遺贈の登記(遺言書がある場合の遺贈の登記)

自筆証書遺言書と遺贈(譲渡する)の登記

遺言書が「自筆で作成」され、相続人のうちの一人に「譲渡する。」と記載されている場合の登記手続について、説明いたします。

通常、遺言書を作成するとき、相続人に譲渡したい(あげたい)という気持ちで書いているつもりで「譲渡する」と書いてしまうと思いますが、法律的には「相続させる」が正しい書き方となります。
「譲渡する」は「遺贈する」と解釈されますので、「相続させる」場合とは異なる方法となります。「遺贈する」という言葉は、法定相続人以外の人に譲渡する(あげる)場合に使用します。


この場合の手続は、次の順番で行います。

  1. 自筆証書遺言書の検認手続(家庭裁判所)
     自筆証書遺言書を作成し、登記所の保管制度を利用した場合、「家庭裁判所の検認手続」は不要です。
     登記所の保管制度については、自筆証書遺言書保管制度による遺言書を参考にしてください。
  2. 遺言執行者の申立
  3. 遺贈の登記

自筆証書遺言書の検認手続(家庭裁判所)

遺言者の自筆で作成された遺言書は、登記所の保管制度を利用していない場合、家庭裁判所の検認手続をする必要があります。
家庭裁判所の検認手続をすることにより、自筆の遺言書に、家庭裁判所の証明文が付けられます。
この家庭裁判所の証明文のある自筆の遺言書で、相続登記などをします。
家庭裁判所の検認手続については、自筆遺言書(自筆証書遺言書)の検認手続を参考にしてください。

遺言執行者の申立

遺言書の内容として、相続人のうちの一人に「相続させる。」と記載されているときには、その相続人が単独で、「相続」を登記原因として、相続登記することができます。

ですが、事例のように、遺言書の内容が「譲渡する」の場合、相続登記の登記原因は「遺贈」となります。
登記原因を「遺贈」で登記する場合は、遺贈を受ける人(受遺者)が相続人であっても、その受遺者が単独で登記することができません。

この場合、遺言書に、遺言執行者の指定がある場合は、その遺言執行者が協力して「遺贈」の登記をすることになります。

遺言執行者の指定がない場合は、他の法定相続人の協力を得て登記します。
ですが、通常、他の法定相続人の協力を得ることが難しいため、
この場合は、家庭裁判所に、遺言執行者の選任申立てをし、選任された遺言執行者と「遺贈」の登記をします。
この遺言執行者は、司法書士もなることができます。
相続登記と遺言書も参考にしてください。

誰々に「遺贈する。」という遺言書を作成する場合、必ず遺言執行者を指定しておいた方がよいでしょう。そうすれば、相続手続をスムーズに行うことができます。

遺贈の登記の方法(受遺者と遺言執行者との共同申請)

上記の手続をした後、受遺者と遺言執行者で「遺贈」の登記をします。
登記に必要な書類は、次のとおりです。

受遺者が用意するもの

  1. 受遺者の住民票
  2. 受遺者の戸籍謄本
     被相続人と法定相続関係であることを証明します。このことにより登録免許税の税率が0・4%になります。法定相続人以外の第三者への遺贈の場合、登録免許税の税率は2%です。
  3. 受遺者の印鑑

遺言執行者が用意するもの(受遺者=遺言執行者の場合も同じです。)

  1. 遺言執行者の選任審判書(遺言書に遺言執行者が記載されているときは、この遺言書)
  2. 遺言執行者の印鑑証明書
  3. 登記原因証明情報(遺言執行者が署名・実印を押印)
  4. 遺言執行者の実印
  5. 被相続人の戸籍の附票(住民票の除票)
  6. 被相続人の除籍謄本など
  7. 家庭裁判所の検認を受けた遺言書
  8. 不動産の固定資産評価証明書
  9. 不動産の権利証
    共同申請方式となりますので、受遺者=遺言執行者の場合であっても、被相続人の権利証(登記済権利証か登記識別情報通知)が必要です。権利証がない場合は、権利証に代わる三通りの方法のうちの一つを選択します。なお、通常の「相続」を登記原因とする場合、相続人の単独申請となりますので、権利証は不要です。

相続登記と内縁の妻に遺贈

「内縁の妻」とは、婚姻届け(法律上の婚姻)によらない事実婚の妻のことをいいます。
内縁の妻に遺産を残したい(あげたい)場合、遺言書でその旨を書いて残しておきます。そうすることによって内縁の妻は遺産を取得することができます。
反対に、内縁の妻のために遺言書を残しておかない場合、内縁の妻は遺産を取得することができません。内縁の妻には相続権がありません。法律上の相続人に相続権があるからです。

事例:遺言者は、所有する不動産を○○(内縁の妻)に遺贈する。遺言者は、遺言執行者として、□□を指定する。
という遺言書があり、遺言者の相続開始後、どのように登記手続をすればよいでしょうか。

遺贈による登記

遺贈とは、遺言書により、相続開始後、遺言者の財産を受遺者に贈与することをいいます。
相続させる、との違いは、相続させるが、遺言者の法定相続人に対する場合にこの言葉を使います。

事例で、○○は遺言者の内縁の妻(受遺者)であり、□□は遺言者と内縁の妻との間の子(遺言執行者)の事例です。
内縁の妻とは、戸籍上、法律上の妻ではなく、法律上の「配偶者」ではありません。
内縁の妻は、通常、使われている言葉です。

そこで、この場合の登記申請の方法は、内縁の妻(受遺者)と遺言者と内縁の妻との間の子(遺言執行者)が、共同で登記申請します。遺言書で、受遺者である内縁の妻を遺言執行者とすることもできます。

戸籍上、法律上の妻である配偶者の場合、遺言書に、相続させる、と記載されていれば、配偶者単独で相続登記をすることができます。
これに対し、遺贈する、の場合は、配偶者が法律上の妻であれ、内縁の妻であれ、単独で登記申請することができません。

登記申請に必要な書類、印鑑

内縁の妻(受遺者)

  1. 住民票
  2. 認印

遺言執行者

  1. 不動産の権利証(登記済権利証または登記識別情報
    権利証がないい場合は、こちらを参考にしてください。
  2. 遺言書(登記原因証明情報)
  3. 遺言執行者の印鑑証明書
  4. 遺言執行者の実印
  5. 遺言者の除籍謄本(登記原因証明情報)
  6. 遺言者の住民票の除票(登記原因証明情報)
  7. 不動産の固定資産税・評価証明書

遺贈による登記の登録免許税

遺贈による登記の場合、受遺者が、法定相続人であるかいなかによって、税率が異なります。
受遺者が法定相続人の場合は、登録免許税の税率が、相続の場合と同様に、評価価格の0・4%です。
受遺者が法定相続人以外(内縁の妻)の場合は、登録免許税の税率が、評価価格の2%です。

例えば、不動産の評価価格が1,000万円の場合は、どうでしょうか。
受遺者が法定相続人の場合は、登録免許税の税率が、相続の場合と同様に、評価価格の0・4%ですから、4万円となります。
これに対して、受遺者が法定相続人以外(内縁の妻)の場合は、登録免許税の税率が、評価価格の2%ですから、20万円となります。

遺贈による場合の不動産取得税(都道府県税)

遺贈により登記をした場合、不動産取得税(都道府県税)がかかるでしょうか。
受遺者が法定相続人の場合は、「相続により取得」したので、不動産取得税がかかりません。

これに対し、特定の不動産の遺贈(特定遺贈)の場合で、受遺者が法定相続人以外(内縁の妻)の場合は、不動産取得税がかかります。
居住用の建物であれば、固定資産税の評価価格に対し税率は3%です。
居住用の土地であれば、評価価格の2分の1が課税価格となり、税率は3%です。
土地の評価価格が1,000万円であれば、不動産取得税は、15万円となります。

このように、特定遺贈の場合、内縁の妻のように、法定相続人以外に遺贈する場合には、遺言の内容が、相続させる、や、法定相続人に対する遺贈よりも、登録免許税と不動産取得税が余計にかかることになります。

そこで、遺言者と内縁の妻との間に子(認知された子)がいる場合には、特段、親子間で問題のない場合、内縁の妻に遺贈するよりも、認知された子に、相続させる、とする遺言書を作成した方が、登録免許税と不動産取得税の節約になると思われます。

遺言書作成で不動産の記載漏れに注意

遺言書で不動産を遺贈する場合で、その不動産を特定する場合には、遺贈する不動産の記載漏れのないようにします。
記載漏れのあった不動産は、遺贈の登記ができないことになり、記載漏れのあった不動産は、他の相続財産に含まれ、相続の対象となりますので、注意が必要です。

もし仮に、遺言書に記載漏れの不動産がある場合、いざ売却したいときに、すぐに売却できない場合もあるからです。

特に、その不動産が私道など固定資産税が免除されているような場合には、遺言書に記載漏れする可能性が高くなります。
戸建ての場合には、敷地と公道との位置関係に注意し、登記所で公図など取得して確認するとよいでしょう。このことは、公証人役場で遺言書を作成する場合にも、注意する度合いは同じです。
このほか、公正証書遺言書がある場合、相続手続きを自分一人でできますかを参考にしてください。
そのほか、遺言書があるときは、どうすればよいのかを参考にしてください。

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