法務局の職権による住所氏名変更登記の方法(令和8年4月1日から開始)申出は令和7年4月21日から開始
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
(以下の内容については、2025年2月24日現在の内容です。未だ確定していない内容については、今後、法務局が順次、公表することになっています。)
住所氏名変更登記の義務化の開始(令和8年4月1日から開始)
令和8年4月1日から、不動産の所有者(共有者)は、住所・氏名が変更した日から2年以内に所有権登記名義人住所・氏名変更登記をすることが義務付けられます。(登記をしないときは、5万円以下の過料に処せられる可能性があります。)
次を参考にしてください。
住所変更登記の必要性
氏名変更登記の必要性
法務局の職権による住所氏名変更登記
前記、住所氏名変更登記の義務化の負担軽減のため、令和8年4月1日から、所有者(共有者)がこの変更登記申請をしない場合であっても、所有権登記名義人からの申出があれば、法務局の登記官が「住基ネット情報」を検索し、これに基づいて、法務局が職権で所有権登記名義人住所・氏名変更登記を行うことができようになります。

所有権登記名義人住所(氏名)変更登記の費用のうち、登録免許税(登記申請の際、法務局に納める税金)は、不動産1個につき1,000円です。
例えば、土地・建物2個であれば、登録免許税は2,000円です。
ところが、不動産の個数が多い場合、登録免許税も、それに応じて高くなります(上限規定がありません)。
例えば、敷地権の土地の個数が29個あるマンションの場合、専有部分の建物と合わせて、不動産の個数を30個と数えます。その結果、このマンションの住所(氏名)変更登記を申請する際の登録免許税が30,000円かかることになります。
後述の検索用情報の申出をしておけば、不動産の個数を多く所有・共有する名義人であっても、住所(氏名)変更登記をする必要がなく、その結果、住所(氏名)変更登記の登録免許税を負担することがないことになります。
検索用情報の申出:令和7年4月21日から開始
令和7年4月21日から検索用情報の申出は、次の二通りの方法で行うことができます。
- 登記申請をするときに検索用情報を申出
- すでに所有者(共有者)として登記されている人が検索用情報を申出
(1)登記申請をするときに検索用情報を申出
新たに所有権の保存・移転等の登記申請をするときに、検索用情報を併せて申出ることで、法務局が、この検索用情報を記録管理します。この申出は、令和7年4月21日から行うことができます。
例えば、令和7年4月21日以降、相続登記を申請する際や、売買・贈与など所有権移転(持分移転)登記を申請する際に、検索用情報を申出ることにより、令和8年4月1日から、法務局が職権で住所氏名変更登記をしてくれることになります。
登記申請をするときの申出方法については、後述します。
(2)すでに所有者(共有者)として登記されている人が検索用情報を申出
すでに所有者(共有者)として登記されている場合、検索用情報を申出ることで、法務局が、この検索用情報を記録管理します。(この申出方法については、令和7年4月21日以降、Webブラウザ上で簡易に行うことができるようになる予定です。)
令和7年4月21日以降、検索用情報を申出ることにより、令和8年4月1日から、法務局が職権で住所氏名変更登記をしてくれることになります。
検索用情報の申出をすることができる所有権登記名義人・できない所有権登記名義人
検索用情報の申出をすることができる所有権登記名義人は、次のすべての条件が必要です。
(1)自然人
(2)住基ネットに登録されている人
(3)日本国内に住所がある人(国籍を問わない)(住所移転後も日本国内に住所があること)
検索用情報の申出をすることができない所有権登記名義人
(1)法人
(2)海外居住者
(3)登記の申請人でない場合(代位者などが登記申請をする場合。ただし、後日、申出をすることができる。)
(申出る)検索用情報の内容
検索用情報として、次の事項を申出る必要があります。
- 氏名
- 氏名の振り仮名(公開されない。)
(日本国籍を有しない者にあっては、氏名の表音をローマ字で表示したもの。ただし、通称名など) - 住所
- 生年月日(公開されない。)
- メールアドレス(名義人本人の)(公開されない。)
申出手続が完了した際と、職権による住所(氏名)変更登記を行う際に、送信される。
登記申請をするときの検索用情報の申出方法:検索用情報を登記申請書に記載する方法で申出る。
新たに所有権の保存・移転等の登記申請をするときに、検索用情報を併せて申出ることで、法務局が、この検索用情報を記録管理します。この申出は、令和7年4月21日から行うことができます。
例えば、令和7年4月21日以降、相続登記を申請する際や、売買・贈与など所有権移転(持分移転)登記を申請する際に、検索用情報を申出ることにより、令和8年4月1日から、法務局が職権で住所氏名変更登記をしてくれることになります。
登記申請をするときの検索用情報の申出方法は、次のように、検索用情報を登記申請書に記載する方法で申出ます。
登記申請書(一部省略)
登記の目的 所有権移転
原 因 令和○年○月○日相続
相 続 人 (被相続人 ○○)
(住所) ○○○○
横浜太郎
氏名ふりがな よこはま たろう
生年月日 〇年〇月〇日
メールアドレス yokohamataro@yh.co.jp
添付情報
登記原因証明情報 住所証明情報 検索用情報証明情報
登記官が職権で住所氏名変更登記を行う場合の手順:検索用情報の申出があった後
前述のように、検索用情報の申出があった後、令和8年4月1日以降、次の手順で、法務局の登記官が職権で住所氏名変更登記を行います。
登記官が職権で住所氏名変更登記を行う場合の手順:検索用情報の申出があった後
名義人本人が住所(氏名)変更を役所に届出る。
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住基ネットの住民票情報に登録される。
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法務局の登記官が、検索用情報で住民票情報を定期的に照会して、住所・氏名の変更情報を取得する。
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法務局の登記官が、職権で住所(氏名)変更登記をする前に、所有権登記名義人に対して、意思確認をする。この意思確認は、申出のあったメールアドレス宛てに連絡する。メールアドレス以外の場合は、書面送付で行われる。
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所有権登記名義人が、法務局の登記官に対して、職権による住所(氏名)変更登記を了解する。
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法務局の登記官が、職権により、住所(氏名)変更登記を行う。
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法務局の登記官が、職権により住所(氏名)変更登記を行ったことを、申出のあったメールアドレス宛てに連絡する。
これにより、住所(氏名)変更登記の義務が行われたことになります。過料の対象とならないことになります。
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