配偶者居住権の登記の方法

配偶者居住権の登記の方法

遺産分割協議で配偶者に配偶者居住権を取得させることになった場合、相続登記と配偶者居住権の登記について解説します。

遺産分割協議で配偶者居住権を取得させる文言

遺産分割協議書には、配偶者居住権の内容として、次のように記載します。

相続人:○○○○(配偶者)は、相続開始時に居住していた次の建物の配偶者居住権を取得する。配偶者居住権の存続期間は、被相続人:○○○○の死亡日(または、本協議成立の日)から○○○○(配偶者)の死亡日までとする。
特約 第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる。(特約があるときは、特約を記載する。)
(建物の表示)

配偶者居住権の登記原因証明情報を作成

配偶者居住権を登記するため、登記原因証明情報を作成します。これを登記所に提出します。

                登記原因証明情報(例)

1 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 配偶者居住権設定
(2)原   因 令和〇年〇月〇日遺産分割
(3)存続期間  令和〇年〇月〇日から配偶者居住権者の死亡時まで
   特   約 第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる
   (特約があるときは、特約を記載する。)
(4)当事者
権利者 住所○○○○
(甲) 氏名○○○○(配偶者)
義務者 住所○○○○
(乙1)氏名○○○○
義務者 住所○○○○
(乙2)氏名○○○○

(5)不動産の表示 後記記載のとおり

2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)被相続人:○○○○(住所:○○○○)は、令和〇年〇月〇日に死亡し、同日、相続が開始した。
(2)被相続人:○○○○の相続人は、配偶者:○○○○、子:○○○○及び子:○○○○の3名である。
(3)権利者(甲)は、令和〇年〇月〇日、遺産分割協議により、本件建物について、配偶者居住権を取得した。
取得した配偶者居住権の成立日は、被相続人:○○○○の死亡日である令和〇年〇月〇日(または、遺産分割協議が成立した令和〇年〇月〇日)であり、その存続期間は、権利者(甲)の死亡日までである。
特約 第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる。(特約があるときは、特約を記載する。)
(4)権利者(甲)は、被相続人:○○○○が所有していた本件建物に相続開始の時に居住していた。

令和〇年〇月〇日 横浜地方法務局 〇〇出張所 御中

上記の登記原因のとおり相違ありません。

義務者
(住所)○○○○
(氏名)○○○○       ㊞ (実印・認印どちらでも可。通常、実印)

(住所)○○○○
(氏名)○○○○       ㊞ (実印・認印どちらでも可。通常、実印)

不動産の表示

所  在  横浜市○○○○番地〇
家屋番号  ○○番○
種  類  居 宅
構  造  木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建
床 面 積   1階 ○○・○○平方メートル
      2階 ○○・○○平方メートル

登記申請の方法

配偶者居住権を登記する場合、通常、相続登記と一緒に申請します。
1件目を相続登記、2件目を配偶者居住権設定登記として申請します。別々に(日を異にして)申請することもできます。
相続登記申請書の作成方法は、こちらを参考にしてください。

                  登記申請書(例)

登記の目的 配偶者居住権設定
原   因 令和〇年〇月〇日遺産分割
存 続 期 間 令和〇年〇月〇日から配偶者居住権者の死亡時まで
特   約 第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる
(特約があるときは、特約を記載する。)
権 利 者 (住所)○○○○
      (氏名)○○○○     (認印で可)
       登記識別情報の発行を希望します。

義 務 者 (住所)○○○○
      (氏名)○○○○     (実印)
      (住所)○○○○
      (氏名)○○○○     (実印)

添付情報
 登記識別情報  登記原因証明情報  印鑑証明情報  (代理権限証明情報)
 評価証明情報

令和〇年〇月〇日申請 横浜地方法務局 ○○出張所

課税価格  金○○○○円(評価価格)
登録免許税 金○○○○円(評価価格の0・2%

不動産の表示

所  在  横浜市○○○○番地〇
家屋番号  ○○番○
種  類  居 宅
構  造  木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建
床 面 積   1階 ○○・○○平方メートル
      2階 ○○・○○平方メートル

申請書の「遺産分割の日付」は、遺産分割協議が成立した日。」
申請書に押印する「権利者」の印鑑は、認印で可、シャチハタは不可。「義務者」の印鑑は、実印

申請書の「添付情報」について説明
(1)「登記識別情報
 「義務者」についての「登記識別情報通知」。相続登記と一緒に申請する場合は、申請時点で、いまだ「登記識別情報通知」が発行されていないので、申請書には「登記識別情報」と記載するが、実際にはない。相続登記と日を異にして申請する場合は、相続登記の完了後に発行された「登記識別情報通知」を登記所に提出する。

(2)「登記原因証明情報」
 前述した登記識別情報の「原本」を登記所に提出する。原本還付ができない。

(3)「印鑑証明情報」
 「義務者」の印鑑証明書を登記所に提出する。原本還付ができない。
 なお、「権利者」の住民票は必要ない。

(4)「評価証明情報」
 評価証明情報は、固定資産税の評価証明書または固定資産税納税通知書(課税明細書を含む全ページ)原本の返却を希望する場合は、コピーを付けて原本還付手続きが必要。

(5)「代理権限証明情報」
 権利者または義務者を代理人として、または司法書士を代理人として申請する場合に、委任状を作成します。この委任状が代理権限証明情報となります。

「課税価格」は、建物の評価価格で、1,000円未満を切り捨てて記載。
「登録免許税」の税率は、0・2%
。  課税価格(評価価格)×0・002=登録免許税。100円未満を切り捨てて記載(最低1,000円)。

「不動産の表示」は、登記記録(登記簿)に記載されているとおりに記載。

申請書と一緒に綴じる順番

上記の書類を申請書に綴じます。申請書に綴じる順番は次のとおりです。左綴じで2か所ホッチキスで綴じます。申請書を綴じましたら、一字一句間違いがないかどうかを確認します。間違いがあれば、法務局の担当官から訂正を求められます。
(1)申請書(申請書が2枚以上になるときは、紙と紙の間に割印(印鑑を捺す)をする。)
   申請書の余白に登録免許税の「収入印紙」を貼る。申請書とは別の白紙に収入印紙を貼ってもよい。この場合、申請書(紙と紙)との間に割印をする。
(2)委任状(必要な場合)
(3)「義務者」の印鑑証明書(原本還付ができない。)
(4)登記原因証明情報(原本還付ができない。)
(5)固定資産税評価証明書(または固定資産税納税通知書(課税明細書を含む)のコピー(原本還付手続)

これら申請書と一緒に綴じた添付書面とは別に、次の書類を次の順番でクリップで留めます。これらの書類は返却されます。
(1)固定資産税評価証明書(または固定資産税納税通知書(課税明細書を含む)
(2)登記識別情報通知
    先に相続登記を完了させて、その後に配偶者居住権設定登記を申請するとき

配偶者居住権設定登記の委任状

委任状(配偶者居住権設定登記)

令和   年  月  日

                  委任者(委任する人)
                  (住所)                   
                  (氏名)   
                    (押印は、権利者が認印で、義務者が実印で押印
           
私は、下記の者を代理人と定め、後記の登記申請に関する権限および本件登記申請に係る登記識別情報の暗号化、登記識別情報の受領に関する権限を委任する。

     受任者(代理人となる人)
     (住所)
     (氏名)

                    記
令和  年  月  日付登記原因証明情報記載のとおりの配偶者居住権設定登記申請に関する件。

配偶者居住権者設定登記の完了後、法務局から受け取る書類

「登記識別情報の通知を希望しません。」と書かないで、配偶者居住権者設定登記が完了した後、法務局から受け取るものは、通常、次の書類です。
(1)登記識別情報通知:重要書類です。大切に保管します。
   → 【登記の目的】「配偶者居住権設定」と書かれているもの
      配偶者居住権を抹消登記するときなどに使用します。
(2)登記完了証
   → 登記が完了したことだけの意味の書類で、重要書類ではありません。
     登記完了証は、配偶者居住権設定登記に限らず、登記名義人住所変更などすべての登記の完了後に発行されます。

登記完了証を紛失しても問題ありません。登記完了証が「登記識別情報」に代わるものでもありません。

これらの書類を受け取った後、「登記事項証明書」を「証明書発行窓口」で取得します。この登記事項証明書で、新たな名義人となった人が登記されたかどうかを確認します。

「配偶者居住権設定」は、登記記録(登記簿)の乙区欄(所有権以外の権利に関する事項)に記載されます。
この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。

配偶者居住権を選択した方がよい事例を参考にしてください。

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