登記識別情報とは

登記識別情報とは

法務局(登記所)で発行交付される登記識別情報

現在、すべての法務局(通常、登記所といいます。)では、「登記識別情報(通知)」が発行されています。
例えば、相続登記(不動産の名義変更)が完了した際に発行される「登記識別情報(とうきしきべつじょうほう)」は、従来の「登記済権利証(とうきずみけんりしょう)」の代わりに登記所から交付されるもので、その性質は、「登記済権利証」と同様、本人を確認する手段の一つとして、その後の登記手続に使用されるものです。
現在、「登記済権利証」は発行されていません。従来からある「登記済権利証」は、不動産の名義人が変更しない限り、現在でも有効な書類です。

「登記識別情報通知」は、新たに権利を取得した時(名義人が変わった時)に発行されます。
例えば、売買で不動産を購入した買主、贈与で不動産の贈与を受けた受贈者、相続(遺贈)で不動産を取得した相続人や受遺者などに発行されます。

登記名義人の住所や氏名を変更登記した場合は、新たに権利を取得した時ではないので、登記識別情報通知は発行されません。

具体的には、発行される用紙のタイトルは「登記識別情報通知」で、登記識別情報通知の下部に「登記識別情報」として記号で記載されています。この記号は、見れないように施されています。

登記の申請に際し、登記識別情報を登記所に提供する必要がある場合、この記号を入力することによって、登記の申請が可能になります。また、従来のように、紙の申請書で登記申請する場合は、記号が見れる状態にしてコピーし、これを提出します。

ただし、「登記識別情報」の「記号」を登記名義人において変更することはできません。キャッシュカードの暗証番号を本人が変更できる場合と違って、登記名義人本人がご自分で変更することはできません。また、この「記号」を変更したいからといって、その変更を登記所に申出ることはできません。そもそも、登記識別情報の再発行は絶対にできません。

登記識別情報通知の発行枚数について

相続登記申請の際、登記識別情報通知そのものを交付しないように登記所に申し出ることもできます。

登記識別情報通知の発行枚数は、物件ごと、名義人ごとに発行されます。
例えば、2物件で1名の場合は、2枚発行され、1物件で2名共有の場合は、2枚発行され、2物件で2名共有の場合は、4枚発行されます。

すなわち、物件の数×名義人の数が発行枚数ということになります。
なお、相続登記の完了後に発行される登記識別情報とは、どういうものですか。を参考にしてください。

登記識別情報の確認方法

登記識別情報は、それが有効か無効かの確認方法として、登記所に対し「登記識別情報の有効証明請求」をすることができます。

これは、通常、新たな登記手続をするときに確認するものですが、いつでも登記名義人が確認することができます。

すくなくとも、これが発行された時点では、有効であるとの前提です。したがって、発行された時点で施されているシールなどは剥がさないのが基本です。

この有効証明を請求するときは、登記名義人の印鑑証明書を添付し、請求書に実印を押印します。

登記識別情報の管理方法

登記識別情報は、銀行のキャッシュカードの暗証番号が、他人に知られてはいけないのと同様に、12文字の記号が他人に盗み見られないように、厳重に管理する必要があります。

盗難や紛失の場合は、これを無効にする失効制度があります。

登記識別情報を登記手続に際し使用する場合

登記識別情報は、発行された後の登記手続、例えば、売買や贈与などの所有権移転、金融機関の担保権の設定登記などを申請する場合、本人を確認する手段の一つとして使用します。

もっとも、本人確認の方法は、この登記識別情報だけではなく、実印、印鑑証明書、司法書士が代理する場合は、身分証明書でも確認します。

所有権の一部移転や担保権設定登記においては、その登記の完了後は、引き続き、登記識別情報は有効であるので、なお、その保管には、十分注意する必要があります。
この場合、司法書士が代理しているときは、一度シールを剥がして確認した12文字の記号に、新たにシールを貼り、名義人に返却するのが普通です。

登記識別情報の失効方法

登記識別情報が盗まれた場合、紛失した場合など、登記識別情報が不正な登記申請に使用されることがないようにするための制度として、登記識別情報の失効制度があります。

これは、登記識別情報を失効させる、すなわち無効にするための制度です。
もっとも、この制度は、盗まれた、紛失した時だけではなく、いつでも、登記所に対し失効の申出ができます。

この場合も、登記名義人(相続人を含めます。)の印鑑証明書を添付し、実印を押印します。相続人がする場合は、戸籍謄本などの相続証明書も必要です。

登記識別情報の再通知(再発行)について

登記識別情報は、いかなる理由があっても、再通知(再発行)されません。

登記識別情報(登記済権利証)を紛失などしてない場合

登記識別情報通知を紛失、盗難、失効手続により失った場合、あるいは、登記識別情報通知の発行そのものを受けなかった場合、その後の登記手続においては、司法書士による本人確認制度、登記所からの事前通知制度、あるいは公証人役場での本人証明制度によることになります。

司法書士による本人確認制度

権利証(登記済権利証や登記識別情報通知)がない場合、例えば、売買など登記申請の代理人となる司法書士の作成した「本人確認情報」を登記所に提出することで権利証の代わりにすることができます。

この本人確認情報は、売買など金銭の授受(やり取り)を伴う場合、登記が確実に実行されなければならない場合に作成されます。売買などにより登記をする場合、ほとんどの場合で、本人確認情報を作成することになります。司法書士への本人確認情報作成費用を支払うことになります。

本人確認情報の作成費用は、司法書士事務所により異なりますが、不動産の価格や旅費日当などを考慮して、約2万円から10万円かかります。

司法書士の作成する「本人確認情報」は、必ず、実際に登記を担当する司法書士が申請義務者本人と面談することが必要となります。登記を担当しない司法書士が作成した本人確認情報を、実際に登記を担当する司法書士が使用することはできません。

登記所からの事前通知制度

権利証(登記済権利証や登記識別情報通知)がない場合であっても、権利証がある場合と同じように登記申請します。その後、登記所の審査の終了後、登記所より、個人の方が申請義務者の場合、個人の住所宛てに「本人限定郵便」の方法で、「登記申請された内容に間違いがないかどうかを確認する書類」が郵送されます。
申請義務者が会社など法人の場合は、「本人限定郵便」ではなく、会社の住所地に郵送された「登記所からの通知書」を、そのまま受取ることができます。

申請義務者が個人の方の場合、「本人限定郵便」は、郵便局が申請義務者の住所に、登記所からの書類を郵便局に受け取りに行ってください、という内容の封書で届きます。

申請義務者本人が、この封書と「身分証明書(運転免許証やマイナンバーカード(写真付きでない身分証明書の場合は2点必要)」と「認印」を郵便局に持参して、登記所からの書類を受領します。(申請義務者に代わり、代理人が書類を受領することができません。)

申請義務者が登記所からの書類に、署名・実印を押印して、登記所に返送します。
登記所が発送してから2週間以内に、署名・実印を押印した書類が登記所に到達する必要があります。

したがいまして、登記申請後、郵便局から封書が到達しましたら、速やかに郵便局に出向き、書類を受領して、登記所に発送する必要があります。

なお、この手続きの費用はかかりません。

登記所からの事前通知制度を利用した方法は、身内同士の贈与などで登記申請した後に、申請義務者が「登記申請された内容に間違いがないかどうかを確認する書類」に署名、実印を押印し、2週間以内にこの書類が登記所に到達することが確実視される場合に行います。
もし、この2週間以内に登記所にこの書類が到達しないときは、申請した登記が却下され(実際は取下げる)、もう一度申請しなければならなくなります。
なお、売買などのように金銭の授受が伴う場合は、このような事態となることは絶対に許されませんので、「司法書士作成の本人確認情報」を登記識別情報に代わるものとして登記所に登記申請書と一緒に提出します。

「登記所からの事前通知」を選択する場合、登記所から郵送されるのは「本人限定郵便」で一般書留郵便(登記所の負担)です。このため、登記申請するときに「速達料金260円分の切手」を申請書と一緒に登記所に提出します。そうしますと、登記所は、速達扱いで郵送してくれます。
「回答書」を登記所に持参することもできますが、「回答書」を郵送するときも、速達郵便で郵送するようにします。そうすれば、「回答書」の期限の「2週間以内」に登記所に「回答書」が届くことになります。
「速達料金」は、変更されることがありますので、登記所に申請する前に郵便局でよく確認するようにします。

公証人役場での本人証明制度

登記申請前に、申請義務者本人が公証人役場に出向いて、「委任状(司法書士に依頼する)」と印鑑証明書、身分証明書、実印を公証人役場に持参し、公証人の面前で、申請義務者本人が署名・実印を押印します。これに公証人の証明文を付けてもらいます。公証人の手数料は、約5,000円です。
公証人の本人証明書を登記識別情報の代わりに登記所に提出します。

「登記完了証」について

登記完了後、登記完了証が登記所から発行されますが、その登記が完了したことを証明するだけのもので、その他の効力は何もありません。
したがって、所有権を証明する登記識別情報(権利証)に代わるものでもありません。
この登記完了証は、すべての登記で発行されます。

相続登記後に分筆登記をしたときの権利証は

相続や売買、贈与など所有権移転登記をした後に、例えば、土地を2つに分割する登記、分筆の登記をしたときの権利証は、どうなるのでしょうか、という質問がよくあります。

いわゆる所有権の権利証は、現在、登記所の取扱いの違いや従来からある権利証で、それが、登記済証であったり、登記識別情報であったりの違いはあります。
ですが、その後の登記の取扱いに違いはありません。

分筆の登記をすると、登記完了後に、登記所から登記済証(分筆)または登記完了証(分筆)が発行されます。これが、権利証になると誤解されている方がいますが、これは、権利証にはなりません。では、どれが権利証でしょうか。

それは、当初、相続や売買、贈与など所有権移転登記をしたときの登記済権利証または登記識別情報がそのまま権利証として有効で、使用します。

例えば、土地を2つに分割(分筆)して、そのうちの1つを売却登記したときは、残りのもう1つの土地は、当初の登記済権利証または登記識別情報が有効で、その後の登記に使用します。分筆登記をしたからといって、新たに権利証が発行されることはありません。

登記識別情報の場合は注意が必要です。登記識別情報は、アルファベットと数字の組合わせ、12桁の記号で、それは、暗証番号やパスワードと同じように、その記号が重要です。

したがって、分筆登記をして、その土地の一部を売却し所有権移転登記をするときは、その記号を代理申請する司法書士に知らせることになります。

移転登記が完了すれば、登記識別情報が記入された通知書を司法書士が返却しますが、一度、第三者に、その記号が知られることになります。
司法書士が代理申請し、これを返却するときは、その記号に目隠しシールを再度、貼付するのが一般的です。

この記号を一度でも知られるのが不安な場合は、登記識別情報を失効させることもできます。
登記識別情報を失効させて、その後に登記識別情報を必要とする登記をするときは、所有権に関する権利証がないことになるので、登記所からの事前通知、公証人の本人確認証明または司法書士の本人確認情報によることになります。

この3つの方法の選択は、不動産の取引によっても異なり、また費用の面でも異なります。

相続登記後の合筆登記で権利証は

相続や売買、贈与など所有権移転登記をした後に、例えば、AB2つの土地をA1つの土地にする合筆登記をしたとき、権利証は、どうなるのでしょうか?

合筆登記をしたときは、権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)が発行されます。

そうすると、相続や売買、贈与など所有権移転登記をしたときに発行された権利証(登記済権利証または登記識別情報)の扱いはどうなるのでしょうか?

これら登記によって発行された前の権利証も有効です。
このように、合筆登記をしたときは、合筆登記の権利証と従来、発行された権利証の2つが存在することになります。このどちらも有効に使用することができます。

それでは、この2つの権利証のうちどちらを優先して使用するのでしょうか?

普通、後に発行された合筆登記の権利証を優先して使用します。

理由は、合筆登記をして1つの土地になったので、登記済権利証の場合は、権利証番号(登記された受付年月日と番号)を1回(1筆分)確認するだけで済むからです。

同様に、登記識別情報の場合は、登記識別情報の有効性検証を1回(1筆分)確認すれば済みます。

端的に言えば、1回(1筆分)で済むので、費用があまりかかりません。

では、従来、発行された権利証を使用する場合は、どうでしょうか。

この場合、合筆登記前の土地の数だけ、権利証番号の確認または登記識別情報の有効性検証をしなければなりません。
ですから、この場合、費用と手間がかかることになります。

もっとも、合筆登記前の土地のうちの一部でも権利証がない場合は、権利証として使用することができません。

合筆登記をして、さらに、土地を分割する登記、分筆の登記をしたときは、合筆登記をしたときの権利証をその後の登記で使用することになります。

権利証(登記識別情報・登記済権利証)について

次を参考にしてください。
不動産売買登記と権利証(一般的な説明)
不動産売買登記と権利証(合筆登記)
不動産売買登記と権利証(分筆登記)
不動産売買登記と複数の権利証が必要な場合(売主)
権利証がない場合
不動産売買登記と権利証がない場合(債権者代位登記)
不動産売買登記と権利証・登記事項証明書の違い
不動産売買登記と本人確認情報(権利証がない場合)

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