法定相続分での相続登記の方法

法定相続分での相続登記(不動産名義変更)の方法

ここでは、法定相続分(民法で定められた相続分)で登記する場合の主なケースについて、その登記の方法を解説します。
法定相続人が1人(例えば、子1人)の場合は省略します。
法定相続人が誰になるのかは法定相続人を、法定相続分がいくつになるのかは法定相続分を参考にしてください。
法定相続人が誰になるのか、また、被相続人の後に法定相続人が死亡した場合の数次相続で、法定相続人が誰になるのかによって、法定相続登記の方法(必要書類)が異なってきますので、ここで解説しますそれぞれのケースの組み合わせで考えていただければ幸いです。
法定相続人の中に相続放棄(家庭裁判所の手続)をした人がいる場合は、この人を除いて法定相続分を確定します。相続放棄をした人は、この人の戸籍謄本と相続放棄申述受理通知書を添付書類として登記所(法務局)に提出します。

主なケースごとの法定相続人と法定相続分、必要書類、登記の方法

ケース1:法定相続人が配偶者と子3人

法定相続分の割合:配偶者と子3人

法定相続分の割合:配偶者は2分の1、子は2分の1。
子が数人いる場合は、相続分2分の1について、さらに均等に相続。
子が3人いる場合は、1/2×1/3=1/6で、各6分の1となります。
(法定相続人の持分を登記する場合、自分で持分の計算をすることになります。)

登記申請書の「相続人」の記載方法

相続人 (被相続人 ○○○○)
    (住所)○○○○
        持分2分の1 配偶者(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○

例えば、私道(登記上の公衆用道路)があり、被相続人の持分が6分の1の場合の配偶者と子3人の法定相続分は次のとおりです。
配偶者:1/6×1/2=1/12 → 持分12分の1
子3人:1/6×1/2×1/3=1/36 → 各持分36分の1

実際に登記記録に記載される「持分」は、共有者の最初の人には「持分〇分の〇」と記載されますが、二人目以降の人には「〇分の〇」とのみ記載され、「持分」は記載されないことになっています。

法定相続登記の必要書類:配偶者と子3人

被相続人の必要書類
(1)出生から死亡時までの戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本)
   第二次世界大戦時に戦災などで戸籍関係書類が焼失している場合は、次の書類が必要です。
   ①「戸籍関係書類を発行できない旨の役所の証明書」
   ②「上申書(他に相続人がいないこと)」:法定相続人全員が署名・実印を押印します。
   ③「法定相続人全員の印鑑証明書」
(2)住民票の除票(本籍・筆頭者の記載があるもの)または
   除かれた戸籍の附票(本籍地記載が必要)
   これを取得できない(役所の保存期間5年の経過)場合、次のいずれかの書類が必要です。
   ①被相続人名義の権利証(登記済権利証または登記識別情報通知
   ②除籍謄本などで被相続人の「本籍」と「登記上の住所」が一致する場合、
    原本還付の方法で「その除籍謄本などのコピー(原本に相違ないことの署名押印)」を提出します。
   ③:①②の方法が不可能な場合、「上申書(被相続人が登記名義人に相違ないこと)」を提出します。
    この上申書に法定相続人全員が署名・実印を押印します。法定相続人全員の印鑑証明書を提出します。

法定相続人の必要書類
(1)戸籍謄本
(2)住民票(名義人となる法定相続人)
(法定相続人の印鑑証明書は不要。ただし、上記の場合は必要。)

相続関係説明図を作成します。
その他の書類
 不動産の固定資産税評価証明書(東京23区の場合は都税事務所の評価証明書)
 委任状

登記申請書の書き方は相続登記申請書の書き方を参考にしてください。

被相続人の後に、配偶者が死亡し、さらに子の1人が死亡している場合は、次を参考にしてください。
ケース4:(数次相続)法定相続人が配偶者と子3人で、被相続人の後に配偶者が死亡した場合
ケース5:(数次相続)法定相続人が配偶者と子3人で、被相続人の後に配偶者が死亡し、さらに子の一人Aが死亡した場合(Aに配偶者と子なしの場合)

ケース2:法定相続人が配偶者と親(父母)2人

法定相続分の割合:配偶者と親(父母)2人

法定相続分の割合:配偶者は3分の2、父母は3分の1
親(父母)が2人いる場合は、相続分3分の1について、さらに均等に相続
親(父母)が2人いる場合は、1/3×1/2=1/6で、各6分の1となります。

登記申請書の「相続人」の記載方法

相続人 (被相続人 ○○○○)
    (住所)○○○○
        持分3分の2 配偶者(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 父(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 母(氏名)○○○○

必要書類と登記申請書の書き方は、上記法定相続人が配偶者と子の場合を参考にしてください。

ケース3:法定相続人が配偶者と兄弟姉妹2人

法定相続分の割合:配偶者と兄弟姉妹2人

法定相続分の割合:配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1
兄弟姉妹が数人いる場合、相続分4分の1について、さらに均等に相続
兄弟姉妹が2人いる場合は、1/4×1/2=1/8で、各8分の1となります。
ただし、次を参考にしてください。
兄弟姉妹が相続人となる場合の法定相続分の全血半血とは

登記申請書の「相続人」の記載方法

相続人 (被相続人 ○○○○)
    (住所)○○○○
        持分4分の3 配偶者(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分8分の1 兄(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分8分の1 弟(氏名)○○○○

必要書類と登記申請書の書き方は、上記法定相続人が配偶者と子の場合を参考にしてください。
ただし、被相続人の必要書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍関係証明書(除籍謄本など)のほかに、次の書類が必要です。
被相続人の父母の出生から死亡までの除籍謄本なども必要となります。これは、相続人の兄弟姉妹が全員で誰と誰であることを証明するためです。また、被相続人の祖父母が死亡していることの除籍謄本などが必要です。

ケース4:(数次相続)法定相続人が配偶者と子3人で、被相続人の後に配偶者が死亡した場合

法定相続分の割合:子3人(配偶者(母)の法定相続分を相続)

法定相続分の割合:(亡)配偶者(母)の法定相続分2分の1について、さらに均等に相続
子が3人いる場合は、1/2×1/3=1/6で、各6分の1となります。

登記申請書の「相続人」の記載方法

登記の目的 配偶者(母)持分全部移転(2件目として申請書を作成)
相続人 (被相続人 配偶者(母)氏名○○○○)
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分6分の1 子(氏名)○○○○

必要書類と登記申請書の書き方は、上記法定相続人が配偶者と子の場合を参考にしてください。
ただし、被相続人の必要書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍関係証明書(除籍謄本など)のほかに、次の書類が必要です。
(亡)配偶者の出生から死亡までの除籍謄本なども必要となります。これは、配偶者の子が全員で誰と誰であることを証明するためです。配偶者の婚姻前の除籍謄本など出生まで遡って取得します。

ケース5:(数次相続)法定相続人が配偶者と子3人で、被相続人の後に配偶者が死亡し、さらに子の一人Aが死亡した場合(Aに配偶者と子なしの場合)

法定相続分の割合:子2人(子1人Aの法定相続分を相続)

法定相続分の割合:(亡)子1人Aの法定相続分6分の1(1/2×1/3)について、さらに均等に相続
子が2人いる場合は、1/6×1/2=1/12で、各12分の1となります。

登記申請書の「相続人」の記載方法

登記の目的 子A持分全部移転(3件目として申請書を作成)
相続人 (被相続人 子A氏名○○○○)
    (住所)○○○○
        持分12分の1 子(氏名)○○○○
    (住所)○○○○
        持分12分の1 子(氏名)○○○○

必要