遺産分割決定書と数次相続

遺産分割決定書と数次相続

平成26年頃まで、遺産分割決定書による相続登記は、実務上、可能でしたが、平成26年3月、東京地方裁判所において、遺産分割決定書による登記を認めないという判決が出ていますので、遺産分割決定書による登記を申請する場合、申請する登記所に確認された方がよいでしょう。
遺産分割協議書が現在生存する相続人2名以上の場合に作成しますが、遺産分割決定書は、数次相続の場合に(第1相続→第2相続)現在生存する相続人一人で遺産分割を決定することをいいます。

遺産分割決定書と数次相続(被相続人父(第1相続)→被相続人母(第2相続)の場合)

事例:数次相続(被相続人父(第1相続)→被相続人母(第2相続)の場合)

不動産名義人の被相続人Aさん(父)に続いて、その配偶者(母)が亡くなり、その子(子)一人が相続人となった場合
被相続人Aさん(父)→(亡)母→相続人子一人
数次相続のこの場合、法定相続によって相続登記する場合は、第一の相続(父)と第二の相続(母)の2件で登記申請するのが原則です。

法定相続で登記申請する場合は、次の内容となります。

  1. 第一の相続登記 
    登記の目的 所有権移転
    原   因 父死亡の日 相続
    相続人(被相続人 父)
    持分2分の1 (亡)母
    持分2分の1  子
  2. 第二の相続登記 
    登記の目的 母持分全部移転
    原   因 母死亡の日 相続
    相続人(被相続人 母)
    持分2分の1  子

これを法定相続によらず、遺産分割という方法で1件で登記申請できないでしょうか?

というのも、事例の場合、相続人の子が二人の場合は、どういう方法をとるでしょうか?
通常、被相続人Aさん(父)→(亡)母→相続人子二人BCさんの場合で、不動産の名義を子の一人Bさんにする場合は、
BCさんの遺産分割協議書1通を作成してBさんの名義とし、1件で相続登記を申請することができます。

この数次相続の事例のように、数次相続であっても、相続の当事者である法定相続人が同一であれば、一通の遺産分割協議書を作成し、1件で相続登記の申請ができます。

相続人である子が一人の場合と二人の場合で、登記申請の方法が異なるのは不公平にも思えます。

そこで、相続人が一人の場合は、遺産分割決定書を作成すれば、法定相続による2件の登記申請ではなく1件で登記申請することができます。
ただし、遺産分割決定書を登記所に提出する場合、この遺産分割決定書には、相続人が実印を押印し印鑑証明書1通の添付が必要となります。

遺産分割決定書で登記申請する場合は、次の内容となります。
 登記の目的 所有権移転
 原   因 父死亡の日 相続
 相続人(被相続人 父)
       子

遺産分割決定書の内容は、次のとおりです。

表題 遺産分割決定書

被相続人・父の遺産につき、B(子)は、父の相続人兼相続人・(亡)母の相続人として下記のとおり分割することを決定した。

被相続人・父
 昭和○年○月○日出生
 昭和○年○月○日死亡
 本籍 横浜市中区元浜町

相続人兼被相続人・母
 昭和○年○月○日出生
 平成○年○月○日死亡
 本籍 横浜市中区元浜町

相続人・B(子)は、次の不動産を相続することとした。
不動産
所  在  横浜市中区元浜町
地  番  1番111
地  目  宅 地
地  積  100・00?

以上、相違ありません。
平成○年○月○日
父相続人兼父相続人・母の相続人

(過去、横浜地方法務局旭出張所、東京法務局中野出張所で登記完了)

遺産分割決定書と数次相続(相続人兼代襲相続人の場合)

事例:数次相続(相続人兼代襲相続人の場合)

不動産名義人の(被相続人)Aさん(父)には、前配偶者Bさんの子Cさんがいます。
Aさんは、その後、前配偶者Bさんの妹Dさんと結婚しました。
Dさんには子がいません。
Dさんの兄弟姉妹は、Bさんを除いてほかにいません。Dさんの兄弟姉妹はBさんだけです。
Aさんが亡くなった後(第1の相続)、Dさんが亡くなりました。(第2の相続)

この場合の相続登記は、どのようにすればよいでしょうか。

この場合、Aさんの死亡による第1の相続で、法定相続人は、Aさんの子Cさんと(亡)Dさんです。
Dさんの死亡による第2の相続で、法定相続人は、Bさんの子Cさんです。(代襲相続人)
この時点で、不動産の名義人Aさんの相続人は、Cさん一人となります。

第1の相続 被相続人Aさん(父)→相続人Cさん(子)とDさん
第2の相続 (亡)Dさん→代襲相続人Cさん(姪)

数次相続のこの場合、法定相続によって相続登記する場合は、第1の相続(A)と第2の相続(D)の2件で登記申請するのが原則です。

法定相続で登記申請する場合は、次の内容となります。

  1. 第1の相続登記 
    登記の目的 所有権移転
    原   因 A死亡の日 相続
    相続人(被相続人 父)
    持分2分の1 (亡)D
    持分2分の1  C(子)
  2. 第2の相続登記 
    登記の目的 D持分全部移転
    原   因 D死亡の日 相続
    相続人(被相続人 D)
    持分2分の1  C(姪)

これを法定相続によらず、遺産分割という方法で1件で登記申請できないでしょうか?
というのも、事例の場合で、AさんとDさんの間に子Eさんがいた場合は、どういう方法をとるでしょうか?
この場合、不動産の名義をCさんとするには、CさんとEさんの遺産分割協議書1通を作成してCさんの名義とし、1件で相続登記を申請することができます。

この数次相続の事例のように、数次相続であっても、1通の遺産分割協議書を作成し、1件で相続登記の申請ができます。

相続人である子が1人の場合と2人の場合で、登記申請の方法が異なるのは不公平にも思えます。

そこで、相続人が1人の場合は、遺産分割決定書を作成すれば、法定相続による2件の登記申請ではなく1件で登記申請することができます。
ただし、遺産分割決定書を登記所に提出する場合、この遺産分割決定書には、相続人が実印を押印し印鑑証明書1通の添付が必要となります。

遺産分割決定書で登記申請する場合は、次の内容となります。
 登記の目的 所有権移転
 原   因 A死亡の日 相続
 相続人(被相続人 A)
       C

遺産分割決定書の内容は、次のとおりです。

表題 遺産分割決定書

被相続人A(父)の遺産につき、C(子)は、父の相続人兼相続人(亡)Dの代襲相続人として下記のとおり分割することを決定した。

被相続人A(父)
 昭和○年○月○日出生
 昭和○年○月○日死亡
 本籍 横浜市中区元浜町

相続人兼被相続人D
 昭和○年○月○日出生
 平成○年○月○日死亡
 本籍 横浜市中区元浜町

相続人代襲相続人C(子)は、次の不動産を相続することとした。
不動産
所  在  横浜市中区元浜町
地  番  1番111
地  目  宅 地
地  積  100・00平方メートル

以上、相違ありません。
平成○年○月○日
A(父)相続人兼A(父)相続人Dの代襲相続人

(平成26年、横浜地方法務局湘南支局で登記完了)
(平成26年、佐賀地方法務局鳥栖出張所で登記完了)

数次相続を遺産分割協議書で行うことができる事例

上記事例で、AさんとDさんの間に子がなく、結婚前のDさんに子Fがいた場合、CさんとFさんとの遺産分割協議で、名義人(被相続人)Aさんの不動産をCさんが相続取得するとし、Cさん名義に1件で登記申請することができます。

ところが、名義人(被相続人)Aさんの不動産をFさんが相続取得する場合は、一度、(亡)Dさんが相続取得するという内容の遺産分割協議書をCさんとFさんで作成します。

Fさんは、次の内容で1件で登記申請します。
 登記の目的 所有権移転
 原   因 A死亡の日・D(氏名)相続、D死亡の日相続
 相続人(被相続人 A)
       F

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