相続登記をするときに印鑑証明書が必要となる場合とならない場合

相続登記をするときに印鑑証明書が必要となる場合とならない場合

相続登記をするときに、相続人の印鑑証明書が必要となる場合と必要でない場合があります。
印鑑証明書が必要な場合は、後述します遺産分割協議書や上申書に、法定相続人全員(相続放棄した人を除く)の実印を押印します。相続登記では、印鑑証明書の有効期限はありません。

法定相続による相続登記の場合

法定相続による相続登記の場合は、基本的に、相続人の印鑑証明書は、必要ありません。

法定相続とは、「民法の規定によって定められている相続人(法定相続人)」名義で登記する場合のことをいいます。
この場合は、基本的に、相続人の印鑑証明書は、必要ありません。
なぜなら、民法の規定によって定められている相続人(法定相続人)が「民法の規定によって定められている相続分(法定相続分)」で登記するため、法律の規定に従って登記するため、相続人の印鑑証明書は必要がないからです。

法定相続による相続登記の場合は、次の二通りの方法です。

  1. 法定相続人が1名の場合、登記名義人となる相続人が1名のため、この相続人の登記のみとなります。
  2. 法定相続人が2名以上の場合、登記名義人となる法定相続人と法定相続分を登記します。

遺産分割協議書による相続登記では、印鑑証明書は必要

遺産分割協議書は、法定相続人全員(相続放棄をした相続人を除く)が、遺産の分配(分け方)について協議(話し合い)をして(遺産分割協議)、その結果を書面にしたものをいいます。
遺産分割協議によって、前述した法定相続分とは異なる相続の仕方をするため、遺産分割協議書による相続登記では、相続人全員(相続放棄をした相続人を除く)の印鑑証明書が必要となります。
これは、法定相続分とは異なる相続の仕方であるため、この相続の仕方に同意した(間違がいない)という意味で、相続人の意思を明確に証明するために必要となります。
遺産分割協議書には、法定相続人全員(相続放棄をした相続人を除く)の実印を押印します。

遺産分割調停調書による相続登記では、印鑑証明書は不要

遺産分割調停調書とは、家庭裁判所において、法定相続人(相続放棄をした相続人を除く)全員が、遺産の分配(分け方)についてと調停(話し合い)をして(遺産分割調停)、その結果を家庭裁判所が書面にしたものをいいます。
遺産分割調停調書には、家庭裁判所の証明文がありますので、これで間違いがないことを証明できますので、遺産分割調停調書による相続登記では、印鑑証明書が不要となります。

最後の住所が不明(分からない)のとき(住所証明書を取得できないとき)

相続登記では、登記名義人の被相続人が死亡した時点での住民票除票(または戸籍の附票)を法務局に添付書面として提出するのが基本です。
これは、法定相続による登記の場合も遺産分割協議書による登記の場合も同じです。

この場合、被相続人が、例えば、20年前に死亡していた場合などで、住民票除票(または戸籍の附票)を取得できない場合があります。
これは、市区町村役場の保存期間(死亡した後、5年間)経過で破棄処分とする規定によって、破棄されるのが基本だからです。

市区町村役場によっては、死亡後、5年間経過した場合であっても破棄せず、住民票除票(または戸籍の附票)を発行してくれるところもあります。
横浜市内の区役所では、5年経過後、破棄してしまうため、発行してくれません。

権利証(登記済証あるいは登記識別情報通知)を提出

この場合(保存期間の経過により住民票除票(または戸籍の附票)を取得できない場合)、「被相続人名義の権利証(登記済権利証あるいは登記識別情報通知)」を添付書面として、法務局に提出します。

上申書を提出

「被相続人名義の権利証(登記済権利証あるいは登記識別情報通知)」もない場合は、法定相続人全員の「上申書」を法務局に提出します。
この上申書には、法定相続人全員の実印を押印します。
上申書を法務局に提出するときは、印鑑証明書も提出します。
これは、法定相続による登記の場合、基本的には、印鑑証明書が不要とはいっても、上申書を提出するときは、法定相続による登記であっても印鑑証明書が必要となります。

上申書の内容は、次のとおりです。

下記登記申請に当たり、被相続人○○の登記上の住所である○○と死亡時の住所である○○とのつながりは、住民票の除票、戸籍の附票の保存年限の経過により証明することができません。
被相続人○○は、登記名義人に相違ないことを上申いたします。
 記
登記の目的  所有権移転
原   因  令和〇年〇月〇日相続
相 続 人  (被相続人 ○○)
       (住所)○○
       持分〇分の〇
       (氏名)○○
       (住所)○○
       持分〇分の〇
       (氏名)○○
不動産の表示(省略)

最後の住所が不明(分からない)のとき(住所証明書を取得できないとき)であっても、権利証や上申書が不要な場合

次のような場合は、権利証や上申書を提出する必要がありません。
したがって、相続人全員の印鑑証明書も必要ありません。

最後の住所が不明(分からない)のとき(住所証明書を取得できないとき)であっても、被相続人の除籍謄本などに記載されている「本籍」が、登記名義人の登記上住所(登記されている住所)と一致している場合は、権利証や上申書を提出する必要がありません。これは、被相続人が登記名義人と同一人物であると解釈できるからです。
したがって、この場合は、印鑑証明書の提出が不要です。

「住所」と「本籍」が一致することはあるのか。
今では、「住所」と「本籍」が別物と考えるのが普通です。人によって極稀に「住所」と「本籍」が一致することはあります。

昔は、特に戦前、「本籍」が「住所」であったので、「登記上(登記されている)の住所」が「本籍」と一致していれば、同一人物であると登記所は解釈しています。

ただし、被相続人の除籍謄本などをコピーしたものを提出して、原本還付の手続が必要となります。

原本還付手続とは、コピーした余白に、「これは、原本の写しに相違ありません。(申請人の氏名)(印)」として原本と一緒に提出します。

除籍謄本の一部が焼失などの原因で取得できないときは、印鑑証明書が必要

「除籍謄本の一部が焼失などの原因で取得できないとき」とは、第二次世界大戦時に、役所が空襲や火災などで被害を被り(こうむり)、戸籍関係書類が焼失してしまって、保存されていない場合のことをいいます。

このような場合は、市区町村役場で「除籍謄本が焼失などで発行できない旨の証明書」を発行してもらいます。
さらに、法務局に提出する「上申書」を作成して提出します。
これに相続人全員が実印を押印して、印鑑証明書を提出します。
これは、法定相続による登記の場合も遺産分割協議書による登記の場合も同じです。

上申書の内容は、次のとおりです。

下記登記申請に当たり、被相続人○○に関する除籍謄本、改製原戸籍謄本の一部が戦災による焼失のため添付することができません。
被相続人○○の法定相続人が○○及び○○のみであることに相違ないことを上申いたします。
 記
登記の目的  所有権移転
原   因  令和〇年〇月〇日相続
相 続 人  (被相続人 ○○)
       (住所)○○
       持分〇分の〇
       (氏名)○○
       (住所)○○
       持分〇分の〇
       (氏名)○○
不動産の表示(省略)

法定相続による登記の場合は、この上申書を作成して、法務局に提出します。
遺産分割協議書による登記の場合は、次のように遺産分割協議書に記載すれば、別途、上申書を作成する必要がありません。

被相続人○○に関する除籍謄本、改製原戸籍謄本の一部が戦災による焼失のため添付することができません。被相続人○○の法定相続人が○○及び○○のみであることに相違ありません。

遺贈の登記をするときは、印鑑証明書が必要

遺贈の登記とは、遺言書によって「遺贈」を登記原因として相続登記をする場合のことをいいます。
例えば、遺言者(被相続人)が遺言で遺産を相続人以外の第三者に遺贈する場合、相続登記の申請人となる人は、次の二通りです。

  1. 権利者:受遺者(じゅいしゃ)となる第三者
    義務者:遺言執行者
  2. 権利者:受遺者(じゅいしゃ)となる第三者
    義務者:相続人全員(遺言執行者がいない場合)

この場合、義務者となる遺言執行者または相続人全員の印鑑証明書が必要となります。受遺者自身が遺言執行者を兼ねる場合であっても、遺言執行者としての印鑑証明書が必要となります。

遺贈による相続登記申請を司法書士に委任する場合、遺言執行者または相続人全員が委任状に実印を押印します。権利者と義務者が司法書士に委任しないで申請する場合は、登記申請書に実印を押印します。

相続登記のほか、預貯金などの相続手続をするときは、印鑑証明書が必要

預貯金などの相続手続をするときは、印鑑証明書が必要となります。
これは、法定相続による登記の場合も遺産分割協議書による登記の場合も同じです。
預貯金の相続手続では、印鑑証明書の有効期限は、通常、発行日より6か月です。

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