被相続人の兄弟姉妹の相続放棄

被相続人の兄弟姉妹の相続放棄

(日付はわかりやすい日付で説明します。)
事例:東京の税務署から、亡くなった兄の税金が未納となっています、あなた妹(仮に小田原在住)が相続人となるので、亡くなった兄の税金を払ってください、と令和1年3月1日、文書で郵送通知されました。また、文書には、相続放棄するのであれば、相続放棄の証明書を提出するようにとも記載されています。

私妹は、兄とは長年付き合いがなく疎遠であったため、兄が亡くなったことも知りませんでした。また、兄に妻や子供がいたかどうかも不明です。
私ではどうしたらいいか分からなかったので、司法書士に5月1日相談に行きました。(この時点で2か月経過。)

ここでのポイントは、次のとおりです。
1)税務署からの通知書には、兄の住所・氏名のみ記載されているだけで、滞納した税金がいくらあるのか、兄の死亡日、妻や子供がいれば、相続放棄した日の記載がありません。そもそも、亡くなった兄に、妻は別としても、子供がいたのかどうかも不明です。
2)相続放棄するにも、亡くなった兄の死亡日から、家庭裁判所に相続放棄の申し立て期限の3か月をすでに経過している、と思われます。

ということで、
1)については、
亡くなった兄の相続関係:妻と子供がまったく分からないので、戸籍関係書類を取得して、兄の相続関係:妻と子供を調べる必要があります。
子供がいるのであれば、いつ相続放棄したのかも調べる必要があります。
また、滞納した税金がいくらあるのかも知る必要があります。相続放棄の申立書には、債務の額を記載するので。これは税務署が教えてくれます。滞納税額は、1,000万円でした。

2)の相続放棄の申立期限の3か月については、兄弟姉妹の場合、基本的に、自分が相続人であることを知ったときから3か月です。
司法書士に相談に行ったときには、3か月の期限の1か月前(2か月経過)です。
3月1日に、税務署からの通知で亡くなった兄の債務の存在を知り、司法書士に相談に行った日が5月1日であるので、6月1日までには、相続放棄の申し立てをしないといけないと、普通は考えるからです。

そこでまず、
妻と子供が、家庭裁判所に相続放棄の申し立てをするときに、必要な書類、戸籍関係書類はそれほど多くないので、難しくありません。

妻と子供が用意する書類は、次のとおりです。
1)被相続人の除籍謄本
2)被相続人の本籍地・記載の住民票の除票
3)申し立てをする妻と子供の戸籍謄本
4)夫死亡の日から3か月を経過しているときは、税務署からの通知書

これは、夫に債務があることを知ったとき、税務署からの通知書を受け取った日から3か月以内に相続放棄の申し立てをすればよいからです。

兄弟姉妹が相続放棄を申し立てるときには、妻と子供のように簡単ではなく、次の書類を用意する必要があります。
1)亡くなった兄の、本籍地・記載のある住民票の除票を取得します。
2)兄の本籍地が分かれば、兄の除籍謄本(妻がいれば戸籍謄本)を取得します。
3)兄の出生から死亡までの除籍謄本を取得します。
  兄の第一順位の相続人の子供が、全部で誰なのかを証明する必要があるからです。
4)すでに死亡している両親の除籍謄本を取得します。
  第二順位の両親が死亡していることを証明し、第三順位の妹が相続人となることを証明する必要があるからです。
5)兄の子供全員が相続放棄したことの証明。
  兄に子供がいることが分かったので、この子供全員が家庭裁判所で相続放棄を受理されているかどうかを調べます。
  家庭裁判所に、子供全員の「相続放棄申述受理検索結果」を申し立てます。
  兄に妻がいることも分かったので、ついでに、妻も相続放棄しているかどうかも調べました。妻も相続放棄していました。
  妻は相続人の順位とは関係なく、常に相続人となります。
  妻が相続放棄してもしなくても、兄の子供全員が相続放棄して、両親が死亡していれば、第三順位の妹が相続人となります。
6)妹の戸籍謄本

以上のことを一般の人が自分で、戸籍関係書類を取得して、妹が、ほんとうに、確定的に相続人となったことを確認するまで、迅速に調べるということは、実際難しいですね。時間がかかります。

結果としては、兄の相続人関係を調べ、子供全員が相続放棄をしたという事実を確認できたときは、6月15日で、最初の、妹が税務署からの通知書を受け取ったとき3月1日から、すでに3か月経過していました。

妹が税務署からの通知書を受け取ったのが3月1日です。3か月後の6月1日までに相続放棄の申し立てができればベストでした。
ですが、妹が税務署からの通知書を受け取った時点では、自分がなんとなく相続人となるのかな、という程度のことです。3月1日の時点では、すべての書類を見て自分が相続人となることを、確定的に知ったわけではありませんので。

そこで、妹は、すでに両親が死亡していることは知っていましたが、第一順位の子供全員の相続放棄があったことを確認し、妹が、兄の相続人となることを、確定的に知ったのが6月15日です。
この日付は、「相続放棄申述受理検索結果」に記載された家庭裁判所の書面で証明できます。

前順位の相続人の相続放棄があって初めて、次順位の相続人が相続権を取得することになります。相続権のない人が相続放棄をすることはできません。
前順位の相続人の相続放棄がある前に、被相続人の死亡を知ったとしても、次順位の相続人が被相続人の死亡を知ったときから相続放棄3か月の期間を計算するわけではありません。
もし、被相続人の死亡を知ったときから3か月の期間を計算しなければならないとすると、前順位の相続人が相続放棄をする前に、この3か月の期間を過ぎてしまう場合があるからです。

順位の相続人が相続放棄をすることができるのは、前順位の相続人が相続放棄をした後でなければ相続放棄ができません。
前順位の相続人の相続放棄があったことを知ったときから相続放棄3か月の期間を計算することになります。前順位の相続人の相続放棄があったことを知ったときに、次順位の相続人が自分に相続権があるということを知ることになるからです。前順位の相続人の相続放棄があったという事実だけでは、次順位の相続人が自分に相続権があることを知ったことにはなりません。次順位の相続人が、前順位の相続人の相続放棄があったという事実を「知る」必要があるからです。

ということで、妹は、家庭裁判所に相続放棄を無事、受理されました。
このように、兄弟姉妹が相続放棄する場合、まったく見ず知らずの親戚が相続放棄した後は大変な作業となります。
兄弟姉妹に付き合いがあれば、「相続放棄したので、あなたも相続放棄してください」、と言って、もっとスムーズに相続放棄の申し立てができたでしょう。
あるいは、最初の相続人が相続放棄ではなく、限定承認を選択すれば、順位の相続人が相続放棄をする必要もありませんでした。これについては、第1順位の相続人で相続債務を止める限定承認を参考にしてください。
なお、すべての手続き、戸籍関係書類の取得、家庭裁判所とのやりとり、妹とのやりとり、すべて郵送で行いました。
(この内容は、2019年11月時点での内容です。)

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