遺産分割協議とは

遺産分割協議で、遺産の分配を話し合い決める

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

遺産目録をもとに、誰が、何を相続するかを決定するために、法定相続人全員で話し合いをするのが遺産分割協議です。法定相続分(法律で定められた相続の割合)によらない相続の仕方ができます。

遺産分割協議は誰が行うのか

法定相続人全員で

遺産分割協議は、法定相続人全員(2名以上)が参加して行う必要があります。
同日時に行う必要はありませんが、法定相続人全員の同意が必要です。
法定相続人の一名でも参加しない場合は、遺産分割そのものが無効となります。
胎児、未成年者(現在、20歳未満、2022年4月1日から18歳未満)、意志能力のない人は、遺産分割協議に参加できません。

遺産分割協議をする法定相続人(被相続人の)
(1)子(第1順位の相続人)と配偶者
(2)父母(第2順位の相続人)と配偶者
(3)兄弟姉妹(第3順位の相続人)と配偶者

未成年者特別代理人

法定相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者については、遺産分割協議に参加できませんので、この場合は、家庭裁判所に、未成年者の特別代理人を選任してもらうための申立てをします。
この特別代理人が、未成年者に代わって遺産分割協議に参加します。未成年者特別代理人選任は、こちらを参考にしてください。

ですが、未成年者を含め法定相続人が、全ての遺産を法定相続分で相続する場合は、この申立ては必要ありません。
この場合、親権者が未成年者に代わって相続手続を行います。

成年後見人

法定相続人の中に意思能力のない人がいる場合、意思能力のない人、例えば、認知症の方は遺産分割協議に参加できませんので、この場合は、家庭裁判所に、成年後見人を選任してもらうための申立てをします。
この成年代理人が認知症の方(成年被後見人)に代わって、遺産分割協議に参加します。成年後見人選任は、こちら「相続と成年後見人」を参考にしてください。

基本的に、認知症の方を含めた法定相続人が、全ての遺産を法定相続分で相続する場合であっても、この申立ては必要です。
他の法定相続人が認知症の方に代わって相続手続を行うことは、原則できません。

胎児について

胎児は、すでに生まれたものとみなされ、相続権がありますので、法定相続人ですが、胎児は実際まだこの世に生まれてきていませんので、遺産分割協議に参加することができません。母親が胎児に代わって遺産分割協議に参加することもできません。

この場合は、胎児が実際この世に生まれてきてから、未成年者と同様の手続きが必要です。
胎児の時点で相続登記をすることはできますが、生まれて名前をつけてから相続登記するのが一般的です。

遺産分割協議の内容

遺産の中には、不動産、預貯金、株式、自動車など積極財産(プラスの財産)と借金(債務)のように消極財産(マイナスの財産)があります。この遺産を誰がどれを相続するかを話し合います。

相続人Aさんが不動産を相続するかわりに、相続人Bさんに○○円支払うといった代償分割という方法もできます。

成立した遺産分割はやり直せないのが原則ですが、各相続手続をする前であれば、法定相続人全員の同意をもってやり直すことは可能です。

ただし、いったん不動産の相続登記手続が完了して、再度、遺産分割により登記をすると贈与税がかかる可能性が高くなりますので、遺産分割のやり直しは慎重にした方がよいでしょう。
遺産分割協議に協力してもらう場合に金銭の提供が必要な場合は、遺産分割協議書のハンコ代(相続相談)を参考にしてください。

遺産分割協議書を作成

法定相続人全員での話し合いがまとまり、遺産分割協議が成立した場合は、遺産分割協議書を作成して、法定相続人全員が署名し、実印を押印します。遺産分割協議書は、各種相続手続で使用します。
過去に作成された古い遺産分割協議書で相続登記ができるのかを参考にしてください。

遺産分割協議書には、遺産の全部を記載するのが一般的ですが、遺産の一部について協議がまとまった場合は、遺産の一部についての遺産分割協議書を作成しても問題ありません。
「遺産分割協議書に記載されていない遺産ついては、相続人の誰々がすべて取得する。」 が必要な場合を参考にしてください。
数次相続(相続が連続して開始)の場合は、数次相続の遺産分割協議書・相続関係説明図の作成方法と登記の方法を参考にしてください。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停を申立します。

遺産分割協議書の例

遺産分割協議書の見本
遺産分割協議書の見本

遺産分割の調停

法定相続人の間で、遺産分割の協議、話し合いが成立しない場合、遺産分割の協議そのものができない場合には、家庭裁判所に遺産分割の調停を申立てます。
調停が成立しない場合は、さらに遺産分割の審判を家庭裁判所に申立てることができます。

調停あるいは審判が成立した場合には、遺産分割の調停調書あるいは審判書を相続登記など各種相続手続に使用します。
遺産分割審判による換価分割のための差押(競売開始決定)を参考にしてください。

遺産分割協議成立後(相続登記後)、他の相続人からの協議やり直しの申出があった場合、協議のやり直しに応じるべきか。

【事例】祖父名義の不動産があり(祖母はその前に死亡)、祖父死亡前に、祖父の相続人である子らから不動産は、長男の所有に同意する旨の書面をもらっていた。
祖父死亡後、長男が死亡し、その子(孫)の名義に変更登記した。
その後、祖父の他の子らが不動産を含め遺産全部を法定相続分どおりに均等に分配してほしいとの申出があった。どうしたらよいか。他の相続人からの協議やり直しの申出があった場合、協議のやり直しに応じるべきでしょうか。

まず、不動産については、祖父の他の子らが同意して最終的に孫名義に変更登記しているので、不動産については、遺産分割が完了しているといってよいでしょう。
祖父の長男名義とする際、遺産分割協議書、あるいは、特別受益証明書に祖父の他の子らの署名、実印、印鑑証明書があるので、これを翻すのは難しいでしょう。

ただ、他の相続人は、不動産を含めて、認められるかどうかは別にして、祖父の遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることは可能です。
相談者としては、あえてこちらから他の相続人に対して協議のやり直しに応じる必要もないでしょう。

祖父に不動産以外の遺産があったのであれば、この遺産は遺産分割の対象とされていなかったので、遺産分割協議により決めることになります。

特に、家庭裁判所での遺産分割調停では、祖父の相続人である子らのうち、祖父に寄与した相続人がいれば寄与分として、祖父の生前、結婚資金や生活援助費など相続人が贈与を受けていたのであれば特別受益として考慮されることになるでしょう。

相続人同士での遺産分割協議、家庭裁判所での遺産分割調停どちらにしても、相続人間の争いを明確にする意味でも、祖父の生前に、祖父の生前の金銭のやり取りの記録をとっておくのがベストの方法です。
これは、なかなか難しい、親族間のことなので曖昧となりがちですが、将来の争いを未然に防ぐという意味でも、「祖父」も含めて心がけるべきであった、心がけるべきことでしょう。

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