相続登記と共有名義人の住所変更登記の方法・申請の順番

相続登記と共有名義人の住所変更登記の方法・申請の順番

【相続登記相談事例】
被相続人父(持分2分の1)と母(持分2分の1)名義の共有不動産について、父名義の相続登記を母名義とする予定です。母の「登記されている住所(登記上の住所)」と現在の住所が異なります。
この場合、どういう登記が必要ですか。父の相続人は、母と長男・二男・長女です。

遺産分割協議書による相続登記と共有名義人の住所変更登記の方法・申請の順番

相談事例の場合、父名義の相続登記を母名義としますので、遺産分割協議書を作成して、遺産分割協議書による相続登記をします。
この登記と同時に、母の「登記されている住所(登記上の住所)」と現在の住所が異なりますので、母についての登記名義人住所変更登記もします。
登記申請は、次の順番で行います。理由は後述します。
(1)住所変更登記
(2)相続登記

相続登記の手順

まず、遺産分割協議書による相続登記をするために、次の手順で、相続登記に必要な書類を集め、その後、遺産分割協議書を作成し、相続登記の申請書を作成します。

必要書類:遺産分割協議書による相続登記

遺産分割協議書による相続登記に必要な書類は、基本的には次のとおりです。
相続登記の必要書類を参考にしてください。

被相続人父について
(1)父の除籍謄本(本籍地で取得)など 各1通
   父の出生から死亡までのまでの除籍謄本をすべて取得する必要があります。
  → 法定相続人が母であり、子が長男・二男・長女3名だけであることを証明書します。
      
(2)父の「住民票」の除票(本籍・筆頭者の記載)1通(または戸籍の附票) 
  → 父の「登記されている住所(登記上の住所)」と現在の住所が一致していること、あるいは、住所が相違する場合は、住所の経過を証明します。

(3)固定資産税納税通知書・課税明細書原本
  → これがない場合は、評価証明書(または名寄帳)を取得します。
    相続登記の登録免許税を計算します。

(4)土地・建物の権利証原本
  → 不動産を特定するために用意します。
    その他、法務局に提出する場合があります。

法定相続人(母)は 次の書類を用意します。
(1)戸籍謄本 → 父の戸籍謄本に母が記載されていますので不要です。
(2)住民票(本籍・筆頭者の記載)1通(母が名義人となるため必要です。)
  → 「住所変更登記」にも使用するため、本籍・筆頭者の記載も必要です。
(3)印鑑証明書 1通

法定相続人(長男・二男・長女3名)は 次の書類を用意します。
(1)戸籍謄本  1通
(2)印鑑証明書 1通
(住民票:長男・二男・長女3名は、名義人とならないため不要です。)

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、遺産分割協議書の書き方を参考にしてください。
母・長男・二男・長女が署名し、実印で押印します。

相続登記の申請書の作成

相続登記申請書の書き方を参考にしてください。

住所変更登記

母の「登記されている住所(登記上の住所)」と現在の住所が異なりますので、次の理由により住所変更登記をします。

住所変更登記の義務化】
登記名義人の住所(氏名)変更登記は、「令和8年(2026年)4月までの施行日(施行日未定)」から2年以内に登記しない場合は、5万円以下の過料に処せられることとなっております。(施行日以降は、住所(氏名)を変更した日から2年以内)

住所変更登記の手順

住所変更登記をするために、次の手順で、住所変更登記に必要な書類を集め、その後、住所変更登記の申請書を作成します。

必要書類:住所変更登記

相談事例の場合、母の住所変更登記に必要な書類は、基本的には次のとおりです。

(1)住民票(本籍・筆頭者の記載)1通(または戸籍の附票)
   → 相続登記で使用する住民票を「登記原因証明情報」として使用することができます。
その他、住所変更登記に必要な書類は、次を参考にしてください。
住所変更登記の必要書類

住所変更登記申請書の作成

登記名義人住所変更登記申請書の書き方を参考にしてください。

登記申請の順番

次の順番で登記申請書類一式を法務局に提出します。
(1)住所変更登記
(2)相続登記

登記申請書には、次のように記載して、登記申請の順番を明確にします。

1/2   登記申請書(一部省略)
登記の目的 〇番所有権登記名義人住所変更
原   因 〇年〇月〇日住所移転
変更後の事項 共有者母の住所
      (住所)○○○○
2/2   登記申請書(一部省略)
登記の目的 父持分全部移転
原   因 〇年〇月〇日相続
相 続 人 (被相続人 父)
      (住所)○○○○
      持分2分の1
      (母氏名)○○

この順番で登記申請することにより、登記記録(登記簿)には、次のように記載されます。

この順番で登記した場合、母の相続登記では「所有者」と記載されますので、母が所有者であることが明確となります。
もし、次の順番で登記申請しますと、登記記録(登記簿)には、次のように記載されてしまいます。
(1)相続登記
(2)住所変更登記

この順番で登記した場合、母の相続登記では「共有者」と記載されてしまいますが、実質的には「所有者」であるので、問題はありません。

その後は、相続登記の申請書など法務局への提出方法と登記完了書類の受領方法を参考にしてください。

相続登記については、当司法書士事務所にご相談ください。

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