農地の被相続人叔母名義を甥に名義変更する方法:相続登記相談

農地の被相続人叔母名義を甥に名義変更する方法:相続登記相談

【相続登記相談事例】
被相続人叔母(父の姉)名義の不動産を叔母(父の妹)名義に相続登記をし、これを甥(父の子)に贈与しようと考えています。
これらの手続をするには、どのようにしたらよいですか。
【相続財産】
①宅地:評価価格:100万円
②宅地+家屋:評価価格:500万円+400万円
③田畑山林(合計36筆)評価価格:1万円
【相続人関係】
被相続人:叔母(父の姉):配偶者・子がいない。
相続人:叔母(父の妹)、父(兄弟姉妹が相続人となる。)

被相続人叔母名義を甥に名義変更する方法:その1

① 相続登記:被相続人叔母(父の姉)名義を叔母(父の妹)に名義変更
② 贈与登記:叔母(父の妹)から甥(父の子)に名義変更

② 贈与登記:叔母(父の妹)から甥(父の子)に名義変更の問題点

農地法の許可の問題

農地法(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

農地法 | e-Gov法令検索

不動産に「田・畑」があるため、登記上の地目が「田・畑」の場合、贈与では、「農地法の許可」が必要です。
これは、おそらく、市街化調整区域(区域の別がない、線引きのない市町村)の場合、贈与を受ける甥が「農業従事者」であれば、農地法の許可を得ることができますが、農業従事者でない場合は、この許可が下りません。
そうしますと、不動産のうち「田・畑」は贈与できないことになり、不動産全部を贈与できないことになります。

甥(父の子)が叔母(父の妹)の直接の「相続人」ではない場合、遺言書を作成した場合であっても(叔母が甥に「遺贈する。」)、甥(父の子)が叔母(父の妹)の直接の相続人ではない場合は、相続人ではない甥への遺贈でも、農地法の許可が必要です。なお、「相続」では、農地法の許可は必要ありません。

贈与税の問題

叔母(父の妹)から甥(父の子)への贈与で名義変更の場合、贈与税がかかります。
評価価格の合計を仮に、1,000万円とします。
1,000万円-110万円=890万円
890万円×40%-125万円=231万円(贈与税)

そこで、次の方法が考えられます。

【甥が農業従事者の場合】贈与税の問題があるため

① 相続登記:被相続人名義を叔母(父の妹)に名義変更
② 甥(父の子)が叔母(父の妹)の直接の「相続人」ではない場合、叔母(父の妹)の直接の相続人父(叔母の弟・甥の父)に対して、公正証書遺言書を作成(叔母(父の妹)が直接の相続人父(叔母の弟)に「相続させる。」)
 → この場合は、「相続」であるので、農地法の許可が必要ありません。
③ 将来的には、この相続人父から甥(子)への「相続」ですべての不動産の名義変更ができることになります。

【甥が農業従事者でない場合】農地法の許可の問題があるため

① 相続登記:被相続人名義を叔母(父の妹)に名義変更
② 甥(父の子)が叔母(父の妹)の直接の「相続人」ではない場合、叔母(父の妹)の直接の相続人父(叔母の弟・甥の父)に対して、公正証書遺言書を作成(叔母(父の妹)が直接の相続人父(叔母の弟)に「相続させる。」)
 → この場合は、「相続」であるので、農地法の許可が必要ありません。
③ 将来的には、この相続人父から甥(子)への「相続」ですべての不動産の名義変更ができることになります。

被相続人叔母名義を甥に名義変更する方法:その2

事例の父が被相続人叔母(父の姉)よりも先に死亡していた場合

父が被相続人叔母(父の姉)よりも先に死亡していた場合は、甥は、被相続人叔母(父の姉)の代襲相続人として、叔母(父の姉)の不動産を「相続」で取得することができます。
事例の場合、最終的に甥に不動産を取得させたいときは、叔母(父の妹)を経由することなく、甥が代襲相続人として相続できますので、叔母(父の姉)と甥との遺産分割協議遺産分割協議書を作成)して、甥名義とすることができます。この場合は、「相続」ですので、農地法の許可は必要ありません。

まとめ:農地の相続

上記のように、相続人が誰になるのかによって、登記の方法が異なりますので、まずは、相続人を確定します。そのうえで、農地の名義変更(相続登記)をすることになります。また、贈与をしようとするときは、贈与税がどのくらいかかるのかなど検討した方がよいでしょう。

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