被相続人が外国人(ニュージーランド人):遺言書で相続登記の方法

被相続人が外国人(ニュージーランド人):遺言書で相続登記の方法

日本にある不動産の名義変更(相続登記)や預金の手続を行う場合、その名義が外国人である場合の手続です。
外国人作成の遺言書で相続登記をする方法は、①外国において、その遺言方式に基づいて遺言書を作成していた場合と②日本において、日本の遺言方式に基づいて遺言書を作成していた場合(在日アメリカ人の事例)があります。

外国(ニュージーランド)において作成された遺言書で相続登記

被相続人がニュージーランド人で、ニュージーランドにおいて作成された遺言書で相続登記を行う場合を説明します。(当事務所で実際に行なった事例です。)

ニュージーランドの遺言書(相続が開始した時の取り扱い)

被相続人がニュージーランド人(元アメリカ人)で、相続人配偶者が日本人の場合、被相続人の外国人(ニュージーランド人)が外国(ニュージーランド)の法律に基づいて遺言書を作成していた場合の相続手続です。

遺言書に書かれた遺産は、日本にある不動産と預金です。これを日本人の配偶者に「相続させる」という内容です。

外国人が外国の法律に基づいて遺言書を作成していた場合、相続が開始すると、ニュージーランドでは、高等裁判所で「プロべート」の手続をします。
プロべートは、日本でいう自筆証書遺言書を家庭裁判所で行う検認手続のようなものです。
プロべートされた遺言書には、高等裁判所の証明印が押され、この原本は高等裁判所に保管されます。(そのように言われています。)

日本の検認手続では、遺言書に検認した旨の認証文を付けて家庭裁判所が原本を返却してくれます。日本では、これを相続手続で使用します。

ニュージーランドでは、「高等裁判所の証明印のある遺言書のコピー」に現地の事務弁護士(ソリシター)がサイン証明をし、これを各種の相続手続に使用します。日本においても、これを相続手続で使用します。

相続登記(不動産名義変更)の方法

不動産の名義変更(相続登記)で必要書類は、次のとおりです。

  • 事務弁護士(ソリシター)のサイン証明の遺言書とこの翻訳文(翻訳する人は誰でも問題ありません。)
  • 被相続人の死亡証明書とこの翻訳文
    被相続人が死亡していることを証明します。
  • 相続人配偶者の戸籍謄本、在留証明書、(サイン拇印証明書)、委任状(司法書士に相続登記を委任)
    配偶者の戸籍謄本にこの外国人と婚姻をしたことが記載されている必要があります。被相続人の配偶者であるので、登記の原因を「相続」で登記できることになります。
    在留証明書とサイン拇印証明書は、ニュージーランドにある日本の大使館(領事館)で取得します。
    在留証明書は、登記する際の住所証明書として必要です。
  • 権利証
    被相続人の「登記上の住所」と「死亡時の住所」を一致させることができませんので。
    登記名義人が被相続人と同一人物であることを証明する必要があります。こちらを参考にしてください。
  • 固定資産の評価証明書(登録免許税を計算)

    今回の遺言書には、相続人配偶者に英文で「give」と記載されていました。
    通常、日本語訳では、登記の原因を「贈与」、遺言書の場合は「遺贈」ということいなりますが、あえて「相続」で登記しました。(平成28年横浜地方法務局相模原支局で登記完了)
    登記の原因が「相続」であれば、相続人の単独で登記申請ができます。この解釈は、登記所で異なるかもしれません。
    「遺贈」で登記しなければならないとなると、権利者が相続人配偶者、義務者が遺言執行者となりますので、遺言執行者からの委任状も必要となります。
    この場合、外国人の遺言執行者からの委任状とこれに外国公証人の認証文、これの翻訳文も必要です。権利証も必要です。

預金の相続手続

銀行など預金の相続手続も、基本的に、不動産の相続登記と同じです。
ただ、この手続は遺言執行者が指定されている場合は遺言執行者が行いますので、不動産の場合と同様に、遺言執行者(外国人)からの委任状が必要です。

金融機関によっては、この外国人の遺言執行者からの委任状にクレームを言うところがあります。
今回、遺言執行者の委任状は、英文と日本語訳を併記し、外国公証人の証明を付けました。
某M銀行では、遺言執行者のサイン(拇印?)証明(サインのみの証明)を付けなさい、と主張してきました。
しかし、委任状には、当然、遺言執行者のサインで書かれており、外国公証人の証明文が付いているので問題ないでしょう、と主張したところ、銀行が折れました。
普通に考えれば、問題がないことは分かるはずであるにもかかわらず。

海外在住の日本人の場合、大使館や領事館で「サイン拇印証明書(本人の署名と拇印の証明)」を取得することがあります。
これは、日本国内で発行される「印鑑証明書」が海外の大使館や領事館では、印鑑登録制度がそもそもないので、それに代わるものとして「サイン拇印証明書」を発行しています。
これは、文章を証明するものではなく、単に「本人の署名と拇印の証明」にすぎません。日本独特かもしれません。

これが、外国で「サインのみの証明」があるのか甚だ疑問です。
外国公証人の証明書は、サインのみの証明書はないものと理解していました。
陳述人の口述や書面(のサイン)に対して証明するものだと理解していました。

日本の公証人役場では、もともと書面がある場合、これに署名捺印した場合は、書類全体として(本人が公証人の面前で署名捺印したことを)証明しています。日本の公証人役場で、サイン拇印証明書のみを発行することがないのと同じことです。

日本において作成された遺言書(公正証書遺言書)で相続登記

被相続人がアメリカ人で、日本において作成された遺言書(公正証書遺言書)で相続登記を行う場合を説明します。(当事務所で実際に行なった事例です。)

公正証書遺言書で相続登記

相続関係は、次のとおりです。不動産の名義は、アメリカ人と日本人配偶者の共有名義です。

  • 被相続人父:アメリカ人
    死亡した場所:アメリカ
    登記上の住所:日本(日本にいたときに不動産を取得)
  • 被相続人母:日本人(配偶者)
    死亡した場所:アメリカ
    登記上の住所:日本(日本にいたときに不動産を取得)
  • 相続人子:アメリカ人
    住所地:日本

被相続人父がアメリカ人で、日本の公証人役場で遺言書を作成し、その後、被相続人のアメリカ人父はアメリカで死亡しました。
被相続人のアメリカ人には日本人の配偶者母がおりますが、この配偶者母も公正証書遺言書を作成後、アメリカで死亡しています。
どちらの遺言書も、子に「相続させる。」と記載されています。この子はアメリカ人です。

相続登記(不動産名義変更)の方法

不動産の名義変更(相続登記)で必要書類は、次のとおりです。

  • 被相続人父母の公正証書遺言書
    子に「相続させる。」と記載されています。
  • 被相続人父母の死亡証明書(アメリカ)と翻訳文
    父母が死亡していることを証明します。
  • 被相続人母の除籍謄本
    母がアメリカ人父と婚姻したことの証明・死亡したことの証明
  • 相続人子アメリカ人の出生証明書・住民票
    相続人子がアメリカ人父と日本人母の子であることの証明
    子はアメリカ人であるので、母の戸籍に子として記載されていませんので、出生証明書が必要です。出生証明書には、父母の氏名が記載されているからです。通常、アメリカ人は出生証明書(原本)を保管しているようです。
    子であるので、登記の原因を「相続」で登記できることになります。
    子は日本に在留しているので、住所証明書として住民票が必要です。
  • 不動産の権利証
    被相続人の「登記上の住所(日本)」と「死亡時の住所(アメリカ)」を一致させることができませんので。
    登記名義人が被相続人と同一人物であることを証明する必要があります。こちらを参考にしてください。
  • 固定資産の評価証明書(登録免許税を計算)

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