相続登記の必要書類:相続人が海外在住日本人と日本国籍離脱者アメリカ人

相続登記の必要書類:相続人が海外在住日本人と日本国籍離脱者アメリカ人

執筆者:司法書士 芦川京之助(横浜リーガルハート司法書士事務所)

【相続登記相談】
被相続人が父(日本国籍)で、相続人子2名の姉妹、長女がイギリス在住日本人(日本国籍)、二女が日本国籍離脱者アメリカ人(アメリカ国籍)です。この場合、相続登記に必要な書類を教えてください。
また、相続登記が完了後、不動産を売却する予定です。このことを想定した場合、相続名義人を誰にした方がよいのかも教えてください。

相続不動産を売却する場合

不動産の売却では、売主の本人確認が必要となります。不動産業者と司法書士が確認をします。
本人確認の方法は、直接、面談が基本です。この方法は、売買による所有権移転登記を担当する司法書士(買主指定)により異なります。

また、不動産相続登記の名義人となる人は、買主との売買契約締結や売買代金の授受を行う必要がありますので、売主として不動産の売却をやりやすい人を相続名義人にするのがよいと思われます。

このため、相続登記完了後、不動産の売却を想定するのであれば、2名共有名義で相続登記をするよりも、1名単独名義で相続登記をした方がやりやすいということになります。

1名単独名義で相続登記する場合の遺産分割協議書作成

1名単独名義で相続登記をする場合、遺産分割協議書には、次のように記載します。

遺産分割協議書(一部省略)
【換価分割】
不動産を○○が相続取得する。
ただし、不動産を売却して、売却にかかる経費等を差し引いた残金の○○%を、○○が○○に支払う。

換価分割による遺産分割協議は、次を参考にしてください。
遺産分割協議書による換価分割の具体的な方法:不動産売却にかかる経費

相続登記の必要書類:相続人が海外在住日本人と日本国籍離脱者アメリカ人

事例の場合、相続登記の必要書類のうち、被相続人・相続人に関する書類は、次のとおりです。その他の書類は、相続登記の必要書類でご確認ください。

被相続人:父(日本国籍)
① 出生から死亡までの除籍謄本
② 死亡記載のある住民票(本籍筆頭者記載)
③ 母が死亡または離婚したことの記載が必要
相続人長女:イギリス在住日本人(日本国籍)
① 戸籍謄本
② 在留証明書(イギリス国内の日本領事館で取得)
③ 遺産分割協議書を作成後、イギリス国内の日本領事館に持参し、担当官の面前で署名と拇印、領事館の 認証(サイン拇印証明書:形式1・貼付型)
④ サイン拇印証明書:形式2・単独型(予備的に取得する)
 
長女が、相続名義人となるとき
⑤上申書:国内連絡先の有無:住所・氏名、拇印
⑥委任状(相続登記):住所・氏名、拇印
相続人二女:日本国籍離脱者アメリカ人(アメリカ国籍)
① 除籍謄本(日本国籍離脱、アメリカ国籍取得が記載)
② 遺産分割協議書(アメリカ公証人の認証文付き)
③ 宣誓供述書(アメリカ公証人の認証文付き)
④ 「アメリカ国籍取得帰化証明書 naturalization certificate」コピー(アメリカ公証人の認証文付き)

二女が、相続名義人となるとき
⑤ パスポートコピー(原本の写しに相違ないこと、署名)

相続人二女の遺産分割協議書(アメリカ公証人の認証文付き)

遺産分割協議書の形式は、通常の遺産分割協議書(相続人ごと個別)の形式でも、遺産分割協議証明書の形式、どちらでも問題がない。

アメリカの多くの州の公証人は、遺産分割協議書に認証するという方法(文書の認証)を採用しています。
ただし、遺産分割協議書を日本語で作成した場合、遺産分割協議書の全文を英文で作成し、基本的には、日本語の遺産分割協議書とセットで公証人に提出します(事前に、公証人との打ち合わせが必要です)。
また、アメリカには、元日本人(日本語を理解できる)の公証人もいますので、元日本人の公証人に認証してもらう方がやりやすいかと思われます。この場合は、日本語のみの遺産分割協議書を公証人に提出することも可能です(事前に、公証人との打ち合わせが必要です)。

次を参考にしてください。
日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)の遺産分割協議書(宣誓供述書)による相続登記の方法

相続人二女の宣誓供述書(アメリカ公証人の認証文付き)

宣誓供述書(英文と日本語)の内容は、次の事項を記載します。
アメリカ公証人の認証文も日本語に翻訳します。

相続人二女:日本国籍離脱・元日本人(アメリカ国籍)について
(1) 住所、氏名、生年月日
(2) 日本における相続手続
 1.日本国籍離脱前の日本における戸籍の本籍
 2.父の氏名
   母の氏名
 3.父母との続柄
 4.アメリカ合衆国の国籍取得日(帰化日)
 5.日本国籍の喪失日
 6.父の死亡日
 7.二女が父の相続人であること

二女が、相続名義人となるとき
(3)国内連絡先の有無
(4)司法書士に相続登記を委任するのであれば、委任事項

相続人二女の「アメリカ国籍取得帰化証明書 naturalization certificate」コピー(アメリカ公証人の認証文付き)

「アメリカ国籍取得帰化証明書 naturalization certificate」の原本をコピーし、このコピーに「これは原本の写しに相違ありません。相続人の署名」とし、これに、アメリカ公証人の認証文を付けてもらいます。アメリカ公証人の認証文も日本語に翻訳します。(2024年、横浜地方法務局で登記完了。法務局では、この書面の原本を提出するよう指示されたが(原本還付)、この書面を郵送などで紛失した場合、再発行が困難であることを理由に、コピー認証することが認められた。)

まとめ:相続登記の必要書類:相続人が海外在住日本人と日本国籍離脱者アメリカ人

(1)海外在住の相続人(日本人とアメリカ人)が2名以上いる場合、不動産の相続登記が完了後、相続不動産を売却することを想定している場合には、相続名義人を共有名義とするのか、単独名義とするのかを検討した方がよいでしょう。単独名義とした方が、不動産の売却がやりやすいということになります。
(2)相続名義人を海外在住の日本人とするのか、アメリカ人とするのかによっても、相続登記の必要書類が異なります。

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相続登記相談風景(イメージ)
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