相続登記の相続と遺贈の違い(相続相談)

相続登記の相続と遺贈の違い(相続相談)

【相談事例】
自筆の遺言書の検認手続(家庭裁判所)を完了。
遺言自筆証書に基づいて「相続させる」手続をしたい。
遺言書の内容は、祖父が孫に遺産を「相続させる」と記載されている。
相続関係は、祖父(被相続人)、長男(存命)(他に兄弟姉妹あり)、孫(長男の子)

このような事例の場合、祖父名義の不動産を孫に「相続させる」ことができるでしょうか。

遺言書に「祖父が孫に相続させると記載されていた場合」の登記の方法

遺言書作成の時点で、長男が存命の場合、推定相続人(相続開始後、法定相続人となるであろう人)は、長男で、孫は推定相続人ではありません。
誰々に「相続させる」と遺言書に書く場合、この誰々は、「推定相続人」であることが必要です。

孫は推定相続人ではありませんので、孫に「相続させる」ではなく、「遺贈する」が正しい書き方となります。
ただし、孫が、祖父の養子であった場合は、「相続させる」と書くのが正しいことになります。
事例で、孫は祖父の養子ではないので、祖父の相続に関しては、祖父の直接の推定相続人ではありません。ですので、「相続させる」ではなく、実質的に、「遺贈する」が正しいことになります。

「孫に相続させる」という遺言書の場合、祖父が遺言書を作成した後、「父が亡くなり」、その後に祖父が亡くなった場合は、孫が法定相続人(代襲相続人)となりますので、登記の原因は「相続」です。

事例の場合、遺言書の書き方として、「祖父は、遺産を孫に遺贈する。孫が相続人であるときは孫に相続させる。」及び孫を遺言執行者に指定すると記載しておけば、問題ありません。

事例の場合、遺言書に「遺贈する」と記載すべきところ「相続させる」と記載されていた場合、「遺贈する」と解釈して、登記ができるかどうか、という点です。
相談者が登記所に登記申請した際、登記所の担当官が、遺言執行者を選任してもらってください、と言った意味は、「相続」を「遺贈」と読み替えてよいと、判断したからだと思われます。

祖父が孫に「遺贈する」場合の登記の方法

そこで、登記の原因を「遺贈」とする場合の手続について、説明いたします。

登記の原因を「相続」とする場合は、法定相続人の単独で申請することができます。
ところが、「遺贈」を登記の原因とする場合は、受遺者(遺贈を受ける人)の孫が単独で申請することができません。(ただし、遺言書に、この孫を遺言執行者とする、と記載されていれば、実質的に、この孫が単独で申請することができます。)

「遺贈」の場合、権利者が受遺者(遺贈を受ける人)で孫となり、義務者が遺言執行者または法定相続人全員となって、共同申請の形式で申請します。
このような場合、通常、法定相続人全員から登記に必要な書類、すなわち、実印を押印した委任状や印鑑証明書を入手することが困難なことから、法定相続人全員の協力を得ることが難しい場合、遺言執行者を義務者として申請する方法を選択します。

第1:遺言執行者選任の申立てを家庭裁判所にする

この遺言執行者は、家庭裁判所に、誰々を遺言執行者の候補者にする旨、申し立てます。
身近な人を遺言執行候補者とすることができます。
遺言執行者選任の審判は、通常、申立人が記載した候補者を認めてくれますので、難しくはありません。
遺言執行者選任の申立の方法については、次のサイト(裁判所)でご確認ください。申立て手続について

第2:遺贈で登記の方法

遺言執行者が選任された後の登記手続きについて、説明いたします。

遺言執行者(義務者)と孫(権利者)が用意する書類と印鑑は、次のとおりです。

  • 不動産の権利証(登記済権利証または登記識別情報通知
     →不動産の権利証がない場合は、登記所から遺言執行者に事前通知をしてもらいます。
      登記の原因が「相続」の場合、「添付情報」としての権利証は必要ありませんが、「遺贈」の場合、権利者・義務者の共同申請の方式をとりますので、義務者の権利証が必要となります。
      これは、例えば、遺言書に「孫を遺言執行者と指定する。」と記載されている場合であっても同じです。
  • 遺言執行者選任審判書
  • 遺言執行者の印鑑証明書
  • 遺言執行者の実印→司法書士に依頼する場合、委任状、(登記原因証明情報)に押印します。
  • 検認を受けた自筆証書遺言書
  • 固定資産税の評価証明書
  • 祖父の除籍謄本・住民票除票(本籍・筆頭者の記載されたもの)
  • 孫の住民票(孫の戸籍謄本は不要(事例の場合、孫は法定相続人ではないので))
  • 孫の認印→司法書士に依頼する場合、委任状に押印します。

登記申請書の書き方
「登記の目的」:所有権移転
「原   因」:〇年〇月〇日遺贈(日付は祖父死亡日)
「権 利 者」:孫(住所・氏名)
「義 務 者」:遺言執行者(住所・氏名)
「添付情報」 :登記済権利証または登記識別情報、登記原因証明情報、印鑑証明情報、住所証明情報、評価証明書情報、(代理権限証明情報(委任状))

「登記原因証明情報」は、次の書類を含みます。
遺言書、祖父の除籍謄本・住民票除票、遺言執行者選任審判書

登録免許税について(令和4年現在)
登記の原因を「遺贈」としますので、評価価格の2%(20/1000)が税率です。
登記の原因を「遺贈」とする場合であっても、法定相続人に「遺贈」する場合は、評価価格の0・4%(4/1000)が税率です。
事例の場合、孫は、祖父の法定相続人ではありません(父が法定相続人です。)ので、評価価格の2%(20/1000)が税率です。

まとめ

遺言書に記載された内容で、法定相続人ではない人に名義変更する場合は、「相続」ではなく「遺贈」となります。「相続」という登記原因を使えるのは、法定相続人だけです。
法定相続人に、(間違って)遺贈する(贈与する)、と遺言書に記載されている場合、登記の原因は、「遺贈」となります。

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