行方不明の100歳以上の人の相続登記

行方不明の100歳以上の人の相続登記(事案によって解決方法が異なる。)

行方不明の人がいて、その行方不明の人が100歳以上である場合の相続登記は、どのようにしたらよいでしょうか。この行方不明の人が、被相続人であることも、また、相続人となることもあるでしょう。
さらに、行方不明の人が被相続人の場合、相続人がいれば問題ありませんが、被相続人に相続人が存在しない場合もあるでしょう。この場合、相続人不存在となり、最終的に、相続人のいない行方不明の人の遺産整理を相続財産管理人がすることになります。
また、 行方不明の人が被相続人の場合、行方不明の人が100歳以上の高齢であることから、失踪宣告の申立により死亡を認定してもらうことになるでしょう。

通常の行方不明者の場合、すなわち、この人の年齢がおおよそ50歳であれば、普通失踪での失踪宣告の申立は普通しません。なぜなら、まだ50歳で死亡したとみなしてしまうには忍びないからです。この場合、不在者財産管理人の申立をして、行方不明である不在者の財産(相続した財産)を不在者財産管理人が不在者が現れるまで管理することになります。

このように考えますと、 行方不明の100歳以上の人が、被相続人であったり、相続人であったり、この人に相続人が存在しないことで、具体的な解決方法を検討する場合、一つ一つ整理して考える必要があります。

まず、高齢者消除とは

行政上、100歳以上の高齢者で所在不明の人については、一定の要件で死亡した可能性が高いと判断された場合、市町村長が法務局の許可を得て、職権で死亡を原因として戸籍から消除するという高齢者消除の取扱いがあります。
100歳以上という高齢であり、住民票からも実際調べても、その所在がわからない場合、この高齢者消除に該当することになります。
高齢者消除と認定された場合、戸籍には「高齢者につき死亡と認定・許可・除籍」と記載されます。

高齢者消除について登記所(法務局)の考え方

ですが、相続登記を行おうとする場合、登記所(法務局)の考え方は、高齢者消除が戸籍を整理するための行政措置にすぎないので、失踪宣告による死亡の認定とは異なり、死亡という法律上の効果を生ずるものではないという考え方です。したがって、 高齢者消除の死亡の認定によって相続が開始するものではないということになります。

結局、行方不明でもあり100歳以上で、すでに亡くなっている可能性が高いとはいっても、高齢者消除による除籍謄本の内容、すなわち「高齢者につき死亡と認定・許可・除籍」では、相続登記ができないことになります。

行方不明の100歳以上の人の相続登記の方法

行方不明の100歳以上の人が「被相続人」の場合

相続登記を行う前段階として、次の手続が必要となります。相続が開始したことによる「相続登記」ということですので、被相続人である不動産の名義人の「死亡」が確定すれば、相続登記ができることになります。

普通失踪で失踪宣告を家庭裁判所に申立てる

そこで、法律上の死亡が認定される普通失踪による失踪宣告の申立を家庭裁判所にします。
失踪宣告は、普通の失踪の場合、不在者の生死が7年間明らかでないとき、家庭裁判所が利害関係人の申立てによって失踪の宣告をします。
ただし、半年以上の公示催告期間が必要で、申立てから家庭裁判所の審判確定まで9か月(から1年)くらいかかります。失踪宣告の手続の詳細については、相続と失踪宣告の申立を参考にしてください。

家庭裁判所が失踪宣告の審判をすることによって、行方不明者が死亡したとみなされます。
この家庭裁判所の審判書を市区町村役場に提出することによって、行方不明の人の戸籍に死亡したとみなされたことが記載されます。
行方不明の人に相続人がいれば、これで相続登記ができることになります。

行方不明の人に相続人がいない(相続人不存在の)場合

行方不明の人について普通失踪による失踪宣告が確定し、行方不明の人が死亡したと認定された場合であっても、死亡したと認定された行方不明の人である被相続人に、相続人がいない(相続人不存在の)場合は、被相続人の遺産が宙に浮いた状態となってしまいます。

そこで、次の段階として、被相続人について相続人不存在の場合であるので、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てます。
相続財産管理人が選任されれば、この相続財産管理人が被相続人の遺産を管理し、家庭裁判所の許可を得て遺産を処分し、金銭に代えて、最終的に被相続人の遺産を国庫に納めることになります。

行方不明の人が死亡認定により被相続人であることが確定し、相続財産管理人が選任されましたら、被相続人の遺産が不動産である場合、不動産の名義人変更登記を相続財産管理人が行います。
この場合の登記は、「年月日相続人不存在」を登記原因として「亡〇〇相続財産」とする相続財産法人名義に変更します。
その後、相続財産管理人は、家庭裁判所の売却許可を経て、第三者に不動産を売却します。

行方不明の100歳以上の人が「相続人」の場合

100歳以上の人が相続人である場合、被相続人の年齢はそれ以上ですので、より複雑な状況となるでしょう。実際にこういうことがあるのかどうか考えにくいといえます。
相続登記を行う前段階として、次の手続が必要となります。相続人としての「死亡」を、まずは確定することになります。

  1. まずは、行方不明の100歳以上の人が「被相続人」の場合と同様に、普通失踪で失踪宣告を家庭裁判所に申立てます。
    行方不明の100歳以上の人がもともと「相続人」であるので、失踪宣告が確定しましたら、この人は死亡により「被相続人」となります。
    この場合、この人に相続人がいれば、相続人が相続登記をすることになります。
  2. 相続人がいない(相続人不存在の)場合、行方不明の100歳以上の人が「被相続人」の場合と同様に、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てます。
    相続財産管理人が選任されれば、この相続財産管理人が被相続人の遺産を管理し、家庭裁判所の許可を得て遺産を処分し、金銭に代えて、最終的に被相続人の遺産を国庫に納めることになります。

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