債権者代位による相続登記

債権者代位による相続登記

債権者代位による登記とは、債権者代位権に基づく登記申請のことで、債権者と債務者との関係において、債権者が自分の債権を保全するために、債務者の有する登記申請の権利を、債権者が債務者に代わって(代位して)、行使する、登記申請することをいいます。

民法(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

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不動産登記の場合の債権者代位登記

不動産登記の場合によくあるのが、次の債権者代位登記の登記名義人の住所変更登記と相続登記(名義変更)とです。

所有者の住所変更登記(登記名義人住所変更登記)

不動産の所有者(登記名義人)の「登記されている住所」と「現在の住所」が相違する場合、住所変更登記をします。この登記を申請する場合、申請人となれるのが登記名義人です。登記名義人でない人が登記できないのが基本です。(住所変更登記の必要性を参考にしてください。)

例えば、銀行が抵当権を設定登記する場合や、売買で売主から買主に所有権を移転登記する場合、抵当権設定登記や所有権移転登記をする前提として、登記名義人の住所が変更している場合、この登記をしなければ、抵当権設定登記や所有権移転登記を申請することができません。

抵当権設定登記や所有権移転登記を申請する場合、これらの登記は、抵当権設定登記であれば、登記名義人と抵当権者との共同申請(この二人が協力して申請)で行い、所有権移転登記であれば、登記名義人と権利者(売買であれば買主)との共同申請(この二人が協力して申請)で行います。

このような場合、通常の共同申請ですので、登記名義人の住所が変更している場合、登記名義人が自分で住所変更登記をすることになります。

これに対して、登記名義人の債権者が「差押、仮差押、参加差押」をしようとする場合、登記名義人との共同申請ということにはならず、債権者が裁判所に申立てることによって裁判所がこれらの登記を登記所に嘱託登記という方法によって、これらの登記がなされることになります。ただし、公的機関(例えば市区町村)がこれらの登記を行う場合は、法律の規定によって公的機関が裁判所を通すことなく、これらの登記を登記所に嘱託することができます。

いずれにしましても、登記名義人の「現在の住所」が「登記上の住所」と相違する場合、債権者が「差押、仮差押、参加差押」をする場合、その前提として、登記名義人の「登記上の住所」から「現在の住所」に変更登記をしなければなりません。

こういう状況の場合、債権者が登記名義人に対して住所変更登記をしてください、と言っても、登記名義人がこれをすることは通常、期待できませんので、債権者が登記名義人に代わって(代位して)、登記名義人の住所変更登記をすることになります。この場合、債権者が申請人となります。

債権者代位によって登記名義人住所変更登記がなされる場合、登記には、次の事項が記載されます。
(1)「原因」:名義人の住所変更の日付
(2)「変更後の事項」:名義人の現在の住所
(3)「代位者」:債権者の住所・氏名
(4)「代位原因」:債権者代位で申請する理由

登記名義人の自分が登記をしたことはないけれども、登記記録を見ると、登記名義人の自分の「住所」が変更されている場合があります。この登記の内容を見ると、「代位原因」や「代位者」が記載されている場合、この住所変更を債権者が申請人となって登記したことが分かります。

相続登記(相続による不動産名義変更登記)

不動産の所有者(登記名義人)が死亡している場合、相続登記(不動産名義変更)をします。この登記を申請する場合、申請人となれるのが登記名義人である被相続人の相続人です。相続人でない人が登記できないのが基本です。(相続登記の必要性を参考にしてください。)

例えば、銀行が抵当権を設定登記する場合や、売買で売主から買主に所有権を移転登記する場合、抵当権設定登記や所有権移転登記をする前提として、登記名義人が死亡している場合、相続人名義に相続登記をしなければ、抵当権設定登記や所有権移転登記を申請することができません。

抵当権設定登記や所有権移転登記を申請する場合、これらの登記は、抵当権設定登記であれば、登記名義人と抵当権者との共同申請(この二人が協力して申請)で行い、所有権移転登記であれば、登記名義人と権利者(売買であれば買主)との共同申請(この二人が協力して申請)で行います。

このような場合、通常の共同申請ですので、登記名義人が死亡している場合、相続人が自分で相続登記をすることになります。

これに対して、登記名義人の債権者が「差押、仮差押、参加差押」をしようとする場合、登記名義人との共同申請ということにはならず、債権者が裁判所に申立てることによって裁判所がこれらの登記を登記所に嘱託登記という方法によって、これらの登記がなされることになります。ただし、公的機関(例えば市区町村)がこれらの登記を行う場合は、法律の規定によって公的機関が裁判所を通すことなく、これらの登記を登記所に嘱託することができます。

いずれにしましても、登記名義人が死亡している場合、債権者が「差押、仮差押、参加差押」をする場合、その前提として、死亡した登記名義人から相続人に名義を変更しなければなりません。

こういう状況の場合、債権者が相続人に対して相続登記をしてください、と言っても、相続人がこれをすることは通常、期待できませんので、債権者が相続人に代わって(代位して)、相続登記をすることになります。 この場合、債権者が申請人となります。

相続登記を債権者代位によって行う方法

相続登記でいえば、登記名義人(被相続人)に相続が開始し、債権者が、自分の債権を保全するために、法定相続人に代わって(代位して)相続登記を申請することをいいます。
この場合の「債務者」には、次の二通りがあります。登記名義人が死亡している場合です。
(1)債務者が登記名義人(「被相続人」)
(2)債務者が「相続人」

登記名義人が死亡している場合、債権者は自分の債権を保全するため「差押・仮差押、参加差押、抵当権設定、所有権移転(売買など)」登記をする前提として、相続人名義とする登記を、債権者が申請人となって申請します。(公的機関の場合は登記嘱託)

相続の場合の債権者は、例えば、一般の債権者では、債務者(被相続人)に対する債権を保全するため、債務者(被相続人)の債務の支払い延滞の場合があります。

公的な機関が債権者の場合は、国、県、市町村が債権者の場合、債務者(被相続人)の税金(国税、固定資産税、市県民税など)の滞納があった場合です。特に、相続の場合は、相続税の滞納があった場合です。

このように、債権者が債権を保全するために、債務者(被相続人)所有の不動産に、抵当権を設定登記する前提として、あるいは、差押登記をする前提として、法定相続人に代わって(代位して)法定相続分で相続登記を申請します。

この法定相続人に代位して相続登記を債権者が申請する場合、相続登記に必要な書類は、債権者がすべて用意して申請します。

前述の債務者が次の二通りの場合では、債権者が 「差押・仮差押、参加差押」を行う場合、債権者の差押えるべき権利が異なります。
(1)債務者が登記名義人(「被相続人」)の場合
  債権者は、法定相続人全員の持分に対して「差押・仮差押、参加差押」ができます。 
  相続税の滞納の場合、国税庁(実際には○○税務署)の抵当権が設定登記されます。
  この場合、法定相続人全員の持分に対して抵当権が設定登記されることになります。
(2)債務者が「相続人」 の場合
  債権者は、債務者である相続人の法定相続分についてのみ「差押・仮差押・参加差押」ができます。
  相続登記は法定相続人全員の法定相続分で登記します。
  債務者である相続人の法定相続分だけを登記することができません。
  この理由は、「相続」を登記原因とする相続登記は、法定相続人の一部の人だけの名義で登記することができないからです。

「担保権実行による競売申立て」を行う前提としての債権者代位による相続登記

債務者である登記名義人と担保権(抵当権・根抵当権など)設定契約を締結していた場合、この担保権設定登記をせず、債務者である登記名義人が死亡し、債務者の相続人が返済を滞らせている場合があります。
この場合、担保権の実行による競売の申立てを地方裁判所にする場合は、不動産の登記名義人が死亡していますので、法定相続人名義に担保権者が代位で名義変更登記をする必要があります。
担保権を有する債権者は、法定相続人に代位して(代わって)、法定相続人全員名義に法定相続分で登記することができます。

手続の順番は、次のとおりです。

  1. まず、相続登記(不動産名義変更)に必要な被相続人・法定相続人全員の戸籍証明書一式(戸籍謄本・除籍謄本・住民票除票・住民票など)を取得します。
  2. 地方裁判所に相続証明書一式と競売申立に必要な書類一式を提出し、競売申立をします。
  3. 地方裁判所から「競売申立受理証明書」を取得します。
  4. 競売申立受理証明書は相続登記申請の「代位原因証明情報」となります。
  5. 裁判所から相続証明書一式と固定資産評価証明書を一旦、返却してもらいます。
  6. 相続登記の代位登記をします。
  7. 裁判所に、相続証明書一式と固定資産評価証明書と相続登記完了後の登記事項証明書を提出します。
  8. 裁判所の嘱託で競売による差押の登記がなされます。

(平成27年、宮崎地方裁判所、宮崎地方法務局延岡支局で登記完了)

債権者代位による相続登記完了後の登記識別情報(権利証)は

通常、相続人が相続登記を申請し、その登記が完了しますと、登記所は、登記名義人となった相続人に対して、登記識別情報通知(権利証)を発行します。
ですが、債権者の代位による相続登記があったときは、相続人である登記名義人のために登記識別情報通知(権利証)が発行されません。
ですので、相続人にとっては、自分名義に登記はされているけれども、その後、登記識別情報通知(権利証)を持っていない状態が続きます。

債権者の代位による法定相続登記後に、法定相続人の間で、遺産分割が成立して、その登記を申請し、完了した場合、登記所は、権利証(登記識別情報通知)を発行しますが、この権利証(登記識別情報通知)は、遺産分割による登記で発行された登記識別情報通知であって、不動産の一部の権利証(登記識別情報通知)にしかすぎず、不動産全体の権利証(登記識別情報通知)とはなりません。
ですので、相変わらず、相続人にとっては、権利証(登記識別情報通知)を持っていない状態が続きます。

こういう状態で、その後に、売却や銀行の担保権設定をするときは、別の手続きである登記所からの事前通知、公証人役場での本人確認あるいは司法書士による本人確認情報の作成という方法により補完することになります。登記識別情報については、こちらを参考にしてください。

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