを拒む場合があります。
警察署に捜索願を提出している場合は、その受理証明書が必要です。
捜索願の受理証明書を発行しない警察署もあります。この場合は、捜索願を受けた警察署の受理番号を申立書に記載します。

不在者が行方不明となった経緯を書面にする

申立に際し、不在者がが行方不明となってから今日までの経緯を記載した書面の提出が必要です。司法書士が聞き取り、内容を整理します。

申立てをする家庭裁判所

申立てをする家庭裁判所は、不在者の最後の住所地の家庭裁判所となります。

不在者財産管理人に選任される人

不在者財産管理人となる人は、最終的に家庭裁判所が選任します。
申立の際、申立人が希望する人を不在者財産管理人候補者として申立書に記載することができますが、必ずしも、この人が不在者財産管理人に選任されるわけではありません。
不在者財産管理人となる人は、相続の遺産分割協議を前提とする法定相続人は基本的になれません。これは、不在者財産管理人が自分の相続人としての立場と、相続人である不在者の不在者財産管理人としての両方の立場で、遺産分割協議を行うことは利益相反行為(利益が相反する行為)となるからです。

ただし、この場合、相続人を不在者財産管理人に選任することも考えられますが、その場合、遺産分割協議を行うために、新たに特別代理人選任の申立てをする必要があります。

過去の例では、相続の遺産分割協議を前提とする不在者財産管理人選任の申立てをした際、相続人ではない不在者の親戚を不在者財産管理人(候補者)とすることは認められずに、家庭裁判所指定の弁護士が不在者財産管理人に選任された例があります。(横浜家庭裁判所、予納金100万円)

現在、横浜家庭裁判所では、不在者の財産の金額にもよりますが、通常、不在者財産管理人を家庭裁判所の指定する弁護士または司法書士とする取扱いです。

不在者財産管理人選任申立てに必要な書類

  1. 申立人の戸籍謄本、戸籍の附票
  2. 不在者の戸籍謄本、戸籍の附票
  3. 警察署の捜索願受理証明書(受理番号)
  4. 不在者財産管理人候補者の戸籍謄本、戸籍の附票
  5. 不在者の財産目録(相続財産も含みます。)
  6. 相続財産が不動産であれば登記事項証明書

不在者財産管理人選任申立書の作成と提出

申立書の作成を司法書士に依頼する場合、司法書士が不在者財産管理人選任申立書を作成し、家庭裁判所に提出いたします。
この場合、司法書士は、申立人の代理人となることができません。その後の家庭裁判所での手続きは申立人本人にしていただきます。
弁護士に依頼する場合は、最後まで弁護士が代理人として手続きを行います。

不在者財産管理人選任申立後の手続

家庭裁判所からの呼出

原則、家庭裁判所からの呼出(郵送、電話で行われる場合もあります。)
(横浜家庭裁判所では、申立人の呼び出しがない取扱いのようです。)
不在者財産管理人選任申立書の提出から約数か月後に、家庭裁判所から申立人と不在者財産管理人候補者に呼出があります。
指定日(申立人の希望を聞いてくれます。)に家庭裁判所の調査官と面談し、事情を説明します。
司法書士も同席することが可能です。

家庭裁判所へ予納金を納める

家庭裁判所の指定する弁護士または司法書士を不在者財産管理人とする場合、申立て後、家庭裁判所から予納金を納めるよう通知があります。
この予納金の額は、不在者の財産の金額にもよりますが、数十万円以上です。
例えば、申立て後、遺産分割協議の許可と不動産の売却の許可が必要な場合、予納金の額が100万円という事例があります。
予納金は、不在者財産管理人となる弁護士または司法書士に家庭裁判所から支払う手数料です。

家庭裁判所での調査

不在者の調査を調査官がします。数ヶ月かかります。これで不在者が見つかる場合があります。

不在者財産管理人が選任されます。
不在者財産管理人は財産目録を提出し直します。
遺産分割協議をするには

相続財産について遺産分割協議をする場合、家庭裁判所に許可の申立てを不在者財産管理人が申立てます。許可までの期間は、約1か月です。
遺産分割協議の内容は、不在者の法定相続分を確保する必要があります。不在者の不利になるような遺産分割は許可されません。

財産目録を提出し直す

遺産分割協議が成立した場合は、不在者財産管理人は財産目録を提出し直します。

不動産を売却する場合も家庭裁判所の許可が必要

不動産を売却する場合も、別途、家庭裁判所に許可の申立てを不在者財産管理人が申立てます。許可までの期間は、約1か月です。

不動産の売却代金は、不在者財産管理人が管理

不動産を売却した場合は、不在者が受取る代金を不在者財産管理人が管理します。不在者財産管理人は財産目録を提出し直します。不在者の財産は、基本的には、不在者が現れるまで不在者財産管理人が管理します。

不在者財産管理人選任申立の費用

不在者財産管理人選任申立ての時のかかる費用

  • 実費
    家庭裁判所に申立書を提出するときの収入印紙:800円
    郵便切手:約2,000円
  • 司法書士報酬(当事務所規定報酬):77,000円(税込み)
    司法書士は、申立書の作成と提出をします。
  • 戸籍の証明書など取寄せる場合の実費 約3,000円
  • 以上合計:約90,000円

申立て後にかかる費用

家庭裁判所への予納金:数十万円から約100万円

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