日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)の遺産分割協議書(宣誓供述書)による相続登記の方法

日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)の遺産分割協議書(宣誓供述書)による相続登記の方法

【相続登記事例】
被相続人父の相続登記で、父の後に母が死亡し、その後に、父所有の不動産について、子2名(姉妹)が遺産分割協議で姉が取得するということになりました。
妹は、すでに日本国籍を離脱しており、アメリカ国籍を取得しています。妹は、元日本人なので日本語を理解できます。
この場合、どういう方法で相続登記をしたらよいでしょうか。

【相続関係図】

相続人の中に、外国に居住する日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)がいる場合の遺産分割協議書による相続登記の方法です。
遺産分割協議書による相続登記の基本的な方法は、遺産分割協議書による相続登記を参考にしてください。

相続登記の必要書類(一部省略):相続人の中に、外国に居住する日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)がいる場合

  • 被相続人父
    除籍謄本(出生から死亡まで)
    住民票除票(または戸籍の附票
  • (亡)母
    除籍謄本
  • 相続人姉
    戸籍謄本
    住民票
    印鑑証明書
    遺産分割協議証明書
  • 相続人妹(日本国籍離脱・元日本人)
    除籍謄本(日本国籍離脱、アメリカ国籍取得が記載)
    遺産分割協議証明書(アメリカ公証人の認証文付き)

遺産分割協議証明書の作成

遺産分割協議による相続登記では、通常、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の連名で署名実印の押印するのが基本です。
ですが、相続人がそれぞれ遠方にいるため、相続人全員での連名による署名実印の押印をするには、難しい、時間がかかってしまうような場合は、遺産分割協議書を各相続人ごとに、同一内容の遺産分割協議書を別々に作成し、署名実印の押印することもできます。この場合、遺産分割協議書に記入する日付が異なっても問題ありません。

また、遺産分割協議書という形式ではなく、遺産分割協議証明書という形式で作成しても、問題ありません。
次を参考にしてください。

    遺産分割協議証明書(一部省略)
被相続人父(生年月日:昭和〇年(西暦○年)〇月〇日)が、平成25年(西暦〇年)〇月〇日死亡したので、その相続につき、同人の相続人全員において遺産分割協議を行った。その結果は、下記のとおりである。
   記
相続人 姉○○は、次の遺産を取得する。
 所  在  日本国東京都○○
 地  番  ○○番〇
 地  目  宅地
 地  積  ○○・○○平方メートル

被相続人父の登記されている住所:○○と最後の住所の経過を証明することができませんが、被相続人父がこの土地の名義人であることに相違ありません。

令和〇年(西暦〇年)〇月〇日
被相続人父の相続人(妹)(日本国籍離脱前の氏名:○○)
(住所)アメリカ合衆国○○
(氏名)(署名)
生年月日:昭和〇年(西暦〇年)〇月〇日
(別紙で、公証人の認証文を付けてもらう。)

外国に居住する日本国籍を離脱した元日本人のサイン拇印証明書(署名(および拇印)証明)について

外国に居住する日本国籍を離脱した元日本人が、外国にある日本大使館(または領事館)で、「日本国籍のある日本人」に発行するサイン拇印証明書(署名(および拇印)証明)を取得して、これを上記遺産分割協議証明書に署名拇印を押印すればよいでしょうか。

以前、このような取り扱いを在外大使館領事館で行っていたようですが、現在、在アメリカ合衆国日本国大使館では行っていません。
ほかの在外大使館領事館で行っているのかいないのかを確認した方がよいでしょう。
次を参照してください。
在アメリカ合衆国日本国大使館ホームページでは、次のように記載されています。

【対象】 日本国籍を持ち、ワシントンDC、メリーランド州、バージニア州に既に3ヶ月以上滞在し、かつ、日本国内に住民登録をされていない方。※元日本人の方は公証人(Notary Public)から証明を受けてください。

アメリカに居住する日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)の遺産分割協議証明書は、どのようなものを用意すればよいのか

アメリカに居住する日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)は、在アメリカ合衆国日本国大使館で、サイン拇印証明書(署名(および拇印)証明)を取得できませんので、アメリカの公証人の認証を受ける次の二通りの方法となります。

(1)アメリカ公証人作成の宣誓供述書(英語が分かる人)

アメリカ公証人の面前で、宣誓陳述し、この内容を公証人に書面で作成してもらいます。これを宣誓供述書といいます。
この宣誓供述書の内容は、遺産分割協議証明書の内容と同じであれば、これを遺産分割協議証明書として使用できることになります。
アメリカ公証人の作成した宣誓供述書は英文であるので、これを日本語に翻訳します。翻訳者の資格制限はなく、誰でも翻訳することができます。
この場合の宣誓供述書については、相続人が海外に居住している外国人の宣誓供述書を参考にしてください。

(2)全文を日本語で作成した遺産分割協議証明書にアメリカ公証人が認証したもの(英語も日本語も分かる人)

アメリカ公証人の認証文の日本語への翻訳文は、例えば、次のとおりです。

翻訳文
(上段:原文英語)
(下段:日本語翻訳文)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
VERIFICATION ON OATH OR AFFIRMATION WITH AFFIANT STATEMENT
宣誓供述書の検証
State of Michigan
州名:ミシガン州
County of ○○
郡名:○○郡
□✔ See Attached Document(Notary to cross out lines 1-7 below)
提出された添付の文書を参照してください。(この場合、公証人は以下の行 1 ~ 7 に取り消し線を引いてください。)
□ See Statement Below (Lines 1-7 to be completed only by document signer[s], not Notary
以下のステートメントを参照してください。 (1 ~ 7 行目は公証人ではなく文書の署名者のみが記入します。)
Signature of Document Signer No.1
文書署名者 No.1 の署名
Signature of Document Signer No.2 (if any)
文書署名者 No.2 の署名 (存在する場合)
Subscribed and sworn to (or affirmed) before me
私の面前で陳述し、宣誓(または肯定)しました。
this 〇TH day of 〇 2023 ,by
Day Month Year
2023年〇月〇日
Name of Signer No.1
○○ ○○ ○○
文書署名者 1
○○ ○○ ○○(宣誓供述者)
Name of Signer No.2 (if any)
(記入なし)
文書署名者 2 (存在する場合)
MATTHEW SILVAGI
Signature of Notary Public
公証人の署名
○○ ○○ ○○
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公証人の印章(刻印)
○○ ○○ ○○
Notary Public-State of ○○
County of ○○
My Commission Expires 〇 〇,2026
Acting in the County of ○○
○○ ○○ ○○
○○郡○○州の公証人
2026年〇月〇日まで○○郡で任に就く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Place Notary Seal/Stamp Above
公証人の印鑑/スタンプを上に貼ります。
Any Other Required Information (Residence, Expiration Date, etc.)
その他必要な情報(居住地、有効期限など)
OPTIONAL
オプション(随意情報)
Completing this information can deter alteration of the document or fraudulent reattachment of this form to an unintended document.
この情報を記入することで、文書の改ざんや、意図しない文書へのこのフォームの不正な再添付を阻止できます。
Description of Attached Document
添付文書の説明
Title or Type of Document:
文書のタイトルまたは種類:
Document Date:
文書の日付:
Number of Pages:
ページ数:
Signer(s) Other Than Named Above:
上記以外の署名者:
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上、翻訳した。
令和〇年〇月〇日
横浜市中区元浜町三丁目21番地2
ヘリオス関内ビル4階
横浜リーガルハート司法書士事務所
司法書士 芦川京之助

日本語の分かる元日本人であれば、全文を日本語で作成した遺産分割協議証明書をアメリカ公証人に持参し、アメリカ公証人の面前で、この遺産分割協議証明書に署名することができます。
署名した遺産分割協議証明書に、アメリカ公証人の認証文(日本語に翻訳する必要がある)を付けてもらいます。
これを遺産分割協議証明書として使用することができます。(2023年、東京法務局立川出張所で登記完了)

まとめ:日本国籍を離脱した元日本人(アメリカ国籍)の遺産分割協議書による相続登記の方法

外国に居住するに日本人(日本国籍)が相続人となるときは、遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)に署名し、拇印で押印します。これに、在外(外国にある)日本の大使館(または領事館)で「サイン(署名)拇印証明書」と「在留証明書」を取得し、法務局に提出します。

アメリカに居住するに元日本人(日本国籍を離脱、外国の国籍を取得)が相続人となるときは、①公証人作成の宣誓供述書または②全文を日本語で作成した遺産分割協議証明書にアメリカ公証人が認証したものを付けて、法務局に提出します。

台湾や中華人民共和国では、印鑑証明書の制度がありますので、日本国籍を離脱した元日本人(台湾籍・中国籍)は、遺産分割協議書(または遺産分割協議証明書)に署名し、登録している印鑑で押印したものを法務局に提出します。

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