死因贈与と遺贈の違い(参考)

死因贈与と遺贈の違い(参考)

事例:Aさんが生前、推定相続人以外のBさん(第三者)に、Aさんが死亡したら不動産を贈与したいと考えた場合、どういう方法を採ったらよいでしょうか?

第1の方法は、Aさんが生前、Bさんと、Aさんが死亡したら贈与する、という契約をすることです。
これが、「死因贈与契約」といわれるものです。
死因、すなわち、死亡という時期の開始によって贈与契約が効力を生じます。
AさんとBさんが死因贈与契約書を作成します。

第2の方法は、Aさんが遺言書を作成して、Aさんが死亡したら不動産をBさんに贈与するという内容の遺言書を書くことです。これが「遺贈」です。
これは、公証人役場で作成しても、自分で(自筆で)書いてもどちらでも構いませんが、できれば、公証人役場で作成したほうがよいでしょう。
自筆証書遺言書では、Aさんの死亡後に、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認手続をしなければならないからです。(ただし、登記所の保管制度を利用した自筆証書遺言書では家庭裁判所の検認手続は不要です。)
検認手続では、Aさんの法定相続人全員が家庭裁判所に呼び出され、その全員でなくても、誰かと会うことになるからです。

第1の方法(死因贈与契約)と第2の方法(遺贈)のどちらを選択すればよいでしょうか?

将来、Bさんが確実に不動産を取得できるようにするには、第1の方法と第2の方法の両方を採用します。

まず、AさんBさんが「死因贈与契約書」を公証人役場で作成します。この際、死因贈与契約で執行者をBさんとします。
こうすることによって、将来、Aさんが死亡したときに、Bさんが自分で(単独で)不動産の所有権移転登記をすることができる、と解されています。
ただし、確実に登記所がこれで受付けるか微妙な点があるので、第2の方法の遺贈もします。

時を異にして、Aさんが死亡したら不動産をBさんに贈与するという「遺贈の遺言書」を作成します。

このとき、遺言執行者をBさんにします。こうすれば、Bさんが自分で(単独で)不動産の所有権移転登記をすることができます。

次に、Bさんの権利の確保(保全)をするために、仮登記をします。
これは、Aさんの死亡を始期として、死因贈与契約日を記載し、始期付所有権移転の仮登記をします。
この仮登記をすることによって、登記上、第三者に対する牽制になり、権利の保全をすることができます。
遺贈の場合は、Aさんが死亡してからでないと登記をする方法がありません。
すなわち、遺贈の場合は仮登記をすることができないからです。
Aさんが死亡したときに登記をします。

結局、第1の方法(死因贈与契約)と第2の方法(遺贈)のどちらを選択すればよいでしょうか?
Aさんが死亡したときに登記をする方法は、死因贈与の本登記または遺贈のどちらでも選択できるようにしておきます。

理由の第1は、遺贈の場合、遺言執行者をBさんにしているので、Bさんが自分で(単独で)不動産の所有権移転登記をすることができるからです。
要するに、Aさんの法定相続人全員の協力なしで、法定相続人全員の実印や印鑑証明書をもらう必要がないからです。

死因贈与の場合は、仮登記をしていますので、Aさんが死亡したときは、仮登記の本登記をします。
この本登記申請では、基本的に、Aさんの法定相続人全員の協力が必要です。法定相続人全員の実印や印鑑証明書をもらう必要があります。
ただし、死因贈与契約で執行者をBさんとしているので、Bさんが自分で(単独で)不動産の所有権移転登記をすることができる、と解されています。ただし、確実に登記所がこれで受付けるか微妙な点があります。

理由の第2は、登記を申請する際に掛かる登記所に納める登録免許税です。
死因贈与の場合、登録免許税の税率は2%です。
遺贈の場合、相続人以外の第三者が受遺者となる場合、登録免許税の税率も2%です。(相続人に対する遺贈は、相続と同様に0・4%です。)

上記の事例では、相続人ではないBさんに遺贈する場合に該当するため、登録免許税の税率は2%です。

死因贈与による始期付所有権移転仮登記の際、1%を納付しているので、本登記では残りの1%を納付します。仮登記の登録免許税と合計して2%になります。
遺贈で登記する場合は、2%を納付し、仮登記の1%と合わせて合計3%になります。

Aさんの相続開始後、死因贈与(公正証書の死因贈与契約がよいと思われます。)の本登記を執行者Bのみで確実に登記申請できる場合は死因贈与による本登記を選択し、これができない場合には合計3%かかっても遺贈による登記をするしかありません。

通常、登記の専門家である司法書士といえども、不確かな問題は、登記官に相談し、回答を得ます。
近々に登記手続をするような場合には、登記官の責任において必ず、回答を出してくれます。
ですが、何年先になるかもしれない事案を登記官が回答することができるか、疑問です。
それは、将来起こるであろうことを問題ない、と登記官が答えることができるか疑問に思われるからです。
それは、将来のことで登記官が責任を負うことができない、と思われるからです。

そういう意味でも、Aさんが死亡したときに登記をする方法は、死因贈与の本登記または遺贈のどちらでも選択できるようにするのがよいと思われます。

遺贈で所有権移転登記をした場合、登記上、死因贈与による仮登記残っていますので、これは、遺贈による所有権移転登記と同時に、登記の原因を「混同」として、Bさん単独で、仮登記の抹消登記をします。

最後に、税金の問題です。
死因贈与は、相続税法上、遺贈に含まれます。
民法上、死因贈与は、遺贈に関する規定に従う旨の定めがあるので、相続税法においても遺贈と同様になります。
したがって、相続税法上、死因贈与も遺贈も異なることはありません。
ただし、遺産全体の相続税の計算で、相続税の基礎控除を超えるなどして相続税がかかる場合、BさんはAさんの子でも父母でもないので、通常の相続税の1・2倍相続税を納めることになります。

公証人に確認したこと
 公正証書の死因贈与契約で、執行者を決めることは、よくあることです。(通常、執行者を決めます。)
 死因贈与契約書と遺贈の遺言書を公正証書によって同時に作成することはできない。(内容がダブルので。)時を異にして作成することは可能。
登記所に確認したこと
 死因贈与の本登記は、登記の事例がほとんどない。
 あったとしても、登記義務者は、相続人全員であると認識している。
 将来のことを今、回答することはできない。

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