相続登記の申請に必要な書類の有効期限

相続登記の申請に必要な書類の有効期限

相続登記に必要な書類の有効期限というのは、相続登記の添付書面のうち「登記原因証明情報(相続証明書)」としての書類の有効期限です。
これは、相続登記に限ってのことです。預貯金などの手続では、これと異なります。例えば、金融機関では、印鑑証明書の有効期限は、通常、6か月です。
また、「登記原因証明情報(相続証明書)」としての有効期限の問題であるので、これ以外の添付書面については、例えば、代理権限証明情報や評価証明情報については、これと異なります。

被相続人の除籍謄本など戸籍の証明書、相続人の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書の有効期限

  • 被相続人の除籍謄本など戸籍証明書
    ➡ 有効期限なし
     通常、最初に被相続人の死亡時の除籍謄本(配偶者が生存していれば戸籍謄本)を取得した後、被相続人の死亡時から遡って出生までの除籍謄本など戸籍証明書を取得します。
     この場合、被相続人の死亡時以外の除籍謄本など戸籍証明書は、被相続人の死亡前に取得したものがあれば、これらを使用できます。
     例えば、父親の相続登記のときに使用した除籍謄本などの戸籍の証明書を、次に亡くなった母親の相続登記の際にも使用することができます。
     これを使用できる理由は、除籍されたものや改製された戸籍証明書に記載された内容は、基本的に(訂正事項がない限り)変わりようがないからです。例えば、昭和60年に取得したものと令和3年に取得したものとで、除籍謄本の記載内容が同じだからです。
  • 被相続人の住民票の「除票」(または「除かれた戸籍の附票」)
    ➡ 有効期限なし
     除票には、被相続人の「本籍」の記載が必要です。
  • 相続人の戸籍謄本
    ➡ 有効期限なし
     相続人の戸籍謄本は、被相続人の死亡後に取得します。死亡前に取得した戸籍謄本は使用できません。なぜなら、被相続人の死亡後に相続人が生存していることを証明する必要があるからです。
     被相続人の死亡前に取得した相続人の戸籍謄本では、被相続人の死亡前に相続人が生存していたことを証明できても、死亡後に生存していることを証明できないからです。
     これは、相続人の印鑑証明書を被相続人の死亡後に取得した場合であっても同じです。なぜなら、被相続人と相続人との関係は戸籍証明書で証明する必要があるからです。
  • 相続人の住民票
    ➡ 有効期限なし
     実際に不動産の名義人となる相続人のものが必要です。
     ただし、相続登記と一緒に「法定相続情報一覧図の写し」の証明書を取得する場合で、相続人全員の「住所」の記載を証明してもらう場合は、相続人全員の住民票が必要です。
  • 相続人の印鑑証明書
    ➡ 有効期限なし
     遺産分割協議書を作成した場合、相続人全員の印鑑証明書が必要です。これは、被相続人の死亡前に取得したものでも使用できます。
     また、不動産の名義人となる相続人は、遺産分割協議書には印鑑証明書を添付する必要がありません。それでも通常は、印鑑証明書を付けています。

遺産分割協議書には、相続人全員の印鑑証明書を付けるのが原則です。遺産分割協議書には印鑑証明書と同じ印鑑(実印)を押印します。たまに、この印鑑(実印)を別の印鑑で押印されている場合があります。よく確認しましょう。
もし、不動産の名義人となる相続人の押印された印鑑が、印鑑証明書のそれと異なる場合、押印し直すことなく、登記申請できます。不動産の登記名義人となる相続人は、遺産分割協議書に印鑑証明書を付けなくてもよいことになっているからです。
ただし、遺産分割協議書に預貯金など不動産以外の遺産について記載されている場合、これで預貯金の相続手続を行うときは、実印で押し直してもらう必要があります。

固定資産税の評価証明書の有効期限

これは、登録免許税を計算するために固定資産税評価証明書が必要です。登記所に提出します。
「評価証明書」は、各市区町村役場で、そのタイトルが異なります。例えば、横浜市(区役所)では「固定資産税課税台帳登録事項証明書」です。この証明書は、各役場の固定資産税課証明書係で取得します。(ただし、東京23区は東京都税事務所)各役場の固定資産税課では「評価証明書」という言い方で通用します。

この評価証明書の有効期限はありませんが、令和4年3月までに申請するときは、例えば、令和4年3月中までに申請するときは、令和3年度の評価証明書が必要です。令和3年4月1日に取得したものを使用できます。
令和4年4月1日以降に申請するときは、令和4年度の評価証明書で、令和4年4月1日以降に発行されたものが必要です。

令和3年4月1日から令和4年3月31日までに登記申請する場合、令和3年4月1日から令和4年3月31日までに発行された「令和3年度」の評価証明書が必要です。

もっとも、最近では、「固定資産税(都市計画税)の納税通知書(課税明細書)全ページ」を使用することが多くなりましたので、これを使用すれば、発行された日付まで細かく確認する必要がありません。ただし、登記申請する「年度」を確認する必要があります。例えば、令和4年3月31日までに申請する場合、「令和3年度の納税通知書」が必要です。

代理権限証明情報としての戸籍謄本

被相続人と相続人との相続関係を証明する目的の戸籍謄本には有効期限はありませんが、これとは別の目的で有効期限の定めがある書類があります。

例えば、相続登記を申請する場合で、相続人の中に未成年者がいる場合、不動産の名義人となる未成年者に代わって親権者が法定代理人として登記申請します。
この場合、例えば、申請する母が未成年者の親権者(法定代理人)であることを証明しなければなりません。
これは、「相続」とは関係のないことです。この証明書類(法定代理人を証明する書類)は、親権者と未成年者が記載されている戸籍謄本です。
これは、相続証明書ではなく、登記上、代理権限証明情報といわれるものです。

相続による方法で相続登記を申請する場合、親権者と未成年者が記載されている戸籍謄本は、相続証明書と代理権限証明情報を兼ねることになります。
この場合、結果として、3か月の有効期限が必要となります。

代理権限証明情報は、委任状を除いて、証明書であれば3か月の有効期限が必要になります。
これは条文で規定されています。

不動産登記令では、次のように規定されています。

不動産登記令(添付情報)
第七条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
(代表者の資格を証する情報を記載した書面の期間制限等)
第十七条 第七条第一項第一号ロ又は第二号に掲げる情報を記載した書面であって、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成したものは、作成後三月以内のものでなければならない。

不動産登記令 | e-Gov法令検索

相続登記に必要な相続証明書としての有効期限がない理由

相続登記に必要な「相続証明書としての有効期限」はありますか?有効期限がないならば、その根拠条文はなんですか?

答えは、被相続人の除籍謄本や法定相続人の戸籍謄本など「相続証明書としての有効期限」はありません。有効期限がない理由は、有効期限が必要だという根拠条文がないからです。

まず、相続登記はどこに申請するのでしょうか?
なになに(地方)法務局 なんとか出張所(支局)という登記所といわれている役所です。
この登記所という役所は、国の機関です。民間ではありません。
国に提出する書類は、法律の規定に従って審査されます。
法律の規定がない場合は、その機関の通達に従って審査されます。

ということは、相続登記に必要な相続証明書としての有効期限についても、登記所で審査する登記官は、法律の規定、通達またはその根拠となる規定などに従って審査します。

例えば戸籍謄本や除籍謄本など相続登記に必要な相続証明書としての期限については、何か月以内のものが必要だという規定が、不動産登記法、不動産登記令、その他にありません。
ですから、有効期限がない、ということになります。
こういう証明書の有効期限は何か月です、という規定があれば、その規定に拘束されます。
こういう規定がないので、拘束されない、ということになります。

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