相続人に判断能力がない場合の相続登記の方法(成年後見相談)

相続人に判断能力がない場合の相続登記の方法(成年後見相談)

質問内容
被相続人:父
法定相続人:長男、二男(判断能力がない)、三男
相続不動産(土地)について
 相続土地:現在の名義人(法定相続分で登記)は、(被相続人)父(1/2)、長男(1/6)、二男(判断能力がない)(1/6)、三男(1/6)

遺産分割で父名義を長男名義に相続登記(不動産名義変更)したい。
土地上の建物をローンで増改築したい。
二男には成年後見人が付いていない。
できますか?
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上記の内容で、
遺産分割協議によって相続登記をする場合の問題点と建物をローンで増改築する場合の問題点

  • 現状では、判断能力のない二男を含めての遺産分割協議ができません。
  • 現状では、判断能力のない二男を含めてのローンの借入れに伴う担保権設定登記をすることができません。

上記現在の名義人(被相続人の父、長男、二男、三男)は、母が亡くなったときに、遺産分割ではなく法定相続で登記をしたものと思われます。

現状のまま、判断能力のない二男のまま、相続登記する方法は、法定相続分での相続登記しかできません。この場合、判断能力のない二男は申請人となれませんので、他の相続人が申請人となって、二男の法定相続分を含めて相続登記をすることになります。
そうしますと、名義は、再び二男の名義も含まれてしまいますので、ローンの借入れに伴う担保権設定登記もできません。

成年後見手続

こういう状況においては、相続登記をする前に、次の方法、手続きが必要となります。
成年後見制度を利用して、二男の成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

この成年後見人が判断能力のない二男に代わり、他の法定相続人との間で、遺産分割協議をします。

この場合、判断能力のない二男には、基本的に、法定相続分に相当する遺産を残す必要があります。
したがって、今回の遺産分割協議で二男の相続分を0とすることができません。被相続人父の持分2分の1を長男が取得するという遺産分割の内容は、基本的に家庭裁判所が認めません。
なぜなら、特別の事情もなく、成年被後見人の財産を減少させる行為を成年後見人ができないからです。
この相続では、被相続人父の持分2分の1に対して、二男は、その3分の1、すなわち6分の1の相続権があります。この6分の1の相続財産を減少させ、0とすることは基本的にできません。
上記の事例では、二男が持分6分の1を取得し、長男が6分の2を取得するという内容の遺産分割協議であれば問題ありません。二男は持分を計6分の2持つことになります。

ローンの借入れに伴う担保権設定登記も判断能力のない二男に代わり、成年後見人が手続きを代理します。

成年後見手続の問題点は、

  • 誰を成年後見人にするのか、という点
    近親者(親族)が後見人となることがありますが、最終的には家庭裁判所が決定します。
    通常、不動産など財産がある場合、弁護士や司法書士が成年後見人となる傾向があります。(家庭裁判所指定)したがって、全然知らない第三者が二男の財産を管理することになります。
    また、成年後見人には、二男の財産から毎年、数十万円の報酬(家庭裁判所が算定)が支払われます。
    成年後見人は、二男が死亡するまで成年後見人の業務を行います。そうしますと、二男の死亡まで成年後見人には報酬(家庭裁判所が算定)が支払われます。
    他の相続人が成年後見人となった場合、遺産分割協議やローンの借入れに伴う担保権設定手続きを行うことができませんので、この場合は、成年後見監督人がします。
    成年後見監督人は、家庭裁判所が選任する弁護士や司法書士がなります。成年後見監督人にも二男の財産から報酬(家庭裁判所が算定)が毎年、年数十万円支払われます。
  • 成年後見手続の開始から終了までの期間は、
    最初の書類集めから、家庭裁判所への申立書類の提出まで約1か月から2か月
    家庭裁判所での手続きに約3か月(最終的に、登記所で成年後見登記事項証明書を取得)
    遺産分割協議やローンの借入れに伴う担保権設定登記をすることについての家庭裁判所の許可に約1か月
  • 成年後見手続の費用は、
    実費:約20万円(家庭裁判所への申立手数料、医師の診断書作成、医師の鑑定費用など)
    司法書士報酬:司法書士に家庭裁判所への申立書類の作成、提出を依頼した場合は約10万円
    合計:約30万円かかることになります。

    こうした成年後見手続きが終了した後に、相続登記やローンの借入れ(担保権設定登記)をすることになります。

判断能力のない相続人がいる場合の相続登記の方法

成年後見人を交えた遺産分割協議が成立した場合、相続登記は次の方法で行います。
上記の事例で、二男が持分6分の1を取得し、長男が6分の2を取得するという内容の遺産分割協議が成立した場合を考えてみます。二男は持分を計6分の2持ちます。

相続登記の必要書類と印鑑

  1. 被相続人・相続人の除籍謄本・戸籍謄本・住民票(除票)・印鑑証明書・評価証明書など相続登記に必要な書類
  2. 遺産分割協議書
    成年後見人と相続人(長男・三男)が署名し、実印を押印します。
  3. 成年後見人に関する「成年後見登記事項証明書」(登記所で取得)
  4. 成年後見人の印鑑証明書
  5. 遺産分割協議に関する家庭裁判所の許可書
  6. 登記の申請を司法書士に依頼する場合、司法書士作成の委任状に、成年後見人と長男が署名捺印(認印で可)をします。

判断能力のない相続人がいる場合の担保権設定登記の方法

判断の能力がない二男を含めて相続登記が完了しましたら、ローンの借入れを金融機関に申し込むことになります。
この場合、成年被後見人の二男と成年後見人とは利益相反関係ではありませんが、第三者の債務のために成年被後見人(二男)の財産を担保として提供することになりますので、家庭裁判所に説明します。

担保権設定登記の必要書類と印鑑

  1. 抵当権設定契約証書
    成年後見人と相続人(長男・三男)が署名し、実印を押印します。
  2. 成年後見人に関する「成年後見登記事項証明書」(登記所で取得)
  3. 成年後見人の印鑑証明書
  4. 長男・三男の印鑑証明書
  5. 登記識別情報通知(前回取得した持分と今回取得した持分の両方)
  6. 金融機関指定の委任状に、成年後見人と長男・三男が署名し実印を押印します。

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