相続登記と贈与登記をした後に、家財廃棄費用を要求された場合の対処方法(相談)

相続登記と贈与登記をした後に、家財廃棄費用を要求された場合の対処方法(相談)

【相談事例】
不動産(相談者の実家):建物 評価価格:100万円

建物名義人
(亡)父:持分20分の18
 叔父A:持分20分の2
 叔父B:持分20分の2

【相談者】
(亡)父の長女

相続登記と贈与登記で叔父2名に名義変更

相談者長女は、叔父2名(父の弟)から建物の名義を父から叔父2名に変更してほしいと言われ、名義変更することに決めました。名義変更登記にかかる費用は、相談者の長女が全額負担することにしました。

通常、自分たちに名義を変更してほしいという場合、名義を変更してほしいと言う人(叔父2名)が相続登記と贈与登記の費用を負担するのが普通です。
ですが、なぜか、相談者の長女は、自分が費用を負担することにしました。

相続登記と贈与登記の仕方

叔父2名への名義変更登記をするには、まず、(亡)父の名義を長女に変更登記する必要があります。(亡)父の相続人は、父の後に死亡した母と子1名(相談者の長女)であるので、法定相続分による登記をします。この登記と同時に、叔父2名に贈与で移転登記をします。

相続登記に必要な書類

相続登記に必要な次の戸籍関係書類を集めます。

(1)父の出生から死亡までの除籍謄本
(2)父の死亡時の住民票
(3)母の出生から死亡までの除籍謄本
(4)母の死亡時の住民票
(5)相談者長女の戸籍謄本
(6)相談者の長女の住民票
その他、必要書類は、相続登記の必要書類を参考にしてください。

贈与登記に必要な書類

贈与登記に必要な書類は、次のとおりです。

(1)相談者の長女の印鑑証明書
(2)長女の権利証:相続登記で発行される登記識別情報通知
(3)叔父2名の住民票
(4)相談者の長女の委任状(実印を押印)
(5)叔父2名の委任状(認印を押印)
(6)贈与契約書
(7)登記原因証明情報(贈与)
その他、必要書類は、贈与登記の必要書類を参考にしてください。

登記申請書

相続登記と贈与登記を次の3連件で登記申請します。

相続登記(3-1)(一部省略)
父名義(持分20分の18)を(亡)母と長女名義に「相続」で変更

登記の目的 父持分全部移転
原   因 平成20年〇月〇日相続(日付は父の死亡日)
相 続 人(被相続人 父○○)
     (住所)○○
     持分20分の9
     (氏名 亡母)○○
     (住所)○○
     持分20分の9
     (氏名 長女)○○
課税価格  金900,000円
登録免許税 金3,600円
不動産の表示

相続登記(3-2)(一部省略)
母名義(持分20分の9)を長女名義に「相続」で変更

登記の目的 母持分全部移転
原   因 平成25年〇月〇日相続(日付は母の死亡日)
相 続 人(被相続人 母○○)
     (住所)○○
     持分20分の9
     (氏名 長女)○○
課税価格  金450,000円
登録免許税 金1,800円
不動産の表示

贈与登記(3-3)(一部省略)
長女名義(持分20分の18)を叔父2名に「贈与」で変更

登記の目的 長女持分全部移転
原   因 〇年〇月〇日贈与(日付は贈与契約日)
権 利 者(住所)○○
     持分20分の9
     (氏名 叔父A)○○
     (住所)○○
     持分20分の9
     (氏名 叔父B)○○
義 務 者(住所)○○
     (氏名 長女)○○
課税価格  金900,000円
登録免許税 金18,000円
不動産の表示

相続登記と贈与登記にかかった費用

相続登記費用
司法書士報酬:約60,000円
登録免許税・証明書:約10,000円
合計:約70,000円

贈与登記費用
司法書士報酬:約50,000円
登録免許税・証明書:約20,000円
合計:約70,000円

相談内容

前述の相続登記と叔父2名への名義変更登記(贈与登記)をした後、相談者は、叔父2名との話しで、「相談者の両親が残した家財の中で、相談者が取っておきたい、持っておきたい、と思う物だけを持ち出せばよい。後は、建物丸ごと壊して、更地にしてしまうのだから。」と言う話しで一致していたので、そのようにしていました。また、実家の鍵もすでに叔父2名に渡していました。

ところが、叔父2名から相談者に次の内容で話しがありました。相談者としては、その内容が到底納得いくものではなかったので、当司法書士事務所に相談をすることにしました。

叔父2名が実家の売却について不動産屋に相談したところ、更地にして売ろうとしても家屋の取り壊し代金や諸々の費用がかさんでしまい、自分達叔父2名の手にするお金が少ないと分かったようで、更地にしないで家屋を残したままで売却をすることにしたそうなのです。
売却ができた場合には、両親が残した家財を廃棄する費用を相談者に負担するようにと突然メールが来ました。
相談者が思うには、建物の名義を相談者の費用負担で、叔父2名の名義にしたのに、家財は私に所有権がまだあるものなのでしょうか? 私に負担する義務は、どこまであるのでしょうか?
法的にはどの様なものなのか教えていただけませんか?

当司法書士事務所の長女に対する回答は、次のとおりです。

ご質問について
もうすでに済んだことなのに、先方の唐突な話しで、さぞ、動揺されているのではないかとお察し申し上げます。
この件については、感情を抑え、事務的に対応されるのがよいと思います。
本来であれば、このような重要なことは、先方がメールではなく、電話で直接、○○様に話すべきことです。
そこで、この件は、当初、先方との話し合いで決着していることですし、先方が不動産屋に相談したことから先方の気が変わったことですので、次のように返信されてはいかがでしょうか。

叔父2名への返信メールの文面は、次のとおりです。

拝啓、お元気のご様子で何よりのことと存じます。
叔父様より、メールでご連絡いただきましたことについてお返事申し上げます。
この件につきましては、当初、叔父様との話し合いで次のような取り決めを行い、贈与登記費用を含めて登記手続費用を私が全額負担し、建物を叔父様に贈与したものです。
叔父様は、私の両親が残した家財の中で私が取っておきたい、持っておきたいと思う物だけを持ち出せばよい、と仰いました。また、後は、建物を取り壊して更地にしてしまうのだから、ということのみを仰いました。残りの家財を廃棄する費用を私が負担する取り決めをしておりません。
したがいまして、私が必要なものを取り出し、鍵を叔父様に引き渡しておりますので、この時点で、建物とその中にある物はすべて叔父様に所有権が移っております。
当初の取り決めの中で、仮に、叔父様が、残りの家財を廃棄する費用を私に負担させたいということであったのであれば、私としては、残りの家財を廃棄する費用を私が負担しないという取り決めをしたはずです。
すべては、当初、叔父様の意向をすべて受け入れて、私が叔父様のために建物の贈与と登記手続きを、私の費用負担で行いました。
以上のように、建物の件は、叔父様との話し合いですでに終了していることですので、後から追加のお話しを言われても、叔父様の要求にお応えすることができません。

相続登記については、当司法書士事務所にご相談ください。

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