相続登記(不動産名義変更)の手順、必要書類、費用などについて横浜リーガルハート司法書士事務所が分かりやすく解説します。このページでは、これらの点について、大まかに解説します。詳しい内容については、個々のページで解説します。
一般の方にとって相続登記は
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
相続登記(不動産名義変更)は、一般の方にとって比較的簡単なものから難しいと思えるようなものまでありますので、実情に合わせて、自分で登記をしてみるのがよいのか(自分で相続登記(不動産名義変更)申請の方法)、不動産相続名義変更の専門家の司法書士に依頼した方がよいのか(相続登記おまかせパック)を考えた方がよいでしょう。
相続登記など不動産の「権利に関する」名義変更手続ができる国家資格登録者は、司法書士会に登録している司法書士だけです。当司法書士事務所は神奈川県司法書士会に登録しております。
ですので、不動産の名義変更について分からないことがある場合、質問先として適切な資格者は、司法書士ということになります。
相続登記の方法など相続・遺言の相談をしたい方は、相続登記など相続相談方法を参考にしてください。
被相続人・相続人が外国人の方の相続登記は、外国人の相続登記を参考にしてください。
相続登記が完了しますと、登記簿(登記記録)には、例えば、次のように記載されます。
相続登記の位置づけ(相続手続には)
名義変更とは、登録されている、例えば、自動車や預貯金(預金・貯金)の名義(人の名前)を別の名義(人の名前)に変えることを言います。
預貯金の相続手続の場合、通常、口座名義の変更、すなわち、被相続人(亡くなった人)の口座名義を相続人名義に変更することよりも、被相続人名義の口座を解約して、相続人が金銭で受け取るというやり方がほとんどです。定期預金の相続手続では、満期日までの金利が高い場合に、解約せずに名義変更することはあります。金融機関によっては、定期預金の名義変更ができず、解約のみを認めているところもあります。
預金とは、金融機関、例えば、○○銀行・○○信託銀行・○○信用金庫などに預けているお金のことを言います。貯金とは、ゆうちょ銀行に預けているお金のことを言います。
預貯金の相続手続を依頼する場合、司法書士でも、ほかの第三者でも代わりに手続を行うことができます。
相続登記と預貯金相続手続の費用(報酬)は、いくらが適正価格なのか?を参考にしてください。
被相続人の死亡により「住宅ローンを生命保険金で返済」した場合は、こちら「名義人が死亡したときの抵当権抹消登記(方法)」を参考にしてください。
不動産の場合は、国の機関の法務局(通常、登記所(とうきしょ)と言っています。)で、例えば、ここの土地は○○さんが所有しています、というように、登記所という役所に、土地や建物といった不動産の所有者が登録されています。不動産の登録のことを、特に「登記(とうき)」と言います。
土地や建物のように、基本的に動かない物のことを「不動産(ふどうさん)」と言います。
不動産の名義変更では、名義を変更する理由(原因)によって、必要書類や申請書の書き方などが異なります。税金についても異なります。
名義を変更する理由(原因)が「相続」である場合、これによって名義を変更することを「相続登記」と言います。遺言書による「遺贈」の場合も、「相続登記」の中に含まれます。結局、「相続登記」とは、名義人が亡くなったことによる「相続の開始」によって登記する場合のことを言います。
「相続」は、ある人が亡くなったときに、そのある人が持っていた遺産を引き継ぐことを言います。ある人が亡くなったことによって開始するのが「相続」です。
不動産の名義変更の場合、登記されている人(名義人)が亡くなった場合は、それを引き継ぐ人(相続人や受遺者(じゅいしゃ))に名義を変更します。
相続税の対象となるかどうかを検討
不動産や預貯金などの相続手続きを考える、行う前に、相続税がかかるかどうかをまずは検討する必要があります。相続税がかかるかどうかは、相続の仕方(誰が何を相続するか)によって異なる場合があります。
近年、相続税の基礎控除額(3,000万円+法定相続人1名当たり600万円)が低くなったことによって相続税の対象となる人の割合がそれまでよりも多くなっているためです。
相続税の対象となるかどうかの意味は、実際に相続税を納めることになるかどうかは別にして、相続税の申告をする必要があるかどうかです。
相続税の申告をご自分でするには難しい場合、税理士に依頼することになります。そうしますと、税理士に申告手続きの報酬を支払うことになります。
相続税それ自体はかからなくても申告が必要な場合、税理士には数十万円を支払うことになります。
例えば、遺産総額が6,000万円、法定相続人が配偶者を含めて3名の場合、基礎控除額は4,800万円です。そうしますと、1,200万円が相続税の対象となります。この場合、配偶者に遺産全部を取得させる場合、配偶者には1億6,000万円までの配偶者控除がありますので、相続税がかからないことになります。
しかし、この場合、相続税の申告をしなければなりません。これは、本来であれば相続税を納めることになるはずが、配偶者控除(小規模宅地の特例その他の特例控除)によって相続税を納める必要がないことを税務署に説明する必要があるからです。
相続税の対象となる可能性があるかどうかを考えてみます。
例えば、被相続人が住んでいた土地・建物とアパートがある場合です。
仮に、土地・建物の評価を3,000万円、アパートの評価を3,000万円、法定相続人の人数を3名とします。前述と同様に、遺産総額:6,000万円-4,800万円=+1,200万円。
この例のように、被相続人が住んでいた土地・建物とアパートがありますと、相続税の対象となる可能性が高いことが分かります。
不動産などの遺産相続を行った後になって、思わぬ相続税がかかることもありますので、予め相続税がどのくらいかかるのかを試算した方がよいでしょう。国税庁の相続税申告要否の簡易判定を参考にしてください。
相続税の申告・納税は、相続開始から10か月以内にする必要があります。相続税については、こちら「相続税の主な内容」を参考にしてください。そのほか、法定相続か遺産分割かの選択(相続の仕方)を参考にしてください。税金についての専門家は税理士(公認会計士)です。
相続登記は何から考えればよいのか?
相続による不動産の名義変更は、ほかの自動車や預貯金があれば、同じように名義変更をすることになります。
普通の人は、「相続」が開始したとき、自動車や預貯金のように、不動産についても、まずは、自分で手続をしようと考えます。
自動車や預貯金についてもそうですが、特に不動産の「相続」の場合、どんなことをクリアすれば、名義変更できるかを普通は考えます。
どんなことでもそうですが、「手順」が大切です。手順にしたがって一つ一つ確実に進めて行けば、問題なくスムーズにできるでしょう。「相続登記の手順」を参考にしてみてください。また、不動産を含む各種相続手続について相続手続(名義変更・預貯金・相続税申告)の順番(パターン別)を参考にしてみてください。
そこで、不動産の相続の場合にクリアすべきことは、次の点です。
(1)相続人は誰がなるのか。(法定相続人)
(2)どんな書類が必要なのか。(相続登記の必要書類)
(3)費用はどのくらいかかるのか。(相続登記費用)
(4)どこの登記所に書類を提出すればよいのか。(不動産を管轄する登記所)
まずは、これらの点について調べることから始めます。
これは、完成品を組み立てるために、まずは、部品を集めることから始めるのと同じです。根気よく一つ一つ集めていきます。
登記を専門とする司法書士であれば、これらの部品のことは頭に入っているので、問題なく集めることができます。
一般の方にとっては、「相続」の場合は特に、一生に一回か二回あるかないかのことなので、最初は非常に難しく感じるかもしれません。相続のどこから始めたらよいかも分かりにくいかもしれません。
「相続」の場合、一般の人にとって比較的簡単な登記(名義変更)から専門家でも難しいと思えるようなものまであります。
相続登記を行う上で、一般の方がまず難しいと思う点は、これさえあれば、これさえ読めば名義変更ができる、という相続のマニュアルがないことです。
例えば、相続についての本を買ってみても、細かい点まで書かれていないので、結局、自分が分かりたいと思う点をあっちこっちと、インターネットでも探すことになってしまいます。そうしますと、分かるまでイライラして、時間ばかりかかってしまうことになります。最後には諦めてしまうこともあるかもしれません。
次に、前に話しました「不動産の相続の場合にクリアすべきこと」について、簡単に話してみます。
(1)相続人は誰がなるのか。(法定相続人)
(2)の書類(部品)を集める前に、まずは、相続人が誰になるのかを考えます。最初に、法定相続人(法律上の相続人)が誰になるのかを検討して確定します。家督相続は、こちらを参考にしてください。
これは、(2)の書類(部品)を集めて申請書類まで作成して、登記所に申請したとき、「相続人」を間違えてしまうと、登記所で、この書類では相続登記できません、と言われてしまいます。また最初から考え直さなければならなくなり、さらに相続手続完了まで時間がかかってしまうことにもなります。
場合によっては、現在の状況では、間違っている点を解消できない限り、相続登記ができないということにもなりかねません。
(2)どんな書類が必要なのか。(相続登記の必要書類)
相続の場合は、名義人で亡くなった人(被相続人と言います。)と名義人となる人(相続人と言います。)との関係を証明する戸籍謄本や除籍謄本が必要となります。
法定相続人が誰になるのかが確定しましたら、次は、相続登記に必要な書類(部品)を集めます。
必要な書類が集まりましたら、その次は、登記申請書を作成します。登記申請の場合、必要な書類を登記所に提出するだけでは足りず、登記申請書を作成して、これも登記所に提出する必要があります。
細かい話になりますが、戸籍謄本って何ですか。除籍謄本って何ですか、ということから理解しなければならない人もいるかもしれません。
戸籍謄本とは、法律上の夫婦、親子の関係などが記載されているのが戸籍で、謄本は、その戸籍に記載されている人全員が記載された証明書のことを言います。戸籍抄本は、戸籍に記載されている人のうち一部の人が記載された証明書のことを言います。これらの証明書は、本籍が記載されていますので、本籍地の市区町村役場で取得します。
除籍謄本は、例えば、本籍を変更して別の本籍に移った場合、前の本籍の戸籍は除籍扱いとなります。この除籍扱いとなった戸籍の証明書のことを除籍謄本と言います。このほかに、除籍は、その戸籍に記載された人が、結婚をしたことや死亡したことによって、誰も記載されなくなった場合にも、除籍扱いとなります。
特に、被相続人の出生から死亡までの戸籍関係書類(除籍謄本など)を取得することは、一般の人にとって難しいと思われます。そこで、次のページを参考にしてください。
(1)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して、「被相続人の出生から死亡までの」戸籍関係書類の取得方法(令和6年3月1日から)
(2)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して不動産の相続登記や預貯金などの相続手続で必要となる書類(戸籍関係書類)の取得方法
(3)「戸籍証明書等の広域交付」を利用して戸籍関係書類を取得し、その後「法定相続情報証明書(一覧図の証明書)」を取得する方法
前に話しましたように、「相続」の場合、一般の人にとって比較的簡単な登記から専門家でも難しいと思えるようなものまであります。
一般の方にとって何が簡単で、何が難しいことなのか、分からないかもしれません。また、これは何事も、始めてみて分かることかもしれません。
意外と重要な「相続登記申請前の不動産の確認」と「相続登記完了後の登記内容の確認」方法を参考にしてください。
(3)相続登記の費用(登録免許税・司法書士報酬)はどのくらいかかるのか。
不動産名義変更の場合、基本的に、登録免許税という税金を登記所を通して国に納めます。この登録免許税は、その理由(原因)によって異なります。
「相続」の場合、登録免許税の税率は、基本的に固定資産税の「評価価格」の0・4%(例外は、相続人以外の遺贈の場合:2%)です。
この「評価価格」って何ですか、ということも別のところで説明します。こちらを参考にしてください。
当司法書士事務所の司法書士報酬については、相続登記費用:司法書士報酬(基本報酬:55,000円(税抜き)、60,500円(税込み)でご確認ください。
相続の場合の登録免許税の計算は、税率が固定資産税の評価価格の0・4%ですので、例えば、評価価格が1,000万円であれば、1,000万円×0・004=4万円ということになります。
固定資産税の評価価格は、基本的には、固定資産税納税通知書の「課税明細」に記載されている一番高い価格が評価価格です。課税価格ではありません。
登録免許税が非課税となる場合
土地についての相続登記(建物は非課税とならない。)
適用期限:令和7年(2025年)3月31日まで
非課税となる条件は、こちらを参考にしてください。
(4)どこの登記所に書類を提出すればよいのか。(不動産を管轄する登記所)
最後に、登記申請書も作成して、すべての書類が揃い、登記所という所に書類一式を提出します。
この書類を提出する登記所を間違えてしまいますと、提出した申請書類を取り下げて、また別の登記所に提出しないといけませんので、ここのところは最後に慎重にした方がよいでしょう。