相続人が誰もいないとき(相続人不存在)の相続財産管理人(相続財産清算人)の選任申立方法(横浜市・川崎市・神奈川県内・東京都内・日本全国対応)
例えば、不動産の名義人が亡くなり、その名義人は、亡くなった当時、配偶者もいない、子供もいない、一人っ子で兄弟姉妹もいない、その父母も亡くなっていない、お祖父さんお祖母さんも亡くなっていない。「相続人以外の第三者に遺贈するという遺言書」もない。
こういう場合に、相続人がいない、相続人不存在ということになります。
では、相続人が誰もいない場合、この人が持っていた不動産などの遺産は、どうなるのでしょうか。
この場合、最終的に、この人の遺産は、国に移ることになります。国庫に帰属する、ということになります。
令和6年4月1日改正民法施行により、従来の「相続財産管理人」の名称が「相続財産清算人」と改められました。以下の説明文では、当面、「相続財産管理人(相続財産清算人)」という書き方とします。
相続人不存在の事例
相続人不存在の事例:被相続人の配偶者、子(孫)、父母(祖父母)、兄弟姉妹がいない場合
被相続人に、配偶者がいない場合(最初からいない、死亡、離婚)、子(孫)がいない場合(最初からいない、死亡)、父母(祖父母)が死亡、兄弟姉妹が最初からいない、死亡の場合です。
一人暮らしをしていた人には、相続人は誰もいません。自己所有のマンションに住んでいました。
身体が弱く、病院通いをしており、生活費にも困っていました。
マンションの管理費も払えず滞納し、サラ金に借金もありました。貯金はほとんど残っていませんでした。
この人はこういう状態で亡くなり、相続人でない親族が、葬儀をしお墓を手配しました。この親族が葬儀費用を立て替えました。
ということで、この人は、借金を残したまま亡くなり、唯一、残ったのがマンションです。
マンションもこのままにすることはできず、親族は、なんとか解決したいと考えています。
親族としては、このマンションを売却して、現金にし、借金を返済し、自分が立て替えた費用を返してもらいたいと考えています。
さらに、お墓については、永代供養料として、お寺に数百万円支払わなければならない、ということです。
もし、永代供養料を支払うことができなければ、この人は無縁仏として扱われるということです。
親族としては、無縁仏では忍びがたく、なんとかしたいと考えています。
相続人不存在の事例:被相続人の配偶者、子(孫)、父母(祖父母)、兄弟姉妹が相続放棄した場合
被相続人の相続人が家庭裁判所の手続で相続放棄をした場合です。
被相続人(父)の子(A・B)は、約40年以上、疎遠(音信不通)であった父の親族から父の死亡を知らされました。父が住んでいた場所は、子A・Bが住んでいる場所から約1,000㎞離れています。
この父には、死亡当時、配偶者がいません。父母(祖父母)も兄弟姉妹もいません。父との日頃の付き合いは、父の本家の親族(法定相続人ではない)です。
父には、父が住んでいた土地と建物があります。時価にして500万円ほどです。預貯金は、ほとんどありません。
こういう状況で、親族から子A・Bが父の死亡を知らされ、これと同時に、親族が父のために支払った費用(車の購入代金・葬儀費用など約200万円)を支払うよう請求されました。
子A・Bは、土地・建物所在地の役所から相続人の届けをするよう通知が郵送されて、自分たちが確定的に相続人であることを知りました。
そこで、子A・Bが種々検討した結果、家庭裁判所の相続放棄をすることにしました。このことにより、被相続人父の相続人が誰もいないこと(相続人不存在)となりました。
このことにより、父の親族が立て替えた費用は、この親族が利害関係人として相続財産管理人(相続財産清算人)を家庭裁判所に申立てて回収することになります。
この事例では、子A・Bが相続放棄をしたことにより相続人不存在となりましたので、本来であれば、子A・Bが相続財産管理人(相続財産清算人)選任を申立てることになります。相続放棄をした人は、相続財産管理人(相続財産清算人)が選任されるまで、被相続人の財産についてその管理をしなければならないからです。
しかし、後述するように、相続財産管理人(相続財産清算人)選任の申立てをするには、お金がかかります。子A・Bには、これを申立てるお金がありません。
結局、父の親族が立替費用を回収するには、自らが相続財産管理人(相続財産清算人)選任を申立て、回収するしかありませんので、子A・Bは相続財産管理人(相続財産清算人)選任を申立てることはしませんでした。
被相続人に相続人がいない場合、相続財産はどうなるのか
こういうときに、民法(令和6年4月1日改正施行)では、相続人の不存在として、相続財産法人という規定を設けています。
民法(相続財産法人の成立)
民法 | e-Gov法令検索
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
相続人不存在の場合、被相続人の相続財産を法人として、親族などの利害関係人が、家庭裁判所に相続財産管理人(相続財産清算人)選任の申立てをします。
この相続財産管理人(相続財産清算人)が、この人の相続財産について整理します。
次を参考にしてください。
「相続人不存在による相続財産」の登記の方法
事例の場合、親族が立て替えた費用は、相続財産管理人(相続財産清算人)が選任された後、相続債権者として相続財産管理人(相続財産清算人)に請求することになります。
【特別縁故者への分与】
家庭裁判所が行う相続人捜索で相続人がいない場合、亡くなった人と一緒に暮らしていた人、療養看護をしていた人など、亡くなった人と特別の縁故があった人に、相続財産の全部または一部を与えることができます。
民法(特別縁故者に対する相続財産の分与)
民法 | e-Gov法令検索
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。
次を参考にしてください。
特別縁故者への不動産の所有権移転登記の方法(相続登記相談)
【相続財産の国庫帰属】
最終的に残った相続財産は、国に、国庫に帰属することになります。
民法(残余財産の国庫への帰属)
民法 | e-Gov法令検索
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。