相続登記をするとき地目変更または農業委員会への届出が必要ですか

相続登記をしようとするとき、土地の登記記録(登記簿)の「地目」が例えば「畑」と記載されている場合、実際には、家も建っているので「宅地」のときは、地目変更をした方がよいのでしょうか。地目変更をする場合、どういうタイミングで登記した方がよいでしょうか。
「地目」とは、土地が利用されている状況(現況)を表す種類のことです。

相続登記をするとき、地目変更登記または農業委員会への届出が必要ですか?

土地の地目が「農地」の場合の基本

土地が市街化調整区域以外の通常の「市街化区域」にある場合(市街化区域の場合について説明します。)、
土地の登記されている「地目」が「畑」・「田」といった「農地」の場合、通常の取引(売買、贈与など)では、通常どおりの方法で名義変更登記をすることができません。

この場合、名義変更登記をする前に、地目変更登記をして、現状の土地利用の状況(現況)に合わせて「農地以外の地目」に変更してから名義変更します。
あるいは、名義変更登記をする前に、各市区町村役場内にある「農業委員会」に農地法5条の届出をして、「農地法5条受理通知書」を受取り、これを法務局に提出することによって、売買や贈与の名義変更登記をすることができます。

現状の土地利用の状況(現況)が「農地以外」の場合で、売買・贈与などで名義変更をする場合、土地の登記されている「地目」が「畑」・「田」であるときの方法

(1)売買・贈与では「農地以外の地目」に変更してから名義変更します。

家が建っているのであれば、基本的には「宅地」に地目変更登記をすることができます。駐車場として利用しているのであれば、「雑種地」として地目変更登記をすることができます。
この場合、過去に「農地法5条の届出」または「農地法4条の届出」をしていれば、過去の「受理通知書」か、それがなければ、農業委員会にその記録があるので、その届出があったことの証明書を取得して、これを法務局に提出することによって、地目変更登記をすることができます。
地目変更登記を代行することができる国家資格登録者は「土地家屋調査士」です。司法書士は「地目変更登記」を代行することができません。
この地目変更登記をしてから、売買や贈与で名義変更登記(所有権移転登記)をします。

家が建っていても、登記上の地目が「畑」で「宅地」に地目変更していないとき
(2)売買・贈与では「農地以外の地目」に変更してから名義変更ができない場合、農業委員会に届出をしてから名義変更します。

現況が宅地や雑種地として認められない場合、地目変更登記ができません。
この場合は、農業委員会に「農地法5条の届出」をして「農地法5条受理通知書」を受取り、これを法務局に提出することによって、売買や贈与の名義変更登記をすることができます。
この場合、登記上の地目は「畑」・「田」の農地のまま名義変更することができます。
その後に家を建築した場合は、土地が宅地として利用されることになるので、「宅地」に地目変更登記ができます。

土地を購入するとき「農地法5条の届出」をしたが、その後、家を建てなかったなど、土地の利用状況を変更していないとき

相続登記をしようとするとき、登記上の地目が「畑」・「田」の農地の場合

「相続」を登記原因とする場合

「相続」を登記原因とする場合、地目変更登記をしないで名義変更登記をすることができます。農業委員会への届出も必要ありません。この理由は、「相続」を登記原因とする場合は、相続開始により不動産を取得することになるので「取引」には当たらないからです。

「遺贈」を登記原因とする場合

遺言書で遺産を「遺贈する」場合に、前述の(2)の農業委員会に届出をしなければ、名義変更ができないかどうかです。

「包括遺贈」の場合

包括遺贈とは、遺産の全部またはその一部(遺産の割合、例えば、遺産の2分の1)について包括的に遺贈することをいいます。
この場合は、農業委員会に届出をすることなく、名義変更ができます。

農地法施行細則
農地又は採草放牧地の権利移動の制限の例外
第十五条 法第三条第一項第十六号の農林水産省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
五 包括遺贈又は相続人に対する特定遺贈により法第三条第一項の権利が取得される場合

農地法施行規則 | e-Gov法令検索
「特定遺贈」の場合

特定遺贈とは、遺産の全部またはその一部(遺産の割合、例えば、遺産の2分の1)ではなく、特定の遺産(例えば、○○番〇の土地)を○○に遺贈することをいいます。
この場合(相続人以外の第三者に遺贈)は、農業委員会に届出をしなければ、名義変更ができません。
ただし、この場合であっても、相続人に遺贈するのであれば、農業委員会に届出をする必要はありません。

登記上の地目が「畑」・「田」で、現況がこれ以外(宅地など)の場合、固定資産税の課税は、現況の利用状況で課税されます。
例えば、登記上の地目が「畑」・「田」であったとしても、現況が「宅地」であれば、宅地として課税されます。

相続登記をした後、売却する場合、地目変更登記か、農業委員会に届出が必要

前述のように「相続」を登記原因とする場合(相続登記それ自体)は、地目変更登記あるいは農業委員会に届出をする必要がありません。
ところが、相続した土地を売却(売買)する場合は、前述のように地目変更登記をするか、農業委員会に届出をして農地法5条受理通知書を取得する必要があります。

農地法の届出は、横浜市の農業委員会の届出を参照してください。

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