数次相続と遺産分割調停書の記載事項

数次相続と遺産分割調停書の記載事項

相続相談事例
祖父A名義の土地について、家庭裁判所で遺産分割調停をし、調停が成立したので調停調書が作成されました。家庭裁判所から調停調書を受け取りました。
遺産分割調停調書には、相手方に対し代償金を支払うことが記載されているため、相手方に支払う前に、祖父A名義の土地を自分(孫)F名義に変更登記できるか登記所に確認しました。そうしたところ、この遺産分割調停調書だけでは必要事項が記載されていないため登記できないことがわかりました。どうしたらよいでしょうか。

遺産分割調停調書の内容は、被相続人祖父Aの不動産を相談者孫Fが取得する。FはC(父の兄)に代償金として金○○円を支払う。

遺産分割調停調書で相続登記(不動産名義変更)を行う場合、調停調書に被相続人の相続関係や死亡日の住所など必要事項が記載されているのであれば、被相続人の除籍謄本、相続人の戸籍謄本などは登記所に提出する必要がありません。これらの証明書は、調停の際、家庭裁判所に提出し、家庭裁判所が内容を確認しているからです。

遺産分割調停調書で相続登記を申請する場合の必要書類は、次のとおりです。
(1)遺産分割調停調書(正本または謄本)
実際に、不動産を取得する相続人について
(2)住民票
(3)固定資産の評価証明書
これだけで登記申請ができます。
そのためには、遺産分割調停調書に次の記載事項が必要です。
〇 「被相続人」の氏名・生年月日・死亡日・最後の住所・最後の本籍
〇 「相続人のうち死亡した相続人」の氏名・ 生年月日・死亡日・最後の住所・最後の本籍
〇 「相続人」氏名・ 生年月日・住所・本籍・「被相続人・死亡した相続人との関係」
以上の内容は、被相続人の「住民票の除票」・除籍謄本、相続人の戸籍謄本(住民票)で確認できるからです。

この事例のように、数次相続で孫F名義とする登記の場合、死亡した父Dの「住民票の除票」も登記所に提出することになっていますので、遺産分割調停調書には、父Dの最後の住所の記載が必要となります。

そこで、相談者Fの相続の順番は、被相続人である祖父Aが死亡し(第1の相続)、次に相談者の父Dが死亡した(第2の相続)ので、数次相続となり、遺産分割調停を行う場合、子である相談者F(最終的な不動産取得者)も調停の当事者となります。事例では、遺産分割調停の申立てを相談者Fが申立人として行っています。

この事例の場合は、数次相続となり、(亡)父が相続した不動産を相談者Fが相続するということになります。
この場合の登記は、祖父A名義をF名義とする申請1件で登記ができます。
ただし、上記の相続関係図の日付で、「登記の原因」を「平成23年8月1日相続」とすることができません。この記載ですと、祖父Aが死亡した 「平成23年8月1日」にFが直接、相続したことになるからです。Fは、祖父Aの直接の相続人ではないからです。

遺産分割調停で、死亡した父の兄Cが不動産を相続したのであれば、「登記の原因」を「平成23年8月1日相続」とすることができます。兄Cが祖父Aの直接の相続人だからです。この場合、数次相続ではあっても、「第1の相続」の相続人名義とするからです。

事例の場合、Fは、死亡した父Dの不動産を相続したので、「登記の原因」を次のように記載します。
「平成23年8月1日D(父の氏名)相続、平成25年8月1日相続」
この記載の意味は、平成23年8月1日死亡した父Dが相続して、平成25年8月1日Fが相続した、という意味になります。

このこと(相続の経緯)は、遺産分割調停調書には記載されません。通常、家庭裁判所の遺産分割調停調書には、事例の場合のように、「祖父Aの不動産を孫Fが相続した。」と記載されます。

今回、この調停調書には、被相続人の祖A父の死亡日と遺産分割当事者の相続人のみが記載されているだけで、登記申請に必要な「数次相続の父Fの氏名や死亡日が記載されていませんでした。

このため、登記所としては、遺産分割調停調書の記載だけでは、被相続人と調停調書に記載された当事者の氏名だけで、相続関係が正確に判定できないため、調停調書だけでは登記できないということになったわけです。

それでは、なぜ、このような、登記に使えない調停調書が作成されるのでしょうか。裁判所の書記官が、これで登記ができると思っているかどうかは別にし、裁判所の作成書類として間違っていないと思っているからでしょう。実際、間違ってはいませんが、登記のことは想定していないのかもしれません。

また、今回の遺産分割調停では、申立人のFと相手方双方が弁護士を立てていなかったことにより、遺産分割調停案を書面として家庭裁判所の調停委員に提出していなかったことから、調停委員も登記のことまで想定していなかったと思われます。

遺産分割調停で弁護士を代理人とした場合、調停が成立しそうな状態になった場合は、通常、弁護士が遺産分割調停案を家庭裁判所(調停委員)に提出します。

そこで、家庭裁判所で数次相続の父の氏名や死亡日など被相続人、相続人の必要な事項を記載した更正決定書を出してもらいました。これで登記が完了しました。
なお、遺産分割調停調書には、相手方に対し代償金を支払うことが記載されていますが、これは、相手方に代償金を支払う前であっても登記することができました。

遺産分割調停で、死亡した父の兄Cが不動産を相続したのであれば、家庭裁判所の更正決定書がなくても、「登記の原因」を「平成23年8月1日相続」とし、兄C名義とする相続登記ができます。兄Cが祖父Aの直接の相続人だからです。兄C名義とする場合は、数次相続ではあっても、「第1の相続」の相続人名義とするからです。

まとめ

  1. 遺産分割調停調書で登記する場合、これで登記ができるかどうかを確認します。
    特に、数次相続で「第2の相続」の相続人が不動産を相続する場合は気を付けた方がよいでしょう。
  2. 確認する事項は、次の記載があるかどうかです。
    〇 「被相続人」の氏名・生年月日・死亡日・最後の住所・最後の本籍
    〇 「相続人のうち死亡した相続人」の氏名・ 生年月日・死亡日・最後の住所・最後の本籍
    〇 「相続人」氏名・ 生年月日・住所・本籍・「被相続人・死亡した相続人との関係」
  3. 遺産分割調停調書に登記に必要な事項が記載されていない場合、家庭裁判所に「更正決定書」を出してもらいます。

「相続登記相談事例など」に戻る

tel:045-222-8559 お問合わせ・ご相談・お見積り依頼フォーム