法定相続登記後に遺産分割協議(調停)が成立した時の登記の方法

法定相続登記後に遺産分割協議(調停)が成立した時の登記の方法

法定相続登記がされているとき

相続が開始した後、相続人のうちの1人から(共同相続人1人からの相続登記)、あるいは、官公署または第三者の代位(債権者代位による相続登記)によって、法定相続登記がなされる場合があります。
この場合の必要書類は、法定相続分で登記(必要書類)を参考にしてください。相続登記に必要な書類をすべて自分で用意しなければなりません。

法定相続登記とは、法定相続分(民法によって規定された法律上の相続分)で登記した場合のことをいいます。例えば、子2名ABが法定相続人で、この場合の法定相続分は各2分の1であるので、子2名名義で持分として各2分の1で登記することをいいます。
この場合、相続人の一人から申請する場合、自分の法定相続分だけを登記することができません。法定相続人全員の持分を登記する必要があります。(相続登記の大原則)

通常の遺産分割協議が成立して「遺産分割」を登記原因として登記するとき

法定相続登記がなされた後、相続人の間で遺産分割協議が成立して、一部の相続人が、その不動産を取得(相続)することになったときには、持分を失う相続人が登記の義務者となり、最終的に不動産を取得する相続人が登記の権利者となって、共同申請(権利者と義務者が二人で協力して共同で申請)で登記申請します。
この場合の「登記の原因」は「遺産分割」です。(同じ被相続人について「相続」で登記した後、再び「相続」で登記することができません。)

通常の相続登記では、相続によって不動産を取得する相続人の単独申請(自分一人で申請)という方法をとりますので、この場合の「登記の原因」は、「相続」です。
すでに「相続」を登記の原因として登記している場合、その後に遺産分割協議書に基づいて登記する場合は、共同申請という方法となります。
「遺産分割」を登記の原因とする場合、他の相続人の持分を取得することになる相続人が単独で申請できません。持分を失うことになる相続人の協力が必要となります。

例えば、令和1年3月1日、法定相続分での登記をした場合(最初の例で相続人子AとB)、次のように登記されます。
「登記の目的」:「所有権移転」
「原因」:〇年〇月〇日「相続
共有者」:持分2分の1 A
      持分2分の1 B

相続人Aが単独で登記申請する場合、登記費用のうち、登録免許税はAとB2名分(相続人全員分)を納めることになります。

次に、令和1年8月1日遺産分割協議が成立して遺産分割協議書(不動産を取得する人をA)に基づいて登記する場合、次のように登記されます。
「登記の目的」:「B持分全部移転」
「原因」:令和1年8月1日「遺産分割
所有者」:持分2分の1 A

相続人Aは、最初に取得した持分2分の1と「遺産分割」によって取得した持分2分の1を合わせて「1」となり、「所有者」と登記されます。
相続人Aが登記を申請することになりますので、登録免許税は「評価価格」の「取得することになる持分」2分の1に0・4%(税率)を乗じた税額で納めることになります。

遺産分割協議書による「遺産分割」で登記する場合の必要書類

この場合、持分を取得する相続人(権利者)と持分を失う相続人(義務者)との共同申請(二人で協力して共同で申請)で行うことになりますので、次の書類が必要となります。
●持分を取得する相続人(権利者)が必要な書類と印鑑
(1)住民票
(2)印鑑(認印で可)
●持分を失う相続人(義務者)が必要な書類と印鑑
(1)遺産分割協議書
(2)権利証(登記識別情報通知
(3)印鑑証明書
(4)実印
(5)固定資産の評価証明書(納税通知書(課税明細書)

持分を失う相続人(義務者)は、権利証(登記識別情報通知)が必要ですが、事例の場合、最初の法定相続分での「相続」登記を「持分を取得する相続人A」が、単独で申請しましたので、Aには登記識別情報通知が発行されていましたが、Bには登記識別情報通知が発行されていませんでした。
このため、Bは登記識別情報通知を持っていないことになりますので、別の手続き(登記識別情報通知がないとき)が必要となります。
①司法書士による本人確認情報の作成、②登記所からの事前通知、③公証人役場での本人証明のうち、いずれかの方法となります。

最初の法定相続分での「相続」登記が、官公署または第三者の代位(債権者代位による相続登記)によってなされた場合、事例のAは、最初の「相続」登記の登記識別情報通知(持分2分の1)を持っていないことになります。2回目の登記である「遺産分割」では登記識別情報通知(持分2分の1)を受け取ることができますが、不動産全体としての権利証(登記識別情報通知)がないことがずっと続くことになります。
2回目の登記識別情報通知があることで安心することができません。
Aが将来、この不動産を売却などする場合に登記識別情報通知が必要なときは、別の手続き(登記識別情報通知がないとき)を行うことになります。

家庭裁判所での遺産分割調停が成立したときの登記の方法

では、法定相続登記した後の遺産分割を家庭裁判所の調停で行い、これが成立したときも共同申請によるのでしょうか。
これは、登記手続きの方法が調停調書に書かれているか、いないかによって異なります。

遺産分割調停調書に「登記義務の履行についての文言」が書かれていないときは、通常の共同申請でします。
すなわち、持分を失う相続人の権利証(登記済権利証や登記識別情報)や印鑑証明書、実印を用意してもらう、というように、持分を失う相続人に登記の協力をしてもらう必要があります。前述の通常の「遺産分割」による共同申請と同じ方法となります。

通常、家庭裁判所で調停をする、ということは、相続人の間で争いがあるのが普通ですので、登記の手続きに協力してもらえることは、難しいと考えるの普通です。

そこで、遺産分割調停が成立しそうなとき、「遺産分割調停(案)」を家庭裁判所に提出します。弁護士が代理人となっている場合、通常、弁護士が「遺産分割調停(案)」を家庭裁判所に提出します。
弁護士を代理人に立てない場合であっても、この「遺産分割調停(案)」を家庭裁判所に提出するようにします。
遺産分割調停(案)には、例えば、「後記不動産について遺産分割によりBの持分をAに移転登記をする」という「登記義務の履行に関する文言」を記載します。

この文言があるときは、登記申請が形式的には共同申請という方法は同じでも、不動産を取得する相続人Aが実質、単独(一人)で登記の申請ができます。

遺産分割調停調書による「遺産分割」で登記する場合の必要書類

●持分を取得する相続人(権利者)が必要な書類と印鑑
(1)遺産分割調停調書
(2)住民票
(3)固定資産の評価証明書(権利者が取得できる)(納税通知書(課税明細書)
(4)印鑑(認印で可)
●持分を失う相続人(義務者)が必要な書類(なし)
 権利証(登記識別情報通知)、印鑑証明書、実印は不要です。

形式的には共同申請となりますので、登記申請書には、権利者と義務者の表示が必要です。権利者の表示には、「権利者(兼申請人)」と記載します。
なお、登記原因を「遺産分割」による登記ではなく、「相続」による登記の場合は、家庭裁判所での遺産分割調停で登記(必要書類)を参考にしてください。

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