自筆証書遺言書で法定相続人以外の第三者に遺贈する場合の相続登記の方法(遺言執行者に司法書士がなるとき)

  1. 自筆証書遺言書で法定相続人以外の第三者に遺贈する場合の相続登記の方法(遺言執行者に司法書士がなるとき)
    1. 自筆証書遺言書に記載されている内容の問題点
      1. 登記義務者を遺言執行者とする理由
        1. 登記義務者を相続人全員とする場合
        2. 被相続人名義の権利証がない場合
      2. 遺言書検認申立てと一緒に遺言執行者選任申立て
    2. 家庭裁判所の申立てと相続登記(遺贈登記)に必要な書類の準備
    3. 家庭裁判所の遺言書検認申立てと遺言執行者選任の申立て、相続登記(遺贈登記)の方法
      1. (1)自筆証書遺言書の検認申立てと(2)遺言執行者選任の申立て
        1. 自筆証書遺言書の検認申立てに必要な書類
        2. 遺言執行者選任申立てに必要な書類
        3. 遺言書の検認申立てと遺言執行者選任申立ての手順
          1. 遺言書の検認申立てと遺言執行者選任申立ての「申立書」を作成
          2. 家庭裁判所に遺言書の検認申立書類と遺言執行者選任申立書類を提出と手続の完了までの手順
      2. (3)相続登記(遺贈登記)
        1. 遺贈登記に必要な書類など
        2. 遺贈登記申請書の作成
    4. 遺贈の場合の税金
      1. 登録免許税
      2. 不動産取得税(不動産を取得することによりかかる都道府県税)
    5. 遺贈登記にかかる費用(当司法書士事務所に依頼するとき)
    6. まとめ:自筆証書遺言書で法定相続人以外の第三者に遺贈する場合の相続登記の方法(遺言執行者に司法書士がなるとき)
  2. 相続登記や預貯金の相続手続や遺言書、遺言執行者については、当司法書士事務所にご相談ください。

自筆証書遺言書で法定相続人以外の第三者に遺贈する場合の相続登記の方法(遺言執行者に司法書士がなるとき)

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

【相続登記実例】
父が生前、自分で書いた遺言書があります。この遺言書を娘の私が保管していました。また、この遺言書には、父の妹に、妹が住んでいる土地を「妹○○」に遺贈すると記載されています。遺言執行者が記載されていません。
父の法定相続人は、私を含めて4名います。
どういう手順で相続登記をしたらよいのか教えてください。相続登記の他、税金面で注意することがありましたら、これも教えてください。
【遺産】
父名義の土地
 固定資産税評価価格:2,000万円
【相続関係】
被相続人:父
法定相続人:子4名
遺贈を受ける人(受遺者):父の妹
相続関係図:妹が受遺者
相続関係図:妹が受遺者

自筆証書遺言書に記載されている内容の問題点

相談の内容から、次のことが言えます。

父が「生前、自分で書いた遺言書」があります。
 ↓
自筆証書遺言書については、家庭裁判所の検認手続が必要です。
遺言書には、父の妹に、妹が住んでいる土地を「妹○○に遺贈する」と記載されています。
 ↓
妹の氏名のみが記載されていますので、「妹○○」だけでは、どこの妹○○なのか不正確のため、これだけでは、受遺者として登記できません。
そこで、「妹○○」が父の妹であることを証明する必要があります。相続登記(遺贈登記)をするときに必要です。

「妹○○」が父の妹であることを証明するには、次の書類が必要です。

  1. 妹の戸籍謄本(父母が記載)・住民票(本籍記載)
  2. 被相続人父(兄)の死亡時の除籍謄本(父の死亡と父母が記載)
  3. 念のため、次の書類も用意します。これで、被相続人父(兄)と妹が兄妹の関係が明らかとなります。
    祖父の除籍謄本(これに被相続人父(兄)と妹が記載されています。)(登記では確実にできる方法を選択)

登記義務者を遺言執行者とする理由

遺贈による登記では、登記権利者が妹で、登記義務者を相続人全員または遺言執行者として、通常の相続登記の単独申請(申請人が相続人)とは異なり、共同申請(申請人が権利者・義務者)で行います。
事例の場合、遺言執行者を義務者とする方法を選択します。

遺贈による登記では、被相続人名義の「権利証(登記済権利証または登記識別情報通知)」が必要です。
事例の場合は、権利証がありますので問題ありません。
この権利証がない場合は、その一つの方法として「登記所による事前通知」で行うこともできます(通常の登記完了まで1週間余計にかかります)。権利証がない場合であっても、家庭裁判所から選任された遺言執行者(司法書士)であれば問題ありません。

登記義務者を相続人全員とする場合

登記義務者を相続人全員とする場合、相続人全員の印鑑証明書各1通(有効期限3か月)が必要です。この方法ですと、相続人全員に登記の委任状などに実印で押印していただくなど、相続人全員の負担が大きくなります。事例の場合は、相続人が4名います。
そこで、遺言執行者を家庭裁判所で選任してもらう方法であれば、相続人全員の負担がないことになります。

被相続人名義の権利証がない場合

また、被相続人名義の権利証がない場合は、登記が確実にできるか不透明となります。
このため、被相続人名義の権利証があってもなくても、遺言執行者を登記義務者とする選択をした方がよいでしょう。

遺言書検認申立てと一緒に遺言執行者選任申立て

遺言執行者には、登記を依頼する司法書士を選任してもらうように、家庭裁判所に選任の申立てをします。事例の場合、申立人を被相続人父の子(相談者の娘)とします。

遺言書検認申立てと一緒に遺言執行者選任申立てをします。
ただし、家庭裁判所における遺言執行者選任の審判は、遺言書検認手続完了後に行われます。  
司法書士が遺言執行者となった場合は、遺贈による所有権移転登記では、遺言執行者の司法書士が登記義務者となりますので、司法書士の印鑑証明書と実印を使用します。ただし、司法書士がオンライン申請する場合、司法書士が登記権利者の「妹○○」の代理人を兼ねますので、司法書士の電子署名をします。このため、司法書士の印鑑証明書と実印が不要となります。

家庭裁判所の申立てと相続登記(遺贈登記)に必要な書類の準備

家庭裁判所の申立てと相続登記(遺贈登記)をする前に、次の書類を準備します。必要な書類があるかどうかを確認します。事例の場合、次の書類を準備します。

  1. 被相続人の出生から死亡までの除籍謄本全部と「戸籍の附票(または住民票除票・本籍記載)」各1通
    死亡時の除籍謄本は2通(遺言書検認申立てと遺言執行者選任申立てで使用)
  2. 相続人全員の「戸籍謄本」と「住民票」各1通
    申立人の戸籍謄本は2通(遺言書検認申立てと遺言執行者選任申立てで使用)
  3. 自筆証書遺言書(申立時には、コピーを家庭裁判所に提出)
  4. 権利証(登記済権利証・登記識別情報通知)原本
  5. 被相続人父の「妹○○」の戸籍謄本・住民票(本籍地記載)各1通
  6. 遺言執行者となる司法書士の住民票1通(遺言執行者選任申立てで使用)
  7. 固定資産税納税通知書・課税明細書(遺贈登記で使用)

家庭裁判所の遺言書検認申立てと遺言執行者選任の申立て、相続登記(遺贈登記)の方法

事例の場合、最終的には、被相続人父名義を妹○○に名義変更したいので、次の順番で手続をします。

家庭裁判所の手続
(1)自筆証書遺言書の検認申立て
(2)遺言執行者選任の申立て
(1)と(2)を同時に家庭裁判所に申立書を提出します。

法務局
(3)相続登記(遺贈登記)

(1)自筆証書遺言書の検認申立てと(2)遺言執行者選任の申立て

自筆証書遺言書の検認申立てに必要な書類
  1. 被相続人の出生から死亡までの除籍謄本全部と「戸籍の附票(または住民票除票・本籍記載)」
  2. 相続人全員の「戸籍謄本」(と「戸籍の附票(本籍記載)」家庭裁判所には提出不要)
  3. 自筆証書遺言書(申立時には、コピーを提出)

①と②の除籍戸籍謄本と戸籍の附票全部をコピーして、原本と併せて、「原本還付申請書」を家庭裁判所に提出します。(東京家庭裁判所においても原本を返却してくれます。)家庭裁判所の検認期日に原本を返却してもらいます。これらの書類の原本還付することにより相続登記(遺贈登記)で、再度、使用することができます。

遺言執行者選任申立てに必要な書類
  1. 被相続人の死亡時の除籍謄本
  2. 申立人の戸籍謄本
  3. 自筆証書遺言書コピー
  4. 遺言執行者となる司法書士の住民票
遺言書の検認申立てと遺言執行者選任申立ての手順
遺言書の検認申立てと遺言執行者選任申立ての「申立書」を作成

遺言書の検認申立てと遺言執行者選任申立ての「申立書」を作成します。
司法書士の住所の記載は、個人の住所の他、「連絡先司法書士事務所の住所」を記載します。これにより、遺言執行者選任審判書には、「司法書士事務所の住所」が記載されます。
これにより、遺贈の登記では、登記義務者(司法書士)の住所を「司法書士事務所の住所」を記載することができ、オンライン申請での司法書士(義務者兼(権利者)代理人)の電子署名をすることができます。

家庭裁判所に遺言書の検認申立書類と遺言執行者選任申立書類を提出と手続の完了までの手順
  1. 家庭裁判所に遺言書の検認申立書類と遺言執行者選任申立書類を提出します。
  2. 家庭裁判所が申立人宛てに、家庭裁判所に出頭していただくご希望の日時について、電話連絡します。おおよそ1か月以内。
  3. 家庭裁判所が、法定相続人全員宛てに、裁判所に出頭する日時を連絡します(郵送)。(申立人は家庭裁判所に出頭します。他の法定相続人が出頭しなくても問題ありません。)
  4. 家庭裁判所に出頭する日
    申立人が家庭裁判所に出頭する日時に、家庭裁判所に出向きます。
    持参する書類と印鑑は、次のとおりです。
    (家庭裁判所からの通知書に持参するものが記載されています。)
    ①印鑑:申立書に押印した認印
    ②遺言書の原本
    ③収入印紙:150円分(家庭裁判所に提出します。)
    ④被相続人が生前に「自筆で書いていたもの、手紙やメモなど」:参考程度です。なくても問題ありません。
    ⑤申立人の身分証明書(運転免許証など)も一応、持参する。
    申立人の待合室で、担当官から呼び出しがあるまで待機します。
    出頭した相続人立ち合い(必ずしも出頭する必要はありません。)のもと、遺言書を確認します。
    家庭裁判所が遺言書に証明文を付けてくれます。(作業時間:約1時間)
    証明書付き遺言書を受取ります。また、原本還付した「被相続人・相続人の除籍戸籍謄本・戸籍の附票」の原本を受取ります。
    (遺言執行者選任申立てについて、家庭裁判所の担当者から説明があるかもしれません。遺言執行者選任審判で2週間ほどかかります。)
  5. 家庭裁判所が遺言執行者選任申立て内容について、「照会」を申立人と遺言執行者候補者の司法書士宛てに郵送します。(2週間ほどで)
  6. 申立人と遺言執行者候補者の司法書士が家庭裁判所に「照会に対する回答」を郵送します。
  7. 家庭裁判所が遺言執行者選任審判書を申立人と遺言執行者に選任された司法書士宛てに郵送します。(2週間ほどで)

(3)相続登記(遺贈登記)

家庭裁判所の手続が完了しましたので、遺贈の登記を申請することができます。

遺贈登記に必要な書類など
  1. 自筆証書遺言書(家庭裁判所の証明文付き)
  2. 遺言執行者選任審判書
  3. 妹の戸籍謄本・住民票(本籍記載)
  4. 被相続人父の死亡時の除籍謄本
  5. 祖父の除籍謄本(これに被相続人父と妹が記載されています。)
  6. 権利証原本
  7. 固定資産税納税通知書・課税明細書
  8. 司法書士の電子署名
遺贈登記申請書の作成
      登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原   因 令和〇年〇月〇日遺贈
権 利 者 (住所)○○○○
      (氏名・受遺者)○○ ○○
      登記識別情報通知希望の有無:送付の方法による交付を希望する
義 務 者 (住所)○○○○
      (氏名)亡○○ ○○
      (住所:遺言執行者司法書士の事務所)○○○○
      遺言執行者 司法書士 ○○ ○○
義務者兼代理人 (住所:遺言執行者司法書士の事務所)○○○○
      司法書士 ○○ ○○ (司法書士の電子署名)
      連絡先の電話番号
添付情報  登記原因証明情報(特例・送付)  登記済証(特例・送付)  印鑑証明情報
      住所証明情報(特例・送付) 代理権限証明情報(特例・送付)評価証明情報(特例・送付)
令和〇年〇月〇日申請 ○○地方法務局○○出張所
課税価格  金 2,000万円
登録免許税 金 40万 円
不動産の表示 (省略)

遺贈の場合の税金

登録免許税

妹○○は、法定相続人ではないので、法定相続人以外の第三者への遺贈の場合、登録免許税の税率は2%です。
事例では、不動産の評価価格が2,000万円。
2,000万円×2%=40万円(登録免許税)
このように、遺贈で受遺者が法定相続人以外の第三者の場合、登録免許税が高額となります。

不動産取得税(不動産を取得することによりかかる都道府県税)

「相続」を原因とする相続登記の場合は、不動産取得税がかかりません。
「遺贈」を原因とする遺贈登記の場合は、不動産取得税の対象となります。
事例の場合、妹○○は、法定相続人ではないので、法定相続人以外の第三者であること、土地のみの取得であるので、不動産取得税がかかります。
事例では、不動産の評価価格が2,000万円。
2,000万円×1/2=1,000万円
1,000万円×3%=30万円(不動産取得税)
このように、遺贈で受遺者が法定相続人以外の第三者の場合で、土地のみの取得の場合、不動産取得税が高額となります。

遺贈登記にかかる費用(当司法書士事務所に依頼するとき)

合計:約535,000円
そのほかに、不動産取得税:300,000円

以上の手続
自筆証書遺言書検認申立てと遺言執行者選任の申立て:2024年東京家庭裁判所で完了
相続登記(遺贈登記):2024年さいたま地方法務局鴻巣出張所で完了

まとめ:自筆証書遺言書で法定相続人以外の第三者に遺贈する場合の相続登記の方法(遺言執行者に司法書士がなるとき)

自筆証書遺言書の場合、家庭裁判所の検認手続が必要です。遺言書に遺言執行者が記載されていない場合は、遺贈登記で、基本的には、法定相続人全員に協力してもらう必要がありますので、遺言執行者選任申立てもする必要があります。

この両方の手続をすることを司法書士(当司法書士事務所)に依頼する場合、司法書士報酬として、6万円ほどかかります。
また、遺言書の内容として、事例の場合、「妹○○」に遺贈する、と記載されていますので、妹が被相続人兄の妹であることを証明する必要があります。この場合、妹の氏名の他、妹の住所の記載があれば問題ありません。

このように、自筆証書遺言書では、相続開始後、速やかに相続登記(遺贈登記)をすることができません。これは、登記所保管制度の自筆証書遺言書でも同じです。
ですので、遺言書を作成するときは、公証役場で作成する公正証書遺言書で作成することを選択した方がよいでしょう。公証人に支払う手数料は、遺言者の財産の総額で計算しますが、財産の総額が5,000万円ほどであれば、5万円ほどで済みます。ですので、費用面と手続面を考えれば、自筆証書遺言書よりも公正証書遺言書を選択した方がよいといえるでしょう。

相続登記や預貯金の相続手続や遺言書、遺言執行者については、当司法書士事務所にご相談ください。

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