特別縁故者への不動産の所有権移転登記の方法(相続登記相談)

特別縁故者への不動産の所有権移転登記の方法(相続登記相談)

【相続登記相談】
不動産の名義人が死亡し、被相続人の相続人がいないので、相続人不存在により相続財産清算人の申立をしました。家庭裁判所により、私が特別縁故者として不動産を分与する旨の審判が下りました。この場合、どのような方法で私名義の登記をしたらよいですか。

被相続人に相続人がいない場合、まず、相続人不存在により、家庭裁判所に対し相続財産清算人(令和6年4月1日改正民法施行により、従来の「相続財産管理人」の名称が「相続財産清算人」と改められた。)の申立をします。相続財産清算人が選任され、相続債権者、受遺者への弁済が終了します。それでも、残余財産がある場合、特別縁故者の申立てにより残余財産の全部または一部を、家庭裁判所の審判により特別縁故者に分与します。
特別縁故者として認められるかどうかは、家庭裁判所の判断によります。
残余財産が不動産であるときは、所有権移転登記の方法により、不動産の名義を特別縁故者とすることになります。

特別縁故者とは

以下の民法の規定により、特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」のことをいいます。

民法(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
(権利を主張する者がない場合)
第九百五十八条 第九百五十二条第二項の期間内に相続人としての権利を主張する者がないときは、相続人並びに相続財産の清算人に知れなかった相続債権者及び受遺者は、その権利を行使することができない。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十二条第二項の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

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相続人不存在の申立から特別縁故者に財産が帰属するまでの手順

  1. 被相続人の死亡
  2. 相続人不存在による相続財産清算人選任の申立て
    これについては、相続財産清算人(相続人不存在)の選任申立方法を参考にしてください。
  3. 家庭裁判所が相続財産清算人の選任公告(952条2項)
  4. 家庭裁判所が相続人捜索の公告(6か月:952条2項)
  5. 相続財産清算人が相続債権者及び受遺者への請求催告の公告(2か月以上:957条1項)
    公告期間は、合計6か月で満了
  6. 6か月の公告期間満了後、3か月以内に
    特別縁故者が残余財産の分与申立て(3か月以内:958条の2)
  7. 残余財産の分与の審判確定
  8. 特別縁故者に残余財産の全部(又は一部)が帰属

特別縁故者への不動産の所有権移転登記の手順

特別縁故者への所有権移転登記をするには、次の登記が必要です。
(1)「登記名義人 亡○○相続財産」の登記
   相続財産法人とする登記(民法951条)
(2)特別縁故者への所有権移転登記

「登記名義人 亡○○相続財産」の登記

家庭裁判所で、特別縁故者への財産の分与が確定しましたら、特別縁故者へ所有権移転登記をすることができることになります。ただし、この登記の前に、次の「登記名義人 亡○○相続財産」の登記をする必要があります。

      登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権登記名義人氏名変更
原   因 令和〇年〇月〇日相続人不存在
変更後の事項 登記名義人
       亡○○相続財産
申 請 人 亡○○相続財産
      (住所)○○ ○○法律事務所
      亡○○相続財産清算人 弁護士 ○○
添付情報  登記原因証明情報 代理権限証明情報
「登記名義人 亡○○相続財産」の登記の解説

前記登記申請のポイントは、次のとおりです。

  • 登記原因の日付:被相続人の死亡日
  • 申請人:相続財産清算人の単独申請
    次の「特別縁故者への所有権移転登記」を同時に行う場合、特別縁故者が相続財産清算人に代位して申請することもできます。(代位原因証明情報は、家庭裁判所の分与の審判書及び確定証明書)
  • 登記原因証明情報:家庭裁判所の「相続財産清算人選任の審判書」
相続財産清算人選任審判書
相続財産清算人選任審判書:令和6年4月1日改正民法施行により、従来の「相続財産管理人」の名称が「相続財産清算人」と改められた。

この登記をすることにより、次のように登記されます。

登記記録(登記簿):相続財産(法人)の登記
登記記録(登記簿):相続財産(法人)の登記

特別縁故者への所有権移転登記

      登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 令和〇年〇月〇日民法第958条の2の審判
権 利 者 (住所)〇〇
      (申請人)(氏名)○○
      登記識別情報通知希望の有無:送付の方法による交付を希望する
義 務 者 (住所)○○
      亡(登記名義人氏名)○○相続財産
添付情報  登記原因証明情報 住所証明情報
      代理権限証明情報 評価証明情報
課税価格  金○○円
登録免許税 金○○円
民法第958条の2の審判による所有権移転登記の解説

前記登記申請のポイントは、次のとおりです。

  • 登記原因の日付:家庭裁判所の審判確定日
  • 申請人:権利者(特別縁故者)の単独申請
        義務者に関する書類は不要
  • 登記原因証明情報:家庭裁判所の審判書及び確定証明書
  • 住所証明書:特別縁故者の住民票
  • 評価証明情報:固定資産税評価証明書
  • 登録免許税:評価価格の2%

この登記をすることにより、次のように登記されます。

登記記録(登記簿):相続財産(法人)の登記と特別縁故者名義の登記
登記記録(登記簿):相続財産(法人)の登記と特別縁故者名義の登記

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