共同相続人1人からの相続登記の方法(法定相続分で遺言書で)

共同相続人1人からの相続登記の方法(法定相続分で遺言書で)

事例A
法定相続人が子3人いて、それぞれの法定相続分が各3分の1の場合
事例B
被相続人の子が3人いて、遺言書で相続人の2人に各2分の1を相続させる旨の記載がある場合

事例A・Bどちらも、相続人の1人から登記申請することができます。
通常は、相続人全員で申請しますが、一部の相続人が申請に協力しない(反対している。その他の理由で。)場合は、ほかの相続人だけで申請することができます。(民法上の保存行為として)

民法(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

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法定相続分で相続人の1人(全員ではない)から登記申請

法定相続人が3人いて、それぞれの法定相続分が各3分の1の場合、相続人の一部(全員ではない)からの申請の場合、相続人全員(3人分)の法定相続分をまとめて申請する必要があります。申請人となる相続人の持分だけを申請することができません。(被相続人の権利を全部移転登記しないといけない「相続登記の大原則」があります。)
したがって、相続人全員(3人分)の登録免許税がかかることになります。
相続登記に必要な書類のうち、被相続人と相続人が用意すべき書類(除籍謄本や戸籍謄本など)もすべて揃えなければなりません。

法定相続人子3人のうち、家庭裁判所の相続放棄の手続をした相続人がいる場合、この相続人を除いて他の相続人(共同相続人)で登記します。法定相続人が子3人いれば、相続放棄をした相続人を除いて、他の相続人2人で登記します。他の相続人の相続分を各2分の1で登記します。
相続放棄した人は、「初めから相続人とはならなかった」とみなされますので、この人に子がいても、この子は相続人となることができません。
登記申請書には、相続放棄した人については、戸籍謄本のほかに家庭裁判所の相続放棄申述受理通知書(または証明書)を添付情報(書面)として登記所に提出します。これは、相続放棄した人が「相続人であったこと」と「相続放棄をしたこと」を証明するために必要です。

相続人の一部(全員ではない)から登記申請の場合、申請人となる相続人には、登記識別情報(通知)(権利証)が発行されますが、申請人とならなかった相続人には、登記識別情報(通知)(権利証)が発行されません。登記の完了後、登記識別情報(通知)の発行を登記所に請求しても絶対に発行されません。

申請人とならなかった相続人には、登記識別情報通知が発行されませんので、その後に、登記識別情報通知が必要な登記(売却・贈与や担保権設定による登記)をする場合には、登記識別情報通知に代わる別の手続をする必要があります。

遺言書により相続人の1人から申請する場合

事例B:遺言書に、被相続人の子3人のうち2人に各2分の1相続させる旨の記載があり、一部の相続人が登記申請に協力しない(反対している。その他の理由で。)ときは、法定相続分での登記と同じで、一部の相続人だけで申請することができます。(民法上の保存行為として)

これも、前述と同じで、申請人となる相続人の持分だけを申請することができず、相続人2人分まとめて申請する必要があります。

遺言書の内容に、一部の相続人が反対している場合、他の相続人もこれに同意(相続人全員が同意)しているときは、遺言書を相続手続に使用しないで、遺産分割(遺産分割協議書を作成)という方法により相続手続を行うことができます。

遺言書の内容に、一部の相続人(不動産を取得できないなどの理由で)が反対している場合、他の相続人(不動産を取得した人のうち1人)が遺言書の内容に従って相続手続をしたいときは、例えば、不動産の相続登記(名義変更)では、前述のように、相続人の一部(不動産を取得した人のうち1人)から登記申請することができます。預貯金などであれば、遺言執行者がいれば遺言執行者が手続を行うことができます。

上記Bの事例(遺言書)で、被相続人の子3人のうち、遺言で不動産を取得できない相続人の遺留分は、3分の1×2分の1で、6分の1が遺留分です。

もっとも、遺留分を侵害している場合であっても、登記の申請をすることができます。
この場合、遺留分を侵害された相続人は、後日、遺留分侵害額請求権を行使して、遺留分を侵害した相続人にすることができます。もっとも、遺留分を侵害された相続人が、遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは、遺留分を侵害された相続人の自由です。

遺言書に基づいて遺言執行者が相続登記(不動産名義変更)を単独で申請できるのか

遺言書に基づいて、遺言執行者が単独で相続登記を申請(「単独申請」)できるかどうかは、遺言書が作成された日付で異なります。この場合の相続登記は、「相続人」名義に「登記の原因」を「相続」で登記する場合です。遺言書に、相続人に「相続させる。」と記載されている必要があります。
登記原因を「遺贈」で登記する場合は、遺言執行者が単独で申請することができません。この申請は、申請人となる「権利者(受遺者)」と、「義務者」となる遺言執行者との「共同申請」という方法になります。遺言書に、「誰々に遺贈する。」と記載されている場合です。

登記申請の方法が「単独申請」と「共同申請」の場合とでは、申請人が異なるだけではなく、登記申請書に添付する書類(登記所に提出書類)が異なります。
登記原因を「相続」とする場合、「相続登記の必要書類」のケース1(遺言書「相続」で登記申請)が必要となります。
登記原因を「遺贈」とする場合、「相続登記の必要書類」のケース5(遺言書「遺贈」で登記申請)必要となります。

令和元年6月30日までに作成された遺言書(相続人に「相続させる。」)

令和元年6月30日までに作成された遺言書では、「不動産を取得した相続人」のみが単独で申請することができます。遺言書に遺言執行者が指定されている場合であっても、遺言書執行者に登記申請権限はありません。

令和元年7月1日以降に作成された遺言書 (相続人に「相続させる。」)

令和元年う7月1日以降に作成された遺言書では、「不動産を取得した相続人」と遺言執行者のどちらかが単独で申請することができます。

不動産を取得した相続人は、遺言書で名義変更登記をしない限り、取得した不動産の所有権全部を確保した、とは言えません。これは、遺言書で登記するまで、自分が取得した所有権全部を第三者に主張することができないからです。ただし、少なくとも、法定相続分に相当する権利を主張することはできます。
例えば、遺言執行者がいる場合、まずは、遺言執行者が単独で登記申請するでしょうが、この遺言執行者がいつまでも登記申請しない場合、不動産を取得した相続人は、前述のとおり、遺言執行者が登記するまで、不動産全部の所有権を確保することができないことになります。
そうしますと、相続人としては、これでは困りますので、自分が単独で申請する必要に迫られます。

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