相続登記の完了後に発行される登記識別情報とは、どういうものですか。

相続登記の完了後に発行される登記識別情報とは、どういうものですか。

登記識別情報の詳しい内容につきましては、登記識別情報とはを参考にしてください。
ここでは、相続登記を申請した後、相続登記が完了し、法務局(登記所)から登記識別情報を受取る際に、どういう点を確認したらよいのかを、不動産の形式(土地・建物・マンション)で具体的に解説します。なお、法務局が発行する登記識別情報の書面のタイトルは「登記識別情報通知」です。

登記識別情報を発行してもらう理由(登記識別情報の使い道)

登記識別情報は、発行された後の登記手続、例えば、売買や贈与などの所有権移転、金融機関の担保権の設定登記などを申請する場合、「権利証」として「本人を確認する手段」の一つとして法務局に提出します。
この「権利証」としての登記識別情報がない場合は、別の手続をしなければならず、この場合は、別の手続で費用と手間がかかることになります。

したがいまして、通常、相続登記が完了したとき、ほぼ100%の人が登記識別情報を発行してもらっています。

登記識別情報が発行されない場合

相続登記を申請する段階で「登記識別情報の発行を希望しない。」とする場合があります。

一般の方がご自分で相続登記の申請をする場合、通常、紙で申請書を作成して法務局に申請書類一式を提出します。
紙で申請書を作成する場合、登記申請書には、「登記識別情報の通知を希望しません。」と書かない限り、登記識別情報が発行されます。

登記識別情報は、銀行のキャッシュカードの暗証番号が、他人に知られてはいけないのと同様に、12文字の記号が他人に盗み見られないように、これが発行された後は、厳重に管理する必要があります。盗難や紛失の場合もあることから、登記識別情報を持っていることのリスクを考えて、相続登記の申請段階で「登記識別情報の通知を希望しません。」とすることができるのです。

相続登記の完了後、法務局から受け取る書類

「登記識別情報の通知を希望しません。」と書かないで、相続登記が完了した後、法務局から受け取るものは、通常、次の書類です。
(1)相続登記で原本還付を希望した書類(戸籍謄本や除籍謄本など)
(2)登記識別情報通知
   → 今後の登記で使用しますので、重要書類です。
(3)登記完了証
   → 登記が完了したことだけの意味の書類で、重要書類ではありません。
     登記完了証は、相続登記に限らず、登記名義人住所変更などすべての登記の完了後に発行されます。

登記完了証を紛失しても問題ありません。登記完了証が「登記識別情報」に代わるものでもありません。

これらの書類を受け取った後、「登記事項証明書」を「証明書発行窓口」で取得します。この登記事項証明書で、新たな名義人となった人が登記されたかどうかを確認します。

不動産の形式(土地・建物・マンション)で登記識別情報の発行枚数が異なる。

不動産が、通常の戸建ての場合には、土地と建物について、それぞれ登記識別情報が発行されます。
不動産がマンションの場合、「敷地権の登記がされている」マンションと「敷地権の登記がされていない」マンションとでは、登記識別情報の発行枚数が異なります。

次に、不動産の形式(土地・建物・マンション)と相続登記をした相続人などの名義人の数によって登記識別情報の発行枚数が異なりますので、具体的に解説します。

戸建て(土地・建物)の場合

土地と建物の登記識別情報がそれぞれ1枚ずつ発行されます。
例えば、Aさんが新たな名義人として登記された場合、Aさんは、土地と建物2枚の登記識別情報を受取ることになります。
土地が2筆以上ある場合は、それぞれに登記識別情報が発行されます。
また、新たに名義人となった人が、共有者としてAさんのほかにBさん・Cさんがいる場合、Bさん・Cさんにも、それぞれ登記識別情報が発行されます。

登記識別情報の発行枚数は、

「不動産の個数」×「新たに名義人となった人の数」

例えば、土地2個(登記上2筆)・建物1個(合計3個)で、新たに名義人となった人の数が3名の場合、「不動産の個数3個」×「新たに名義人となった人の数3名」=9
合計9枚の登記識別情報が発行されることになります。

この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。
この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。

マンションの場合

不動産がマンションの場合、「敷地権の登記がされている」マンションと「敷地権の登記がされていない」マンションとでは、登記識別情報の発行枚数が異なります。
敷地権の登記がされている」マンションとは、専有部分の建物(お部屋)とマンションの土地(権利の割合)が一体となっているマンションのことをいいます。
「一体となっている」ことの意味は、専有部分の建物に登記されている権利(所有権など)が土地の権利(所有権など)の割合にも効力が及んでいることを意味します。

このため、専有部分の建物の登記記録(登記簿)には、建物の表示のほかに、土地の表示や権利の種類とその割合が記載されています。土地には、「敷地権の旨の登記」がされるだけで、名義人が誰であるかは登記されません。

「敷地権の登記がされている」マンションでは、専有部分の建物とマンションの土地(権利の割合)を別々に売買や贈与をすることができません。

これに対し、「敷地権の登記がされていない」マンションでは、専有部分の建物とマンションの土地(権利の割合)を、理論上は、別々に売買や贈与をすることができます。この理由は、専有部分の建物に登記されている権利(所有権など)が土地の権利(所有権など)の割合に効力が及んでいないからです。
ですが、現実には、通常、別々に売買や贈与をすることは、ほぼ100%ありません。

「敷地権の登記がされている」マンション(専有部分の建物が1個)の場合

新たに名義人となった人が1名であれば、1枚発行されます。
「敷地権の登記がされている」マンションは、専有部分の建物とマンションの土地(権利の割合)を一体として、売買や贈与をしなければなりませんので、1枚発行すればよいからです。
発行される登記識別情報の「不動産」の表示は、「建物」だけが表示されます(書かれます。)。土地は表示されません。(書かれません。)
このことは、「敷地権の登記がされている」マンションが専有部分の建物とマンションの土地(権利の割合)が一体となっていることから、「建物」だけを表示すれば、権利の効力が土地の権利の割合にも及んでいることから、土地の表示をする必要がないからです。

この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。
「敷地権の登記がされていない」マンション(専有部分の建物が1個)の場合

マンションの土地が登記上1個(1筆)の場合、
新たに名義人となった人が1名であれば、専有部分の建物と土地で2枚発行されます。土地が登記上2個(2筆)の場合は、建物と合わせて3枚発行されます。

まとめ

以上のように、登記識別情報は、不動産の形式や名義人となった人の数で、その発行枚数が異なりますので、登記識別情報を法務局から受け取るときには、その場で、よく確認した方がよいでしょう。
後になって、登記識別情報の発行枚数が足りません、と法務局に申出ても、法務局は足りない分を発行してくれません。これは、法務局では、登記識別情報を受領した旨を受付簿に「名義人(代理人)の押印」をすることになっているからです。
ただし、真実、登記識別情報の発行枚数が足りない場合は、発行してくれます。これは、法務局のデータで発行した枚数を確認することができるからです。

当司法書士事務所では、過去に1度だけ、登記識別情報の発行枚数が足りなくて、法務局に発行してもらったことがあります。

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