相続時預貯金口座照会の方法(相続手続をする預貯金口座が分からないとき、どうすればよいのか。)
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
被相続人(故人)名義の預貯金口座を調べたいとき、相続手続をする預貯金口座がどこの金融機関の口座なのかが分からないときは、次の方法で調べることになります。
相続時預貯金口座照会の方法で調べる。
最初に、預貯金の(任意の)金融機関に対し、被相続人名義の口座(金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)・口座番号)について、「相続時預貯金口座照会」を申込みします。
「相続時預貯金口座照会」の結果、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)口座番号」が判明したとき、判明した金融機関に対し、残高証明書などを請求する。
「相続時預貯金口座照会」の結果、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)口座番号」が判明したときは、判明した金融機関に対し(どこの支店でも可かたは郵送)、残高証明書(と、場合によっては入出金明細書)を請求します。
「相続時預貯金口座照会」の結果、判明するのは、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)口座番号」です。口座の残高までは判明しません(照会結果に記載されていません)。

残高証明書とは、ある特定の日付での残高を証明するものです。「ある特定の日付の残高証明書」とは、被相続人死亡日時点での残高証明書(相続税の申告で必要)、あるいは、請求時点での残高を知りたいときは、最後の残高の証明書のことをいいます。
入出金明細書とは、ある期間(いつからいつまでの期間)の入金(額)と出金(額)を、時系列で証明したものです。
入出金明細書は、相続税の申告では、過去7年間のものが必要とされています。
また、相続税の申告をする必要がない場合であっても、入出金明細書を取得すれば、ある期間(いつからいつまでの期間)の入金(額)と出金(額)を、時系列で確認することができます。この場合、故人の死亡時の前後に、出金された金額が多い時(例えば、数十万円単位で)には、誰がどのような目的で出金したのか疑わしいということがいえます。
「相続時預貯金口座照会」の結果、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)口座番号」が判明しないときは、個別の金融機関に対して、残高証明書などを請求する。
相続時預貯金口座照会の方法で調べても、被相続人名義の口座(金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)口座番号)が分からないときは、任意の個別の金融機関に対して、残高証明書(と、場合によっては入出金明細書)を請求します。
相続時預貯金口座照会の具体的な方法
預貯金(預金・貯金)の通帳がないなどの理由で、預貯金口座を調べたいとき、「相続時預貯金口座照会」の方法で、相続人が被相続人名義の預貯金口座を調査することが、原則、可能です。
ただし、100%調査できるとは限りません。なぜなら、被相続人が生前、自分名義の口座がある金融機関に対して、個人番号(マイナンバー)の登録を行っていたことが前提となります。金融機関に対して、個人番号(マイナンバー)の登録を行っていなかった場合は、預貯金口座のいわゆる「紐づけ」ができていないからです。
相続手続をする預貯金口座が分からないとき
相続手続をする預貯金口座が分からないときとは、次のような場合です(例)。
- 相続人が被相続人と同居していないことにより、預貯金の通帳が手元にないため、預貯金口座を確認できないとき。
- 相続人の一人が通帳を独占していることで、ほかの相続人が通帳を見ることができない状態であるとき。
- 海外に居住している相続人が、日本の預貯金口座を調査したいとき。
照会結果の通知は、預金保険機構から日本国内に住所のある相続人などに対して郵送されますので、海外に在住の相続人に対しては、預金保険機構は通知(郵送)しません。この場合、海外に在住する相続人が日本国内に住所のある人を代理人として、金融機関に対して照会の申込みをすることになります。 - 被相続人と同居していた人(相続人ではない人)が通帳を管理していたが、相続人ではない同居人が、遺産相続手続に協力してくれないとき。通帳を提供しないとき。
相続時預貯金口座照会制度
「口座管理法」に基づいて、相続人(包括受遺者を含む)(またはその代理人)が、口座照会を申し込んだ金融機関から「預金保険機構」に対して、被相続人を名義人とする普通の金融機関(一部の金融機関を除く)の預貯金口座(被相続人の個人番号・マイナンバーに紐づくものに限る)の情報を求めることができます。
口座管理法:(正式名称)預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和7年6月1日 施行 )の条文は、後記を参考にしてください。
照会申込みから照会結果の通知までの手順:1か月程度かかる
口座照会の申込み:普通の金融機関(一部の金融機関を除く)に申込む
相続人(相続人の一人から申込みが可能)が、任意の金融機関に対して口座照会を申込みます。取引のない金融機関でも申込みができます。ただし、被相続人の死亡後10年を経過している場合は、照会の対象外(照会結果に反映されない)となります。
必要書類と手数料
- 申込書・「個人情報の第三者提供に係る同意書」:金融機関指定用紙
- 相続人確認資料:被相続人と相続人との相続関係を証明する書類
除籍謄本、戸籍謄本など - 相続人の本人確認書類:(例)運転免許証・マイナンバーカードなどの身分証明書
- その他:金融機関に確認が必要です。
- 手数料:5,060円
申込まれた金融機関から「預金保険機構」に対して通知する
口座照会を申込まれた金融機関が、預金保険機構に対し、口座照会があったことを通知します。
預金保険機構がすべての金融機関に対し通知する
預金保険機構がすべての金融機関に対し、被相続人の個人番号(マイナンバー)を通知します。
通知を受けた各金融機関が、預金保険機構に対し、照会結果を通知する
金融機関は、金融機関に登録されている個人番号の被相続人名義の預貯金口座を管理しているときは、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)・口座番号」を預金保険機構に対し通知します。
金融機関は、通知されたた被相続人名義の個人番号の預貯金口座を管理していないときは、「管理していないこと」を預金保険機構に対し通知します。
通知を受けた各金融機関は、預金保険機構から個人番号が通知されますので、個人番号の登録がない口座については、「管理していないこと」を預金保険機構に対し通知します。金融機関に口座があってもなくても、個人番号の登録のない口座については、「管理していないこと」を預金保険機構に対し通知します。
照会結果の通知:預金保険機構が、照会した相続人などに通知する
最終的に、預金保険機構が、照会した相続人(包括受遺者を含む)(またはその代理人)に対し、照会結果を通知(日本国内に住所のある相続人などに郵送)します。
被相続人の個人番号・マイナンバーに紐づけされた口座について、通知される口座情報は、「金融機関名・支店名・預貯金の種類(普通預金・定期預金など)・口座番号」です。
ただし、照会結果は、口座の存否や相続する口座を証明するものではありません。
口座の残高や個人番号は、通知されません。
口座の残高を調べるには、改めて、個別の金融機関に対して、残高証明書(と、場合によっては入出金明細書)を請求します。
以上の点については、デジタル庁の「よくある質問」を参照してください。
口座管理法:(正式名称)預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和7年6月1日 施行 )管理に関する条文は、次のとおりです。
(目的)
第一条 この法律は、デジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)第二章に定めるデジタル社会(同法第二条に規定するデジタル社会をいう。)の形成についての基本理念にのっとり、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理に関する制度及び災害時又は相続時に預貯金者又はその相続人の求めに応じて預金保険機構が預貯金口座に関する情報を提供する制度を創設する等により、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保に資するとともに、預貯金者の利益の保護を図ることを目的とする。(金融機関に対する申出等)
第三条 預貯金者は、特定の金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について、当該金融機関が個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第二条第五項に規定する個人番号をいう。以下同じ。)を利用して管理することを希望する場合には、主務省令で定めるところにより、当該金融機関に対し、その旨の申出をすることができる。
2 金融機関は、預貯金契約(預貯金の受入れを内容とする契約をいう。)の締結その他主務省令で定める重要な取引を行おうとする場合には、預貯金者(預貯金者になろうとする者を含み、当該金融機関が個人番号を既に保有している者を除く。)に対し、次に掲げる事項を説明した上で、当該金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について当該金融機関が個人番号を利用して管理することを承諾するかどうかを確認しなければならない。
一 災害時又は相続時において、当該預貯金者の個人番号の利用により当該預貯金者又はその相続人が当該預貯金口座に関する情報の提供を受けることが可能となること。
二 当該預貯金者の個人番号は、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二百二十五条第一項の規定による支払に関する調書の提出、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第二十九条第一項の規定による報告、預金保険法第五十五条の二第二項の規定による資料の提出その他の法令の規定に基づく手続において当該預貯金者の預貯金口座を特定するために利用され得るものであること。(預金保険機構に対する申出)
第四条 預貯金者は、全ての又は特定の金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について、当該全ての又は特定の金融機関が個人番号を利用して管理することを希望する場合には、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、その旨の申出をすることができる。この場合において、預金保険機構は、当該預貯金者が特定の金融機関について希望したときは、当該特定の金融機関の名称を確認するものとする。(預金保険機構による個人番号の通知)
第五条 預金保険機構は、第三条第六項の規定による通知又は前条第一項の申出を受けた場合には、当該通知又は申出に係る金融機関に対し、当該預貯金者の本人特定事項を通知しなければならない。
2 前項の規定による通知を受けた金融機関は、当該本人特定事項に係る預貯金者を名義人とする預貯金口座を管理しているかどうかについて、預金保険機構に対し、通知しなければならない。
3 預金保険機構は、前項の金融機関が当該預貯金者を名義人とする預貯金口座を管理しているときは、当該金融機関に対し、当該預貯金者の個人番号を通知しなければならない。(相続時における預貯金口座に関する情報の提供)
第八条 相続人(包括受遺者を含む。以下この条において同じ。)は、主務省令で定めるところにより、預金保険機構に対し、全ての金融機関が管理する当該相続人の被相続人(包括遺贈者を含む。以下この条において同じ。)である預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について、次に掲げる事項の通知を求めることができる。
一 金融機関及びその店舗の名称
二 預貯金の種別及び口座番号
2 預金保険機構は、前項の規定による求めを受けた場合には、主務省令で定める方法により、当該求めをした相続人が本人であること及び当該預貯金者が当該相続人の被相続人であることを確認するため、当該相続人及び預貯金者の本人特定事項その他当該相続人及び預貯金者を特定するために必要な事項として主務省令で定めるもの並びに当該相続人及び預貯金者の身分関係(当該相続人が包括受遺者である場合にあっては、遺言の内容)を確認しなければならない。
3 預金保険機構は、第一項の規定による求めを受けた場合には、全ての金融機関に対し、当該求めをした相続人の被相続人である預貯金者の個人番号を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知を受けた金融機関は、当該個人番号に係る預貯金者を名義人とする預貯金口座を管理しているときは第一項各号に掲げる事項を、当該預貯金口座を管理していないときはその旨を、預金保険機構に対し、通知しなければならない。
5 前項の規定による通知を受けた預金保険機構は、主務省令で定めるところにより、第一項の規定による求めをした相続人に対し、当該通知に係る事項を通知しなければならない。
相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成については、当司法書士事務所にご相談ください。
相続登記や預貯金の相続手続、遺言書の作成について、当司法書士事務所にお気軽にお問い合わせください。
tel:045-222-8559 お問合わせ・ご相談・お見積り依頼フォーム
