遺産分割協議の成立後に相続人が死亡した場合

遺産分割協議の成立後に相続人が死亡した場合

相続が開始して遺産分割協議を行い、協議が成立した後、この協議に参加した相続人が亡くなった場合の相続登記について
【事例】
被相続人がAさん
法定相続人がBさん、Cさん
Cさん死亡後の法定相続人が、配偶者Dさんと子である未成年者Eさんの場合

相続関係図(遺産分割後、相続人の死亡)

被相続人Aさんについて、法定相続人Bさん、Cさんが遺産分割協議をし、Bさんが遺産を相続するという内容の遺産分割協議が成立し、この遺産分割協議書を作成しました。

この遺産分割協議書には、相続人のBさん、Cさんが署名、実印を押印しています。
この遺産分割協議書を作成した後、相続登記をしないままCさんが亡くなりました。
Cさんの法定相続人は、配偶者Dさんと子である未成年者Eさんです。

遺産分割協議書まで作成して、署名・実印を押印した相続人が、相続登記をしないうちに亡くなってしまうこともあるでしょう。
事例では、遺産分割協議書作成後、この相続人が死亡し、10年を経過したときのことです。
通常では、遺産分割協議書を作成して相続登記をしないことは余りありませんが、実際に、こういう事例があります。今後は、令和6年から相続登記の義務化が開始されますので、こういう事例が少なくなると思われます。

遺産分割協議書を作成し直す必要は?

この事例では、すでに遺産分割分割協議が成立していますので、改めて遺産分割協議をやり直す必要がありません。
遺産分割協議が成立しますと、その効力は、被相続人Aさんが亡くなった時点まで遡って効力を生じますので、相続人Bさんが遺産を相続取得することに確定しています。

したがって、すでに権利(所有権など)が確定していますので、改めて遺産分割協議をやり直す必要がありません。

遺産分割協議書に添付する印鑑証明書の期限は?

相続登記(不動産名義変更)については、
遺産分割協議書の作成当時、亡くなったCさんの印鑑証明書があれば、遺産分割協議書を含めこれを使用できます。相続登記の場合、印鑑証明書に有効期限はありません。
この場合、亡くなったCさんの法定相続人である配偶者Dさんと子である未成年者Eさんに、別途、署名、押印は必要ありません。

相続人の印鑑証明書がない場合は?

Cさんの印鑑証明書がない場合は、配偶者Dさんと未成年者Eさんに、別の書面に、署名、実印の押印が必要になります。

これは、遺産分割協議書には、法定相続人全員の印鑑証明書の添付が必要だからです。
すくなくとも、遺産を相続しないCさんの印鑑証明書は必要になります。
ですが、亡くなったCさんの印鑑証明書がない場合は、配偶者Dさんと子である未成年者Eさんに、別の書面に、署名、実印の押印が必要となります。

亡くなった人の印鑑証明書を改めて取得することはできません。ある人が亡くなった場合、役所に死亡届けを提出します。死亡届を提出しますと、死亡した旨が戸籍と住民票に記載されます。住民票は印鑑登録と連動していますので、住民票に死亡が記載されますと、印鑑登録も抹消されることになり、結果、印鑑証明書を取得できなくなります。

ここで、問題は
〇 Cさんは亡くなっていますので、改めて遺産分割協議書を作成する必要はあるでしょうか。
 ↓
すでに権利(所有権など)が確定していますので、改めて遺産分割協議をやり直す必要がありません。すでに作成している遺産分割協議書を使用します。

相続人の印鑑証明書がない場合の別の書面には、未成年者が署名・押印をするのか?

亡くなったCさんの印鑑証明書がない(添付できない)場合、これに代わる書類を添付する必要があるでしょうか。
 ↓
配偶者Dさんと子である未成年者Eさんの書面が別途、必要になります。
これは、遺産分割協議の成立によってBさんが相続取得することになったことを証する書面(事実の証明)を作成します。例えば、「別紙、遺産分割協議書に記載のとおり、被相続人Aの遺産分割協議が成立していることを証明する。」というような内容です。

この証明書に、配偶者Dさんの署名と実印の押印、子である未成年者Eさんの代わりに親権者としてDさんの署名と実印の押印をします。
この証明書は、事実を証明するだけですので、親権者Dさんと子である未成年者Eさんとの間で利益相反行為(親権者と未成年者の利益が相反すること)にはなりません。
したがいまして、未成年者Eさんについて特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要もありません。

親権者と未成年者の利益が相反する行為は、例えば、親権者と未成年者で取引を行う場合です。未成年者所有の不動産を親権者が買う場合、また、その反対の場合や、親権者と未成年者との間で、被相続人の遺産分割の協議(話し合い)を行う場合です。これは、未成年者の権利を保護する目的で、未成年者に代わり第三者(未成年者特別代理人)が親権者と取引や協議をすることになります。
相続では、この遺産分割協議書には、未成年者の代わりに未成年者特別代理人が署名・実印を押印し印鑑証明書を付けることになります。
ところが、すでに遺産分割協議が成立(終了)している場合、この遺産分割協議が成立しているということを証明書類(事実の証明書)を作成して、これに亡くなった相続人の配偶者として及び未成年者の親権者として署名・実印を押印して印鑑証明書を付ければよいことになります。

遺産分割協議は成立しているが、遺産分割協議書を作成していなかった場合は?

上記の内容は、遺産分割協議が成立しているけれども、遺産分割協議書を作成しないうちに、Cさんが亡くなった場合でも、同様に考えます。
遺産分割協議は成立していますので、遺産分割協議の結果、Bさんが相続取得したということの証明書(事実の証明)を作成します。その他は、上記と同様です。

実際、相続登記を申請した際、申請先の登記所から、上記の内容とは異なる指摘を受けましたが、結果は、上記の内容で登記が完了しています。
申請先の登記所の最初の考え方は、亡くなったCさんの配偶者Dさんと子である未成年者Eさんとは利益相反行為となるので、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があるという考え方でした。
このように、登記所によっては、思い込みで判断する担当官もおりますので、その根拠を示す「文書」を登記申請書類と一緒に提出した方がよいでしょう。

すでに遺産分割協議が成立(終了)している場合、この遺産分割協議が成立しているということを証明するために、仮に、家庭裁判所に未成年者特別代理人選任の申立てをしても、利益相反行為には当たらないということでこの申立ては却下されると思われます。

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