相続人が相続放棄したときの自筆証書遺言書(遺贈)の検認申立て方法

相続人が相続放棄したときの自筆証書遺言書(遺贈)の検認申立て方法

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

相続人が相続放棄したときの自筆証書遺言書(遺贈)の検認申立て方法について解説します。

【相続放棄・遺言書検認申立て相談】
弟が生前作成していた自筆遺言書があります。遺言書には、法定相続人ではなく、「甥に財産の全てを遺贈する。」と記載されています。
弟には子一人がいますが、その子は相続放棄をしたため、その子から「相続放棄申述受理通知書」のコピーを受取っています。
弟には配偶者がおりませんでした。法定相続人は、弟の兄と姉です。
この場合、自筆遺言書の家庭裁判所での検認申立て方法を教えてください。
相続関係図:相続放棄と兄弟姉妹
相続関係図:相続放棄と兄弟姉妹

【事実関係】

  • 被相続人:弟
  • 遺言の内容:自筆遺言書で「甥に財産の全てを遺贈する。」と記載されている。
  • 遺言者の配偶者:いない
  • 法定相続人:兄・姉
    遺言者の子一人:家庭裁判所の相続放棄済み(「相続放棄申述受理通知書」のコピーあり)
  • 受遺者:遺言者の甥(兄の子)
  • 遺言執行者:遺言書に記載されていない
  • 遺留分:遺言者の子一人が相続放棄をしたので、法定相続人が兄と姉であるが、兄弟姉妹には遺留分がない。このため、甥は、遺言者の全ての遺産を取得できる。

自筆証書遺言書(遺贈)の検認申立ての手順

遺言書が自筆証書遺言書(遺贈)のため、家庭裁判所で検認手続をする必要があります。
法定相続人以外の者に「遺贈する」と記載されているので、受遺者単独では、遺言を実行できません。このため、遺言執行者選任申立てもする必要があります。

遺贈で遺言執行者の指定がない場合

法定相続人以外の者に「遺贈する」と記載されている(遺言執行者の指定がない)場合、不動産の相続登記では、次のどちらかの方法で申請します。
次を参考にしてください。
「遺贈する」の場合、遺言執行者の選任が必要かどうか
遺贈の登記(遺言書がある場合の遺贈の登記)
● 法定相続人全員の協力が必要。
 不動産の相続登記では、法定相続人全員が義務者となる。
● 遺言執行者選任申立てをする。
 不動産の相続登記では、遺言執行者が義務者となる。

被相続人・法定相続人全員、受遺者の戸籍除籍謄本・戸籍の附票の取得

自筆証書遺言書の検認では、家庭裁判所が遺言者の法定相続人全員と受遺者に通知する(横浜家庭裁判所)ため、次のように被相続人・法定相続人全員、受遺者の戸籍除籍謄本・戸籍の附票(住民票・除票)を取得します。ただし、遺言者の子一人は、相続放棄をしているので、相続人とはならないため、通知されません。

法定相続人の相続順番
法定相続人の相続順番
  1. 遺言者・被相続人
    ① 戸籍の附票除票(本籍・筆頭者記載)
      自筆証書遺言書の検認申立ては、遺言者・被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に提出するため、取得します。
    ② 遺言者の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)
    ③ 遺言者の両親(場合によって祖父母)の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)
      遺言者の兄弟姉妹が相続人となるときは、兄弟姉妹全員を証明する必要があるため、両親(場合によって祖父母)の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)を取得する必要があります。
  2. 法定相続人全員:兄、姉
    ① 戸籍謄本、戸籍の附票(住民票)
      遺言者の子一人の戸籍の附票(住民票)は不要(相続放棄をしているので、相続人とはならないため、通知されません。
  3. 遺言者の子一人
    ① 戸籍謄本
      相続放棄をする前に相続人だったことを証明する必要があります。
  4. 受遺者:甥
    ① 戸籍謄本・戸籍の附票(住民票)
      家庭裁判所は、受遺者にも通知する(横浜家庭裁判所)ので、用意します。
      実際の不動産相続登記では、戸籍謄本(遺言者・被相続人と甥との関係を証明)・戸籍の附票(住民票)が必要となるので、この意味でも取得します。

申立人(事例の場合)

事例の場合、家庭裁判所に自筆証書遺言書の検認申立て、遺言執行者選任の申立て、どちらも、遺言者の兄を申立人とします。
また、遺言執行者(住民票が必要)を遺言者の兄(受遺者甥の父)とします。

家庭裁判所に提出する書類

自筆証書遺言書の検認申立てと遺言執行者選任の申立てを同時にします。同時に提出します。
ただし、遺言執行者選任の申立ての手続は、自筆証書遺言書の検認手続完了後に行われます。

自筆証書遺言書の検認申立て:提出書類(申立書以外はすべてコピー)

(横浜家庭裁判所では、添付書類はコピーで問題ない。2026年)

  1. 申立書
  2. 遺言者・被相続人
    ① 遺言書
    ② 戸籍の附票除票(本籍・筆頭者記載)
    ③ 遺言者の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)
    ④ 遺言者の両親(場合によって祖父母)の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)
  3. 法定相続人全員:兄、姉
    ① 戸籍謄本(戸籍の附票(住民票)
  4. 遺言者の子一人
    ① 戸籍謄本
    ② 相続放棄申述受理通知書
  5. 受遺者:甥
    ① 戸籍謄本
    ② 戸籍の附票(住民票)
遺言執行者選任の申立て:提出書類
  1. 申立書
  2. 遺言者・被相続人
    ① 遺言書
    ② 戸籍の附票除票
    ③ 遺言者の除籍謄本
  3. 申立人・遺言執行者:兄
    ① 戸籍謄本(住民票)
  4. その他、遺言書検認申立書に添付のものを援用する。

まとめ:相続人が相続放棄したときの自筆証書遺言書(遺贈)の検認申立て方法

自筆遺言書は、家庭裁判所で検認手続が必要です。
法定相続人以外の人に遺贈する遺言書に、遺言執行者が指定されていないときは、遺言執行者選任の申立てもします。
遺言者の子全員が相続放棄をすると、(父母・祖父母が死亡しているとき)、遺言者(被相続人)の兄弟姉妹が法定相続人となります。
このため、遺言者の両親(場合によって祖父母)の出生から死亡まで全ての除籍謄本(改製原戸籍謄本)が必要となります。
相続放棄者の「相続放棄申述受理通知書」または「相続放棄申述受理証明書」を家庭裁判所に提出します。
(2026年 横浜家庭裁判所)

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遺言書検認申立て・相続登記相談風景(イメージ)
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