相続登記と家庭裁判所の遺産分割調停調書

相続登記と家庭裁判所の遺産分割調停調書

相続登記を申請する際、すでに、家庭裁判所の遺産分割調停調書がある場合の相続登記の方法について、説明いたします。

遺産分割調停調書で相続登記する場合の基本

家庭裁判所において、法定相続人の間で遺産分割の調停が行われる場合、遺産分割の調停申立ての際、被相続人の戸籍証明書(除籍謄本・住民票除票)や法定相続人の戸籍証明書(戸籍謄本)・住民票を家庭裁判所に提出し、家庭裁判所において相続関係の確認がなされます。

遺産分割の調停が成立しますと、家庭裁判所は、法定相続人に、遺産分割調停調書の正本を発行します。
遺産分割調停調書には、次の事項が記載されます。

  • 被相続人の本籍、最後の住所、生年月日、死亡日
  • 法定相続人の本籍、住所
    「被相続人の相続人が、誰と誰であることを確認した。」あるいは、
    「誰々誰々が各相続分を相続したことを認める。」というように記載されます。
  • 法定相続人の誰が何を相続取得する。

通常、相続登記を申請するときは、被相続人の戸籍証明書(除籍謄本・住民票除票)や法定相続人の戸籍証明書(戸籍謄本)といった「相続証明書(被相続人と相続人の関係を証明する書面)」を提出しますが、
家庭裁判所の遺産分割調停調書に基づいて相続登記をする場合は、すでに、家庭裁判所において相続関係の確認がなされていますので、登記所に相続登記を申請する場合は、これら「相続証明書」を提出する必要がありません。

したがって、遺産分割調停調書に基づいて相続登記を申請する場合、遺産分割調停調書正本のほか、遺産分割により取得した相続人の住民票と不動産の評価証明書を登記所に提出すればよいことになります。
家庭裁判所での遺産分割調停で登記(必要書類)を参考にしてください。

数次相続の事例(遺産分割調停調書で相続登記をする場合)

【事例】被相続人は、子のいない配偶者妻(配偶者夫がいた)
被相続人配偶者妻の死亡後(第1の相続)、その配偶者夫が死亡(第2の相続)→数次相続と言う。
相続人は(第3順位の相続人の)配偶者妻の兄弟姉妹と配偶者夫の兄弟姉妹

相続関係図(亡夫婦の兄弟姉妹が相続人・数次相続)

この事例では、
第1の相続人:配偶者夫と、被相続人配偶者妻の兄弟姉妹3人
第2の相続人:配偶者夫の兄弟姉妹3人
遺産分割調停をこの6人で行った事例です。

遺産分割調停調書に記載された内容

遺産分割調停調書に記載された遺産分割の内容
各兄弟姉妹が各相続分を相続したことを認める。
配偶者夫の兄弟姉妹のうちAが被相続人の遺産を取得することを認める。
Aは他の兄弟姉妹に代償金として金○円を支払う。

遺産分割調停調書に記載された被相続人・相続人の内容
被相続人配偶者妻の氏名、生年月日、死亡日、死亡時の住所、登記上の住所
配偶者夫の氏名、生年月日、死亡日、死亡時の住所
相続人全員の住所、氏名
不動産の表示(の記載あり)

遺産分割調停調書には、「遺産分割の内容」が記載されるのは当然として、そのほかの「被相続人」と「相続人全員」に関する「上記の事項」が記載されている必要があります。
一般の方が、申立人・相手方双方が弁護士を立てずに遺産分割調停をするとき、調停成立に際し、家庭裁判所の調停委員が口頭で調停成立の内容を、申立人・相手方双方に確認します。これを基に遺産分割調停調書が作成されます。
この場合、「被相続人」と「相続人全員」に関する相続登記に必要な「上記の事項」がすべて記載されていない場合があります。 そうしますと、相続登記申請後、法務局(登記所)の担当官にとって相続関係が分からないことになりますので、この遺産分割調停調書では相続登記ができないことになってしまいます。この場合、家庭裁判所に「更正決定」で 相続登記に必要な「上記の事項」を記載してもらうことになります。
遺産分割調停で弁護士を立てるとき、弁護士は、遺産分割調停の案を家庭裁判所に提出しますので、「被相続人」と「相続人全員」に関する「上記の事項」で基本的には記載漏れがありません。
ですので、一般の方が、弁護士を立てずに遺産分割調停を申立てる場合、調停成立時には、遺産分割調停の案を提出するようにした方がよいでしょう。

遺産分割調停調書で相続登記する方法

登記の目的:所有権移転
原因:(被相続人死亡日)年月日(配偶者夫氏名)相続、(配偶者夫死亡日)年月日相続
 事例では、「平成20年10月1日配偶者夫氏名相続平成23年10月1日相続」と記載します。
相続人:A

事例では、数次相続に該当しますので、登記の「原因」として、二段階の「相続原因」を記載する必要があります。
相続人Aは、被相続人配偶者妻の直接の相続人ではありませんので、(亡)配偶者夫を経由して相続することになります。

相続登記の必要書類:家庭裁判所での遺産分割調停による場合
被相続人・相続人ともに、戸籍関係の証明書は必要ありませんが、調停調書に被相続人の氏名、住所、本籍、死亡日など、登記所が相続関係を確認するために必要な事項が記載されている必要があります。
理由は、家庭裁判所での調停で、戸籍関係の書類が確認されているからです。
ただし、被相続人の登記上の住所と死亡時の住所が相違していることを遺産分割調停調書の記載から確認できない場合には、住所の変更を証明する住民票除票や戸籍の附票などが必要となります。

遺産分割調停調書(正本または謄本)のほかに、実際に、不動産を取得する相続人について
(1)住民票
(2)固定資産税の評価証明書

上記の遺産分割調停調書の内容で、「配偶者夫の兄弟姉妹のうちAが被相続人の遺産を取得することを認める。」という意味は、第1の相続について被相続人配偶者妻の遺産を(亡)配偶者夫が取得したことにし、第2の相続について被相続人配偶者夫の遺産をAが取得するという意味です。2段階の相続があってAが遺産を取得したことを意味します。Aは、第1の被相続人配偶者妻の遺産を直接に取得したわけではありません。
このような数次相続の場合、家庭裁判所は遺産分割調停の内容を二つに分けないで、第1の相続と第2の相続を一つの内容として記載するのが普通です。
なお、数次相続の遺産分割協議書・相続関係説明図の作成方法と登記の方法を参考にしてください。

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