法務局の保管制度を利用した遺言書作成と、推定相続人が海外在住日本人

法務局の保管制度を利用した遺言書作成と、推定相続人が海外在住日本人

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

法務局の保管制度を利用した遺言書作成と、推定相続人が海外在住日本人の場合について解説します。

【遺言書作成・相続登記相談】
私は、法務局の保管制度を利用した遺言書を作成しようと考えています。
私には子が2名おり、長女に遺産の全てを相続させたいと考えております。長男は海外に住んでいます。
現在の財産は、不動産と預貯金です。
この場合、法務局では、どのような手続が必要となるのかを教えてください。

法務局の保管制度を利用した遺言書

法務局の保管制度を利用した遺言書については、自筆証書遺言書保管制度による遺言書の手順を参考にしてください。

法務局(遺言書保管所)に、遺言書など書類の提出

次の書類を法務局(遺言書保管所)に提出します。

(1)自筆による遺言書を作成
(2)法務局に持参する書類を準備する。
   ① 作成、押印した遺言書
   ② 保管申請書:あらかじめ記入しておきます。
     (受遺者等・遺言執行者等の住所・氏名を記載)
   ③ 遺言者の本籍・筆頭者の記載のある住民票
   ④ 本人確認書類として、顔写真のある運転免許証やマイナンバーカードなど
   ⑤ 手数料:3,900円:保管申請前に法務局で3,900円分の収入印紙を購入しておきます。
(3)保管してもらう法務局(登記所)に予約してから出向く。

事例の場合、「遺産を全て相続させる」と記載した長女に対し、自筆証書遺言書を法務局に保管している旨を連絡しておきます。

遺言者の死亡後、遺言書情報証明書を取得する。

事例の場合、「遺産を全て相続させる」と記載された長女は、法務局(遺言書保管所)に対し、遺言書情報証明書の発行を請求します。
「遺言書情報証明書」を取得することで、これで、相続登記や各種相続手続ができることになります。

遺言書情報証明書の発行を請求する際、次の書類を法務局に提出する必要があります。
・遺言者(被相続人)の出生時から死亡時までのすべての(戸籍)除籍謄本
・法定相続人全員の戸籍謄本
・法定相続人全員の住民票(海外在住者の長男の在留証明書)

事例の場合、長男は日本在住ではないので、住民票はなく、海外の日本領事館で、在留証明書を取得、送ってもらう必要があります。
これは、交付請求した相続人(長女)以外の相続人(長男)に対し、法務局は、遺言書を保管している旨を通知する必要があるからです。

長女としては、長男が在留証明書を送ってくれない場合、遺言書情報証明書の発行を請求できないことになります。
その結果、その後の相続登記や各種相続手続を行うことができないことになります。

公正証書による遺言書作成を選択

事例の場合、長男が在留証明書を送ってくれない場合、法務局保管制度を利用した遺言書が役に立たないことも考えられます。
そこで、遺言者の意思を確実に実現させるためには、法務局保管制度を利用した遺言書でなく、公証役場で作成する遺言書を選択します。

公証役場で作成する遺言書のポイント(特にメリット):事例の場合

遺言書作成時

公証役場に提出する書類などは、次のとおりです。

● 公正証書遺言書作成費用:遺産総額:5,000万円でおおよそ50,000円
● 立ち会う証人2名が必要:公証役場で手配してくれる。(1名当たり、おおよそ6,000円)
● 公証役場に提出する書類
  (1)遺言者の
    ① 戸籍謄本(長女が記載されている除籍謄本など)
    ② 印鑑証明書(実印)
  (2)不動産の
    ① 登記情報(または登記事項証明書)
    ② 固定資産税納税通知書・課税明細書
  (3)預貯金の通帳コピー
● 公証役場の手数料は、遺産総額と遺言書の内容で計算する。
● 相続開始後、家庭裁判所の検認手続をする必要がない。

遺言者は、公正証書遺言書作成後、その正本または謄本を長女に渡しておきます。

相続開始後

相続登記や各種相続手続では、次の書類を用意します。

● 公正証書遺言書(正本または謄本
● 被相続人(遺言者)の
   ① 除籍謄本(死亡の記載があるもの)
   ② 住民票除票(本籍・筆頭者が記載)(相続登記で使用)
● 相続人長女
   ① 戸籍謄本
   ② 住民票(相続登記で使用)
   ③ 印鑑証明書(金融機関)
   ④ 実印(金融機関)
   ⑤ 固定資産税納税通知書・課税明細書(相続登記で使用)

「父が子に遺産を相続させる」の場合、父子の関係を証明する戸籍除籍謄本さえあれば、相続登記や各種相続手続をすることができます。
被相続人父の「出生時から死亡時までのすべての(戸籍)除籍謄本」や、相続人全員の戸籍謄本・住民票を用意する必要がありません。

以上の書類と印鑑を用意できれば、長女は、相続開始後、速やかに相続登記や各種相続手続をすることができます。
ただし、長男には、遺留分(1/2×1/2=1/4)がありますので、長女に対し遺留分侵害額請求権を行使することができます。

まとめ:法務局の保管制度を利用した遺言書作成と、推定相続人が海外在住日本人の場合

事例の場合、法務局の保管制度を利用した遺言書では、相続開始後、長女は、海外在住の長男から在留証明書(住所を証明するもの)を送ってもらう必要があります。
この場合、海外在住の長男が長女に対し、在留証明書を送らない場合、長女としては、(相続登記や各種相続手続をするために)遺言書情報証明書の発行を請求することができません。

そこで、事例の場合は、遺言者の意思を確実に実現させるためには、法務局の保管制度を利用した遺言書でなく、公証役場で作成する遺言書を選択した方がよいでしょう。

公正証書遺言書があれば、相続開始後、相続登記や各種相続手続をするために長女が用意する書類は、容易に揃えることができ、これらの手続を速やかに行うことができます。

次を参考にしてください。
外国人と結婚した海外在住日本人が、「登記所保管制度を利用した自筆証書遺言書」を作成したいとき

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遺言書作成・相続登記相談風景(イメージ)
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