法定相続登記をした後の遺産分割による登記

法定相続登記をした後の遺産分割による登記

法定相続登記をした後、遺産分割で登記をすることは、通常、あまりしません。できることはできます。
法定相続登記をしてから、遺産分割で登記をすると、二重に登記費用がかかることになるので普通はしません。

相続登記の場合、主に、法定相続分による法定相続登記(で終わりにする。)、あるいは遺産分割による登記で、一度に済ます方法をとるのが一般的です。

ですが、法定相続登記をしてから遺産分割で登記をするという場合、最初に、法定相続分で登記をします。その後に、「遺産分割」を登記原因として持分の移転登記をします。

例えば、法定相続人のAさんとBさん名義で登記をした後、「遺産分割」を登記原因として、Bさん持分全部移転登記をすることによって、Aさん単独名義にするという方法です。

問題となる登記として、最初の相続登記を遺産分割でAさん名義にして、その後、「遺産分割」をやり直してBさん名義にできるか、ということです。

この場合、最初の遺産分割による登記の原因は「相続」です。
2回目の登記の原因は「遺産分割」です。
要するに、遺産分割を2回することはできるか、ということです。
これはできます。理屈では。

ですが、この方法で登記をしますと、2回目の登記では、税務上、贈与税で課税される可能性があります。さらに、不動産取得税もかかる可能性があります。結論的には、実際、やらない方が無難です。

遺産分割をやり直す場合、最初に遺産分割で登記した内容を錯誤で抹消登記し、改めて遺産分割で登記するという方法であれば、税務上の問題は生じないでしょう。あるいは、錯誤で更正登記をするという方法もあります。ただし、結果として、2回分の相続登記費用と抹消(更正)登記費用がかかることになります。

法定相続人一人が、自分と他の法定相続人のためにする法定相続登記

法定相続分で登記をしてから遺産分割で登記するという場合で問題となるのは、先の例で、兄弟2人がいて、その一人Aさんが、他の兄弟Bさんの同意を得ないで、法定相続分でAさんとBさん名義の相続登記をした場合です。
これは、法定相続人一人から、共有物の保存行為(民法第252条)として、この登記を申請することができるからです。法定相続人は、他の法定相続人の同意を得ることなく、法定相続分で法定相続人全員名義とする登記を申請することができます。

民法(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

民法 | e-Gov法令検索

この場合、申請人となる相続人は、自分の法定相続分だけではなく、他の相続人の法定相続分も登記しなければなりません。
したがって、申請人となる相続人は、自分の法定相続分に対する登録免許税だけではなく、他の相続人の登録免許税も納めなくてはなりません。
もちろん、相続登記に必要な書類である他の相続人の戸籍謄本と住民票も自分で用意しなければなりません。
これについては、法定相続登記がされているときを参考にしてください。

ですが、登記所では、登記申請書に記名・押印(委任状に署名、捺印)した者に対してだけ、登記識別情報(従来の権利証に代わるもの)が発行されることになっています。
ですから、この場合、Bさんの登記識別情報は発行されません。

その後、遺産分割でBさん名義にするという協議が成立したので、登記原因を「遺産分割」として、Aさんの持分全部をBさんに移転登記します。
この場合、最初の法定相続分による登記で、Bさんの持分が登記され、2回目の遺産分割による登記でBさんは単独の所有者となります。

ここで、問題は、最初の相続登記でBさんの同意なしにAさんが登記をし、その結果、登記識別情報が発行されなかったので、Bさんとしては、その不動産の半分だけの登記識別情報しか持っていないことになります。

Bさんは、不動産全体の権利証としての登記識別情報を持っていないので、今後、権利証を必要とする登記をする場合、別の「登記識別情報通知(権利証)を持っていない場合の手続」と費用がかかることになります。

20年以上前の「法定相続登記」を遺産分割で移転登記

【相談事例】20年以上前に「相続」を登記原因として、法定相続人名義に法定相続分で相続登記(不動産名義変更)をしました。今回、相続人の一人が取得したいと考えていますが、この場合、「遺産分割」を登記原因として登記することは可能でしょうか。

相続開始後、法定相続人の一部の人名義に変更登記する方法は、次の2パターンです。

  • 法定相続分で登記せずに、遺産分割協議を行い合意し遺産分割協議書を作成して、「相続」を登記原因として名義変更登記する方法
  • とりあえず一旦、法定相続分で登記し、その後、遺産分割協議を行い合意し遺産分割協議を作成して、「遺産分割」を登記原因として名義変更登記する方法
    今回の相談事例は、後者の場合です。

登記の方法
一旦、法定相続分で登記し、その後、遺産分割協議を行い合意し遺産分割協議を作成して、「遺産分割」を登記原因として名義変更登記する方法では、次の書類が必要となります。

例えば、法定相続人3名(ABC)の法定相続分(各持分3分の1)で登記し、遺産分割で、このうちA・Bは取得しないことにし、Cが取得する場合を考えてみましょう。

この場合、次のように記載します。
登記の目的 AB持分全部移転
原   因 年月日遺産分割
権 利 者 持分3分の2 C
義 務 者 A・B
登録免許税 Cが取得する持分3分の2に対する評価価格の0・4%

必要書類と印鑑は、次のとおりです。
 義務者A・B:登記原因証明情報、権利証(登記済権利証または登記識別情報)、印鑑証明書、固定資産評価証明書、実印
 権利者C:住民票、印鑑

「登記原因証明情報」は、登記原因証明情報の形式で作成してもよいし、遺産分割協議書の形式で作成しても問題ありません。

「登記原因証明情報」を遺産分割協議書で作成する場合、次の文言を記載します。
「これに伴い、平成年月日受付第号で登記したAの持分について遺産分割を原因としてB・Cに移転登記する。」
(以上、平成29年、東京法務局府中支局で登記完了)

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