債務(ローン)の相続

債務(ローン)の相続

相続人は、基本的に被相続人の財産全部を相続します。相続の対象にならない一身専属権などを除いてすべて相続します。
通常の財産では、不動産や預貯金などの積極財産、借金などの消極財産の両方を相続します。

住宅ローンの相続債務の場合は、通常、団体生命保険金などで返済することになります。
住宅ローンの場合であっても、団体生命保険料を支払っていなかった場合には、債務を引き継ぎ、債務を相続人が返済しなければなりません。

住宅ローン以外の債務については、通常、保険金で自動的に返済、ということがありませんので、相続人は、被相続人の債務を相続し返済しなければなりません。
これは、相続人が被相続人の債務について保証人となっていなかった場合でも、債務を相続します。

住宅ローンの場合は、ローンの債務者が亡くなったとき、残された家族が住む場所を失うということを避けるのが政策的な目的です。これに対して、ほかの債務は、このようなことがないのが普通です。
通常の生命保険に加入していたのであれば、この保険金で債務を返済することができます。

団体信用生命保険の保険金で返済して、不動産を相続した場合、被相続人にほかの債務があったとき、相続人はその債務を相続し返済しなければなりません。この場合のように、不動産や預貯金を相続したときは、相続放棄(家庭裁判所の手続き)によって、ほかの債務の返済を免れることはできません。相続放棄は、すべての財産を放棄することになるからです。

相続債務が住宅ローンの場合

相続が開始したとき、住宅ローンについては、通常、被相続人が団体信用生命保険に加入していたのであれば、団体信用生命保険からの保険金で住宅ローンを返済することになります。
この団体信用生命保険の保険料は、年間2万円くらいです。もし、この団体信用生命保険の保険料を返済途中で支払っていなかったときは、相続人が住宅ローン全額を返済しなければなりません。

団体信用生命保険からの保険金で住宅ローンを返済した後、不動産に登記された抵当権を抹消登記する手続きをします。
この抵当権の抹消登記は、通常、不動産の相続登記(不動産名義変更)と同時期にします。
相続登記と同時に抹消登記できるか、あるいは、相続登記をしてから抹消登記をするかは、住宅ローンを取り扱う金融機関によって異なります。金融機関によっては、先に相続登記をして名義が変わってからでないと抵当権抹消登記書類を渡してくれない金融機関もあります。
生命保険金による住宅ローンの返済で抵当権を抹消登記する場合は、名義人が死亡したときの抵当権抹消登記(方法)を参考にしてください。

この下に、法務局の証明文が書かれたものが「登記事項証明書」です。通常、1通当たり600円。

相続債務が銀行など金融機関からの借入金の場合

銀行など金融機関からの借入金の場合は、通常、その借入額が高額で、一括返済ではなく、分割返済であることが多いため、単に、遺産分割協議書で相続人のうちのだれが、債務の全部を引き継ぐかを決めたとしても、それで効力が生じるわけではありません。
銀行など金融機関からの借入金全額を相続人のうちの一人が引き継ぐには、債権者である銀行の同意、承諾が必要となります。

このように、被相続人の債務が高額で、銀行など金融機関からの借入れの場合、遺産分割協議書を作成する前に、相続人のうちのだれが債務を相続するかについて、銀行と打合せ、銀行の同意を得ておく必要があります。銀行の了解を得たうえで、遺産分割協議書を作成します。

銀行など金融機関の借入金債務の基本的な相続手続

上記のように被相続人の銀行からの借入金債務がある場合の手続は、次の手順で行います。

  1. 相続人の間で、だれが債務を引き継ぐかをあらかじめ話し合います。
  2. 銀行と債務の引き継ぎについて、交渉し、同意を得ておきます。
  3. 遺産分割協議書の作成
  4. 遺産分割協議書に法定相続人が署名・実印を押印します。
  5. 銀行と債務の引き継ぎについての変更契約(債務引受契約)を締結します。
  6. 各種の相続手続をします。
  7. 不動産について相続登記をします。(通常、司法書士が代理申請します。)
     この費用については相続登記費用を参考にしてください。
  8. 抵当権など債務者の変更登記をします。(通常、銀行指定の司法書士が代理申請します。)
     銀行からの借入金の担保として相続した不動産に、抵当権など担保権の登記がされている場合です。
     この費用については、通常、司法書士報酬:約2万円、実費:約5,000円(登録免許税:物件1個につき1,000円)かかります。

生命保険金で、銀行など金融機関からの借入金相続債務の返済(注意点)

生命保険金で、相続債務を返済する場合、銀行など金融機関の同意(債務引受契約)を得たうえで相続債務全部を引き継ぐ相続人と生命保険金の受取人(生命保険契約上の受取人)が同一の場合は、特に税法上問題ありません。

ですが、銀行など金融機関の同意を得る得ないにかかわらず、相続債務全部を引き継ぐ相続人と生命保険金の受取人(生命保険契約上の受取人)が異なる場合は、注意する必要があります。

例えば、相続債務全部を引き継ぐ相続人が相続人Aさんで、生命保険金の受取人(生命保険契約上の受取人)が相続人Bさんの場合、Bさんの受取る生命保険金で、相続人Aさんの相続債務を金融機関に返済すると税法上、相続人Aさんには贈与税がかかる可能性があります。

また、例えば、当初の債務者が被相続人と、連帯債務者の相続人Aさんの場合、相続債務全部を引き継ぐ相続人を相続人Bさんとし、生命保険金の受取人(生命保険契約上の受取人)が相続人Bさんの場合、Bさんの受取る生命保険金で、相続債務を金融機関に返済すると連帯債務者の相続人Aさんには、税法上、贈与税がかかる場合があります。

この場合、相続債務全部を引き継ぐ相続人を相続人Bさんとするには、必ず事前に金融機関の同意(債務引受契約)を得ておく必要があります。
金融機関の同意(債務引受契約)を得ないで、結果として、相続債務全部を引き継ぐ相続人を相続人Bさんとすることができないまま、Bさんの受取る生命保険金で返済した場合、連帯債務者の相続人Aさんには贈与税がかかる可能性があります。
税金については、税理士または税務署でご確認ください。

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