配偶者居住権を選択した方がよい事例

配偶者居住権を選択した方がよい事例

配偶者居住権については、配偶者短期居住権・配偶者居住権を参考にしてください。
配偶者居住権は、被相続人と一緒に暮らしていた(住所が同じ)配偶者に、遺言書で遺贈するか、あるいは、相続人間での遺産分割協議(調停)で取得するか、のどちらかの方法となります。

配偶者居住権の条件

1 取得できる人:配偶者のみ
2 被相続人の所有していた建物であったこと
3 建物の所有者が、被相続人と配偶者名義であったときは、配偶者居住権が成立できる。
4 建物の所有者が、被相続人と配偶者以外の名義であったとき、例えば、被相続人と子供が名義人だったときは、配偶者居住権が成立できない。
5 配偶者が被相続人と同居していたこと

配偶者居住権を選択した方がよい場合は、次のとおりです。

1 相続人が配偶者と子である。
2 相続財産は、自宅(土地・建物)と預貯金数千万円。
3 配偶者には、預貯金など資産(数千万円)がある。
4 配偶者には、年金(厚生年金)からの収入が「ある程度」ある。(これで生活できる。)
5 配偶者の相続開始時に、子に相続税がかかる可能性がある。
6 子は、子の配偶者所有の不動産に居住している。
7 配偶者と子の信頼関係がある。

次に、以上の点について説明します。

配偶者居住権を選択した方がよい場合は、配偶者の相続開始があったときの将来の相続税を考慮する必要がある場合です。

配偶者に、現に預貯金など数千万円あり、年金(厚生年金)収入がある程度ある場合、配偶者は、これらで生活することができます。

例えば、
被相続人の遺産
土地・建物が4,000万円
預貯金が5,000万円。

配偶者の財産
預貯金が5,000万円
年金(厚生年金)収入が月額15万円。

子2名。子らは、その配偶者所有の不動産に居住している。

配偶者と子2名の相続税基礎控除額は4,800万円。(3,000万円+600万円×3)

この事例の場合、相続税がかからないように配偶者がすべて相続してしまうと、この時点では、相続税がかからなくとも、配偶者の相続では、子らに相続税が相当高い税額でかかることになります。
そこで、子らもある程度、相続することになります。

まずは、被相続人と同居していた配偶者の住んでいる「土地・建物」の所有権を誰が取得するのかを検討します。

相続人が配偶者と子であれば、遺産分割協議で、配偶者が配偶者居住権を取得することが比較的スムーズに合意できると思われます。

子が配偶者と同居しているのであれば、子が数人の場合、同居している子が居住用の土地・建物の所有権を取得し、配偶者が配偶者居住権を取得するというのが自然の流れとなります。
このようにすれば、将来、配偶者の相続開始があったときは、相続登記をする必要がないことになります。
この場合(子が被相続人と同居している)、相続税の計算では、子が被相続人と同居していたので、小規模宅地の特例(路線価計算の80%減)を適用できます。このため、相続税額が減額されることになります。

また、子が数人の場合で子が配偶者と同居していないのであれば、子数名が土地・建物の所有権(持分)を均等に取得し、配偶者が配偶者居住権を取得するということも考えられます。
この場合、子数名がすでに不動産を所有している(あるいは、その配偶者所有不動産に居住している)場合は、将来、被相続人所有だった不動産を売却することもあるでしょう。

このように、相続人が配偶者と子である場合、両者の信頼関係が「ある程度」あることが前提となります。

同居していない子らが土地・建物の所有権を取得し、配偶者が配偶者居住権を取得することにすれば、相続税の計算では、配偶者居住権を取得しない場合に比べ、有利になります。

これは、配偶者の相続税計算で、敷地利用権の「小規模宅地の特例(80%減)」の適用があるからです。

これは、次の評価計算で、所有権の相続税と配偶者居住権の相続税を計算することになるからです。

配偶者居住権の評価方法は、
建物の所有権=建物の時価 - 配偶者居住権の評価額
敷地の所有権=土地の時価 - 敷地利用権の評価額

敷地利用権=土地の時価 - 土地の時価 × 配偶者居住権の存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

この計算により、子らが所有権を取得したとしても、評価の全額が相続税の対象とならないことを意味します。

結論

被相続人の遺産が自宅の土地・建物と預貯金が相当額あり、配偶者も預貯金が相当額ある場合で、配偶者は年金からの収入もある場合、子らに自宅の土地・建物を相続させ、配偶者には、配偶者居住権を取得させた方がよいでしょう。
これにより、被相続人の相続税計算と将来の配偶者の相続税計算で有利となるでしょう。

詳しくは、税理士または税務署にご確認ください。
登記の方法は、配偶者居住権の登記の方法を参考にしてください。

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