祖父名義の土地の相続登記:相続放棄申述(申立て)は、祖父または父のどちらをすべきか。
執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)
祖父名義の土地の相続登記:相続放棄申述(申立て)は、祖父または父のどちらをすべきかについて解説します。
【相続放棄申述申立て相談事例】
(質問)今回、ほかの相続人から祖父名義の土地の相続登記が必要だと言われ、孫の私は、相続登記に関わりたくないと思っています。
祖父の死亡(令和1年死亡)を知ったのは5年前ですが、祖父名義の土地があることが分かったのは1か月前です。父の死亡(令和5年死亡)を知ったのは1年前です。
この場合、相続放棄(申述申立て)は、祖父または父のどちらをすべきかについて教えてください。

相続放棄申述の申立て
民法(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
民法(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行う必要があります。
自己のために相続の開始があったことを「知った時」とは
「知った時」とは、次の事項全部に該当する場合のことをいいます。
● 被相続人の死亡を知った。
● 自分が相続人であることを知った。
● 相続財産(プラスとマイナス)の存在を知った。
祖父の死亡(令和1年死亡)も父の死亡(令和5年死亡)も知らなかった場合:相続放棄申述の申立て
祖父の死亡も父の死亡も知らなかったが、1か月前に、ほかの相続人から、祖父名義の土地があることを知らされたことで、祖父と父の死亡を知った場合、
この場合、祖父(令和1年死亡)と父の死亡(令和1年死亡)を知らなかったので、祖父と父のどちらの相続放棄申述の申立てができます。この場合、次の3つの相続放棄申述の申立てができます。
- 祖父と父両方の相続放棄申述の申立て
→ 祖父と父両方の遺産(プラスとマイナス)を放棄することになる。 - 祖父のみの相続放棄申述の申立て
→ 祖父の遺産(プラスとマイナス)を放棄することになる。
父の遺産(プラスとマイナス)は放棄しない。 - 父のみの相続放棄申述の申立て
→ 父の遺産(プラスとマイナス)を放棄することになるので、結果として、祖父の遺産(プラスとマイナス)を放棄することになる。
祖父の相続人は父で、祖父の遺産を父が相続する。父について相続放棄をすることで、結果として、祖父の遺産を放棄する、相続できないことになる。
祖父の死亡(令和1年死亡)も父の死亡(令和5年死亡)も知っていたが、祖父名義の土地があることを知らなかった場合:相続放棄申述の申立て
この場合の「知った時」とは、
● 被相続人の死亡を知った。
● 自分が相続人であることを知った。
✖ 祖父の相続財産(プラスとマイナス)の存在を知らなかった。
この場合、次の相続放棄申述の申立てができます。
祖父のみの相続放棄申述の申立て
→ 祖父の遺産(プラスとマイナス)を放棄することになる。
父の遺産(プラスとマイナス)は放棄できない。
相続放棄申述の申立て:事例の場合
【時系列】
● 祖父:5年前に死亡(令和1年死亡)。当時、死亡したことを知っていた。
● 父 :1年前に死亡(令和5年死亡)。当時、死亡したことを知っていた。
● 孫 :相続人
✖ しかし、祖父名義の土地の存在:1か月前に初めて知った。
→ 祖父名義の土地の存在を知らなかった。
残り2か月の熟慮期間(3か月)内に相続放棄申述の申立てができる。
相続放棄申述の申立ての方法:事例の場合
(回答)事例の場合、祖父名義の土地の存在を知らなかったので、熟慮期間(3か月)内に相続放棄申述の申立てをすれば、相続放棄が受理される(可能性)ことになります。
この場合、「ほかの相続人から知らされたという手紙など」があれば、これを根拠に、「祖父名義の土地の存在を知らなかった」ということを家庭裁判所に対し説明できることになります。
まとめ:祖父名義の土地の相続登記:相続放棄申述(申立て)は、祖父または父のどちらをすべきか。
相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行う必要があります。
この「知った時」とは、次の事項全部に該当する場合のことをいいます。
● 被相続人の死亡を知った。
● 自分が相続人であることを知った。
● 相続財産(プラスとマイナス)の存在を知った。
祖父の死亡(令和1年死亡)も父の死亡(令和5年死亡)も知っていたが、祖父名義の土地があることを知らなかった場合、祖父名義の土地があることを知らなかったことを、家庭裁判所に対し書面で説明できれば、相続放棄申述の(熟慮期間の3か月以内)申立てが受理されることになります。(2026年 熊本家庭裁判所 天草支部)
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