相続放棄により次の相続権は誰に(誰が相続人となるのか)?

相続放棄により次の相続権は誰に(誰が相続人となるのか)?

相続放棄相談事例
父が亡くなり(第1の相続)、その遺産相続で、相続人の子のうちの1人が相続放棄(家庭裁判所での)をした後、母と他の子が遺産分割により母一人に相続させた場合、次に、母死亡の相続(第2の相続)では、相続放棄した子に相続権がありますか。

被相続人父の時に子が相続放棄した場合、次の母死亡時に、子は被相続人母の相続権があるのか?

結論は、母の相続(第2の相続)では、相続放棄した子に相続権があります。
父の相続で、母を除く子らが全員、相続放棄(家庭裁判所での手続)した場合であっても、母死亡時において、母の遺産相続で子らに相続権があります。

相続放棄は、あくまでも特定の被相続人についてのことですので、相続放棄が別の被相続人に及ぶことはありません。

相続放棄があったことで相続権を取得できる人(相続人)は?

家庭裁判所の手続で相続放棄があった場合、相続権がどういう人に移っていくかを説明します。

被相続人の配偶者が相続放棄をした場合

事例の場合、母は父の配偶者であるので、相続の順位に関係なく相続権があります。
この場合、母が相続放棄をしても、相続人が変わることはありません。

  1. 相続人が母と子である場合:母が相続放棄をすると、子が相続人
  2. 相続人が母と、被相続人の両親である場合:母が相続放棄をすると、両親が相続人
  3. 相続人が母と、被相続人の兄弟姉妹である場合:母が相続放棄をすると、兄弟姉妹が相続人

被相続人の子全員が相続放棄をした場合

子らが全員、相続放棄をしますと、子は第一順位の相続人ですので、第一順位の相続人全員が相続放棄をしますと、第二順位の相続人に相続権が移ります。
この場合、第二順位の相続人は、父の両親です。すなわち、子から見れば、祖父母が第二順位の相続人となります。
すでに、父の前に、祖父母が死亡している場合、曾祖父母がいれば、曾祖父母が相続人となります。
祖父母(曾祖父母)が死亡している場合、相続放棄をすると、第三順位の相続人として父の兄弟姉妹に相続権が移ります。

  1. 相続放棄をする人が、配偶者と子(子がすでに死亡している場合:孫(代襲相続人))である場合
     子(孫)全員が相続放棄をすると、被相続人の両親(祖父母)が相続人
     子が全員相続放棄すると、子の子(孫)に相続権が移らない。孫は相続人とならない。
  2. 相続放棄をする人が、配偶者と被相続人の両親である場合
     両親が相続放棄をすると、被相続人の兄弟姉妹が相続人(兄弟姉妹がすでに死亡している場合、甥姪が相続人(代襲相続人))
  3. 相続放棄をする人が、配偶者と被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに死亡している場合:甥姪(代襲相続人))である場合
     兄弟姉妹が相続放棄をすると、相続人がだれもいないことになる。(相続人不存在となる。)

このように、子らが全員、相続放棄をしてしまいますと、相続権が別の人に移ってしまいますので、不動産や預貯金などプラスの遺産がある場合には、相続放棄を慎重に考えた方がよいでしょう。

この場合、子らのうち一人を除いて相続放棄をし、この子と母で遺産分割協議をし、母一人に相続させれば、第二順位以降の人に相続権が移ることはありません。

家庭裁判所に相続放棄の申述を申立てるには、上のように、第一順位の相続人(子)、第二順位の相続人(親)、第三順位の相続人(兄弟姉妹)の順番に申立てます。それぞれ相続放棄が確定してから申立てます。
第二順位の相続人(親)がすでに死亡している場合、自分が早く相続放棄をしたいからと言って、第一順位の相続人(子) の相続放棄が確定しないうちに、第三順位の相続人(兄弟姉妹)が先に申立てることができません。
この理由は、第一順位の相続人と第二順位の相続人がいないことが確定することで(第一順位の相続人は始めから相続人とならなかったとみなされる。)、 第三順位の相続人(兄弟姉妹) に相続権があることになるからです。
第一順位の相続人に相続権があるうちは、第三順位の相続人には相続権がないので、相続放棄の申立てができないことになります。

被相続人の兄弟姉妹が相続放棄の申述を申立てるための証明

被相続人に子がいない場合

  1. 被相続人の出生から死亡まですべての戸籍証明書(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
    → 子がいなかったことを証明する。
  2. 被相続人の両親の除籍証明書(除籍謄本)
    → 両親が死亡していることを証明する。
  3. 兄弟姉妹の戸籍証明書(戸籍謄本)
    → 自分が被相続人の兄弟姉妹であることを証明する。
  4. 被相続人の住民票の除票(本籍地記載)か戸籍の附票
    → 最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする。

被相続人の子全員が死亡している場合

  1. 被相続人の出生から死亡まですべての戸籍証明書(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
    → 子がいれば、子が誰と誰であることを証明する。
  2. 子の除籍証明書(除籍謄本)
    → 子が全員死亡していることを証明する。
  3. 被相続人の両親の除籍証明書(除籍謄本)
    → 両親が死亡していることを証明する。
  4. 兄弟姉妹の戸籍証明書(戸籍謄本)
    → 自分が被相続人の兄弟姉妹であることを証明する。
  5. 被相続人の住民票の除票(本籍地記載)か戸籍の附票
    → 最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする。

被相続人の子全員が相続放棄をした場合

  1. 被相続人の出生から死亡まですべての戸籍証明書(除籍謄本・改製原戸籍謄本)
    → 子がいれば、子が誰と誰であることを証明する。
  2. 子全員の戸籍証明書(戸籍謄本)
    → 子が被相続人の子であることを証明する。
  3. 子全員の「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄・限定承認の照会書の結果」で子全員が相続放棄したことを証明する。
  4. 被相続人の両親の除籍証明書(除籍謄本)
    → 両親が死亡していれば、死亡していることを証明する。
      両親が相続放棄をした場合、両親の戸籍証明書(戸籍謄本)と、両親二人の「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄・限定承認の照会書の結果」で両親二人が相続放棄したことを証明する。
  5. 兄弟姉妹の戸籍証明書(戸籍謄本)
    → 自分が被相続人の兄弟姉妹であることを証明する。
  6. 被相続人の住民票の除票(本籍地記載)か戸籍の附票
    → 最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする。

被相続人の遺産が、預貯金が少々でマイナスの遺産が多い場合で、相続人が債務を負いたくない場合

この場合、家庭裁判所の手続で「相続放棄」をしようとしますと、まず、被相続人の配偶者と子全員が相続放棄をし、次に被相続人の両親が相続放棄をし、最後に被相続人の兄弟姉妹が相続放棄をすることになり、大変な手続きとなってしまいます。手続に要する時間と、これを司法書士や弁護士に依頼すると費用も大分かかってしまうことになります。

このような場合、被相続人の配偶者と子全員で、相続放棄ではなく限定承認の申述(申立)を家庭裁判所にすれば、被相続人の両親や兄弟姉妹に手続をしてもらわなくても済むことになります。

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